第220話 ユーリの聖水
「えーっと、パパー。さっきのは、せーすいだから。せーすいは、キレイなんだよー?」
「そ、そうだな。ユーリの聖水だから綺麗だよな」
「ユーリのじゃなくても、せーすいはキレイだよー?」
頭からユーリに、おしっ……聖水をかけられた。
うん。まぁユーリで良かったと思おう。
ユーリだから不問にしたが、もしもこれがモニカだったら……お仕置きがデコピンでは済まされないかもしれない。
それはさておき、とりあえず石の壁で周囲を覆ったものの、ヴァレーリエが倒れたままだ。
「お兄ちゃん。どーするー? とりあえず、ここに小屋を作るー?」
「うーん。本当は、もう少し離れた所まで行ければと思っていたんだが……ヴァレーリエも限界みたいだし、ここに建てようか」
「はーい! 分かったー!」
一先ず、ヴァレーリエが運んで来た丸太から鉄のロープを外し、ノーラの指示に従って運んでいく。
暫くノーラとビビアナの三人で作業を進めていると、いつの間にか小屋が完成していた。
「お疲れ様です。小屋を作られている間に、オレンジを植えて育ててみました。絞ってジュースにしていますので、どうぞ」
「ありがとう。けど、樹を植えて育てて……って、魔力は大丈夫なのか?」
「はい。休憩しながら……あ、でも可能でしたら魔力を分けていただけると嬉しいです」
そう言ってリディアが抱きついてきたので、スキルを使用すると、
「じ、自分もそういう事がしてみたいッス」
ビビアナも魔力が欲しいと言ってくる。
「構わないが、ビビアナは魔法が使えるのか?」
「使えないッスよ?」
「ん? それなのに魔力を回復させたいというのは……どういう事だ?」
「魔力の回復!? その抱き合っているのがッスか!?」
「あぁ。まぁ抱き合う必要は無いんだが、今はリディアに俺の魔力を分けているんだ」
「はぅ……そ、そうなんスね」
ビビアナが何故か悲しそうにしているので、どうしたのだろうかと思っていると、
「もー、お兄ちゃん! ビビアナちゃんも、お兄ちゃんに抱きしめて欲しいんだよー! あと、ボクもギュッてしてー!」
「……そ、そういう事ッス。し、失礼するッス」
「あーっ! ユーリもー!」
ノーラが抱きついてきて、ビビアナ、ユーリと続く。
その直後、
「ふー。お風呂を作ってきたよー! ……って、みんなで何してるのーっ!? ニナだけ仲間外れはヤダーっ!」
リビングにやって来たニナも抱きついてきた。
「アレックスさん。ニナさんがお風呂を作ってくださいましたし、みなさんで入りませんか?」
「そうだな。小屋作りで朝もかいたし、聖す……こほん。頭を洗ってサッパリしたい気分なんだ」
皆でニナが作ってくれた風呂場へ行き、リディアが水を注ぐ。
そこへ、
「≪フレイムタン≫」
ヴァレーリエから貰った炎の剣を使って、少しぬるめのお湯に。
皆がお風呂へ入った所で、リディアにシャワーを出してもらい……やっと頭を洗えた。
ユーリの手前、あからさまに頭を洗えなかったが、風呂なら頭を洗うのは普通だからな。
「ふゎー。旦那様のは凄いッスね」
「ビビアナちゃん。お兄ちゃんの何がそんなに凄いのー?」
「それは、勿論ナニッス! いつか、アレに貫かれるのかと思うと、ドキドキしてしまうッス」
「ナニ? 貫かれる? ……何の事ー?」
「またまたー……あ、もしかして! そ、そういう事ッスか。な、何でも無いッス! さっきの自分の話は忘れるッス!」
頭を洗っている最中に、ビビアナとノーラの話し声が聞こえ、止めないと……と思ったのだが、何かに気付いたらしいビビアナが自ら話を止める。
……だが実際は、ノーラに見えないように、その背後でリディアとニナが両手で大きくバツ印を作っていた。
二人のお陰で、何とかノーラに変な知識を与えずに済んだと思いながら、湯船の中へ。
すると、すぐにニナとノーラに、ユーリが寄って来る。
ちなみにリディアは、
「今近付くと、我慢出来なくなってしまうかもしれませんので、夜にお願い致しますね」
と、耳元で囁いてビビアナの元へ。
とりあえず後の事は後で考えようと、お湯とニナたちの温もりでまったりしていると、
「ちょっとー! ズルいんよ! 目が覚めたら誰も居ないし、アレックスと一緒にお風呂へ入るなら、ウチも呼んで欲しいんよ!」
全裸のヴァレーリエが現れた。
いや、風呂なので全裸は普通なのだが、どうしてイヤな予感がするのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます