第2章 仲間たちを守る為のスローライフ
第33話 新たな魔物を求める俺と、魔力を求めるリディア
「さて……じゃあ、今日から地下洞窟の探索を行おうか」
シェイリーから新たに得たエクストラスキルの説明を聞き、俺は魔物を食べると強くなれるという事を知った翌日、エリーたち三人を連れて地下洞窟の中へと向かう。
目的は、様々な魔物の肉を持ち帰って食べ、四天王クラスの魔族が襲って来ても、負けないくらいに強くなる事だ。
「≪ファイアーストーム≫」
「あーっ! エリー、大きな炎でサソリを一気に倒しちゃったら、お兄さんが炭を食べる事になっちゃうよー!」
洞窟に入ると、早速現れたグリーン・スコーピオンをエリーが炎の魔法で殲滅してくれたのだが、それに対してニナが口を尖らせる。
えっと、ニナ……強くなる為とはいえ、緑色のサソリを食べるのは厳しくないか?
いや、皆を守る為だし、食べ……うん。覚悟を決めて食べるけどさ。
ただ俺としては、アサシン・ラビットみたいな動物系の魔物から始めていきたかったよ。
「あの、ニナちゃん? まさかアレックスに、サソリを食べさせる気なの?」
「んー、食べるというか、飲む……なのかな? ドワーフというか、ニナのパパは、お酒にサソリを漬けて飲んでたよ? ……ニナは飲んだ事ないけど」
「そ、そうなんだ。アサシン・ラビットのお肉の一片でアレックスのスキルが発動していたみたいだし、そういう摂取でも大丈夫なのかな?」
なるほど。
エリーとニナの会話からヒントを得て、かなりハードルが下がった。
正直言ってサソリを食べろというのは中々辛い物があったが、何かに漬けた物を飲むのであれば、まだ何とか頑張れそうな気がする。
とはいえ、その方法でエクストラスキルが発動するかどうかは分からないし、サソリを食べる事で三人が守れるのなら安いものなので、火を通してかじるくらいなら挑戦しようと思う。
「あ、お兄さん。アイアン・スコーピオンだよ! アレを食べたら、更に防御力が上がりそうだよねっ!」
「……流石に鉄は食べられないから、ニナのお父さんが飲んでいるっていう、お酒に漬ける方向でいこう」
うん。流石の俺でも、鉱物は食べられないな。
あっという間に前言撤回で、とりあえずサソリは酒に漬ける事にした。
今度、タバサに依頼して酒を多めに送ってもらおう。
必要な分以外はシェイリーにあげれば、彼女の回復にも繋がるしな。
「≪ミドル・フリーズ≫」
エリーがアイアン・スコーピオンを氷結魔法で凍らせたので、とりあえずそれを持ち帰る事にして、ついでに現れたグリーン・スコーピオンを一刀両断。
真っ二つにした緑のサソリを回収し、残りはエリーの魔法で殲滅してもらうと、
「よし。新たな魔物を獲得したので、一旦戻ろう」
一先ず小屋へ戻る事にした。
今回は洞窟に入ってすぐだったから戻るけど、新たな魔物を見つける度に戻る訳にもいかないので、何かしら手を考えないといけないな。
「リディア。サソリの調理方法とかって、知っていたりするのか?」
「す、すみません。流石にサソリを調理した事はなくて……」
リディアが申し訳なさそうにしているけれど、知らなくて当然だと思うから、気にしないで欲しい。
その事をリディアに伝え、
「エリーはどうだ?」
「ごめんね。私もサソリの調理方法なんては知らないかな」
「だよなぁ」
やはりニナの言う通り、酒に漬けるのが良さそうだと分かった。
「葡萄酒に何かを漬けたりしないだろうから、蒸留酒だよな?」
「えー、流石にお酒の種類までは分からないよー」
俺としては、酒よりもお茶の方が良いのだが……仕方がないか。
「とりあえず、タバサに酒を送って貰うまでの間、このサソリを保管しておきたいのだが、緑の方も凍らせてもらって良いか?」
「もちろん、任せてっ!」
エリーが氷結魔法でサソリを凍らせると、
「アレックスさん。土に穴を掘って、その凍らせたサソリを保管しておいては如何でしょうか。そうすれば、涼しい土の中で長期間保存可能かと」
「なるほど。よし、是非頼むよ」
リディアから提案を早速採用し、小屋の外へ。
「では、アレックスさん。手をお願い致します」
「ちょっと待って! 穴を掘るだけでアレックスから魔力を分けてもらうの!? 幾らなんでも、それくらいで魔力枯渇になったりしないでしょ!?」
「残念ながら、私の精霊魔法は魔力の消耗が激しいのです。エリーさんの攻撃魔法は、消費魔力が少なそうで、ホント羨ましい限りです」
「絶対、そんな事を思ってないでしょ! 言葉と表情が合ってないもん!」
「アレックスさん。エリーさんが怖いですぅ」
そう言って、怯えた表情のリディアが振り向き、涙目で俺を見つめてくる。
一方で、俺とリディアを見るエリーは、怒っ……え、笑顔になった?
若干顔が引きつっている気もするが、一体エリーとリディアは何を張り合っているのだろうか。
一先ずリディアに精霊魔法で土に穴を開けてもらい、昨日シェイリーが生やしてくれた木を使って、簡易な蓋をする。
一仕事終えたので、軽く小休憩してから、洞窟の探索に戻ろうかという話をしていると、
「あ、アレックスさん! アレックスさーんっ! 居ないんですかっ!? お願いですから、居たら返事をしてくださいよー! アレックスさーんっ!」
小屋の中から、何やら必死な感じのタバサの声が聞こえてきた。
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