第343話 分かりやすい副団長ズーシュン

 エリラドの自警団の副団長ズーシュンの案内で、ジスレーヌの捜索願を出して居た男の家へやって来た。

 本日、六人の少女を救出した例の店と同じで、大通りと郊外の中間くらいにある家だ。


「捜索願いを出して居る者の家は……ここだな。失礼! 俺はズーシュン! 自警団の者だが、誰か居るだろうか!」


 ズーシュン……身体だけでなく、声もデカいな!

 レヴィアは耳を押さえながら涙目でズーシュンを睨み、ツキはシノビで耳が良いからか、両手で耳を押さえて辛そうにしている。

 その直後、


「おっと……そう来たか。まぁ分かりやすくて楽だけどな。≪ディボーション≫」


 懐から短剣を取り出したズーシュンが、ツキに向かって迫って来たので、思いっきり蹴り飛ばし、念の為にパラディンの防御スキルを掛けておく。

 続けざまに、レヴィアにも同じスキルを使った所で、


「良い蹴りだ。だが、それだけだな」


 蹴り飛ばしたズーシュンが再び向かって来る。

 凄いな。本気で蹴ったんだが……おそらくノーダーメージだな。

 剣を抜き……速いっ! ズーシュンのナイフを弾き飛ばした所で、


「≪ファイアーストーム≫」


 攻撃魔法を放ってきただと!?

 見た目は完全にパワータイプだが……見た目で判断してはダメか。

 だが、ズーシュンは知らないだろうが、俺に炎は効かない。

 炎の中から飛び出し、


「≪ホーリー・クロス≫」

「なっ!? くっ……」


 十字の斬撃でズーシュンを斬り倒す。

 急所は外しておいたので、死んでは居ないが……え? 大きく後ろへ跳んで距離を取られた。

 どうなっているんだ!? 確かに斬ったはずなのに。

 ズーシュンの有り得ない行動に驚き、一瞬動きが止まってしまった所で、


「我ら闇ギルドに楯突く愚か者めっ! 死ねっ!」


 一体、いつの間に集まって居たのか、十数人の武器を持った男たちが、周囲の建物の屋根から俺目掛けて飛び降りて来た。

 しまった!

 ズーシュンが次の魔法を使おうとしているし、頭上だけでなく、左右からも武器を持った男たちが来ている。

 一先ず、俺のスキルでダメージは受けていないものの、炎の中で動けずに居るレヴィアやツキを庇おうとした所で、


「アレックスー! こいつらのせいで、服が燃えちゃったよー!」

「父上、すみません。ジュリ殿に買っていただいた服が燃え、大きな穴が開いてしまいました」


 ズーシュンの放った炎の嵐が消え、半裸のレヴィアとツキが姿を現す。


「おぉぉぉっ! 半裸幼女だっ! 天使様が現れたぞっ!」

「パンツは無事だぞぉーっ! むしろ、この方が萌えるっ!」

「大きく開いた穴から覗く、幼女の白いお腹……至高だっ!」


 あ、うん。何故か、周囲の男たちが一気に隙だらけになったので、全員殴り倒しておいた。


「……気持ち悪い」

「あぁぁ、半裸幼女から足蹴にされるの最高……ぐへぇっ!」

「おい、兄ちゃん! お前に蹴られても嬉しくな……ぐほぁっ!」


 レヴィアが本気で引いていたので、代わりに蹴り飛ばし、仲間たちが一瞬で全滅して、唖然としていたズーシュンもボコボコにしておいた。

 ハッキリ言って、ズーシュンは一人で戦った方が強かったのではないだろうか。


「ズーシュン……お前が、闇ギルドの長なのか?」

「ふっ……俺が口を割るとでも?」

「いや、じゃあ良いや。ツキ、その辺に転がっている奴を蹴りながら、尋問してくれないか?」


 ツキがメチャクチャ嫌そうな顔をしながら、適当な男を足で突き、


「おい。あの男は闇ギルドの長なのか?」

「はい、そうです! 正直に話したから、もっと……ごふぅっ!」


 直後に俺が蹴り飛ばす。


「という訳で、お前が闇ギルドの長だな。拠点は何処なんだ? あ、言わなくても、その辺の奴が喋るだろうから、別に構わないが」

「……俺は、どうして部下に恵まれなかったんだろうな」

「そうだな。俺の蹴りや剣を受けて無傷だったのは、ちょっとショックだったし、お前一人の方が手強かった可能性はあるな」


 落ち込み、動こうとしないズーシュンへ、素直に称賛の言葉を送ると、


「アレックス。こいつが使っていたのは、たぶん闇の外法。ダメージを部下とかに肩代わりさせていると思われる」

「……って、最悪じゃないか」

「今なら、その効果が切れているみたいだから、殴っておくと良いと思う。とりあえず、レヴィアたんは服を燃やされて怒っているから、蹴っておくね」


 レヴィアからとんでもない情報が出て来た。

 要は俺が使っている防御スキルの逆バージョンなのだが、かなり酷いスキルだな。

 ……と、そんな事を考えている内に、レヴィアに蹴られ続けているズーシュンが死にかけていたので、慌てて止める事になってしまった。

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