第320話 緊急参戦
追いついて来たモニカが着替えるのを待って移動を再開すると、道が整備されたからか、あっという間にリザードマンの村へ到着した。
「ツバキ。悪いがここで待機しておいてくれ。最悪の場合、湖に近いここで何かあるかもしれないから、リザードマンたちと連携して村を守って欲しい」
「……承知しました。では私は、別命あるまでリザードマンの村で待機し、臨機応変に対応致します」
「すまない。ここは任せた」
ツバキをリザードマンの村の守備に充て、ラヴィニアを湖へ……無事に移動が完了した。
「ここから海まで距離が分からないから、一旦昼食としよう。ゆっくり食事をしている場合では無いが、空腹で動く事もままならないというのも問題だからな」
「じゃあ、ここはウチが作るんよ。皆、待っていて欲しいんよ」
「お兄さん。私も調理して良いかしら? 昼食じゃなくて、夕食用に保存の効く携帯食を作ろうと思うの」
それぞれ申し出てくれたので、ヴァレーリエとカスミに食事を任せ、その間にユーリ経由で、メイリンに状況とこれからしようと思っている事を伝えておく。
それと大丈夫だとは思うが、水に関する悪魔なので、飲料水や地底湖に気を付ける事……と言っておいた。
毒の類は、レイとステラが居れば大丈夫だと思うが、地底湖から魔物が……なんて事になったら、そこはネーヴと人形部隊に頑張ってもらおう。
「ご主人様。ご心配でしたら、メイリン殿にステラ殿の人形を沢山作って貰えば……」
「あー、プリーストの高位魔法をいろんな所で使えるのは助かるな。しかし助かるが、そういう理由でステラに……というのは失礼だろう」
「そうでしょうか? 私なら喜んでご主人様に身体を捧げますが……ご主人様っ!? ご主人様ーっ!」
モニカは隙あらば脱ごうとするから……どうしたものか。
そんな事を考えている内にヴァレーリエが昼食を作ってくれたので、皆で美味しくいただき、ラヴィニアの案内で出発しようとした所で、
「アレックス様ー! アレックス様ぁーっ!」
遠くから俺を呼ぶ声が聞こえ……一陣の風と共に女性が――若い天使族の女性が現れた。
「アレックス様っ! お久しぶりですっ! 会いたかったですぅー!」
「えーっと、君は確かアーシア……か?」
「はいっ! アーシア・フロイト。人間換算で十七歳の、アレックス様の愛人希望な天使です!」
アーシアの勢いだけの自己紹介が響き渡り……若干嫌な予感がする。
「ヴァレーリエなんよ。人間換算で十四歳の竜人族! アレックスの妻なんで、よろしく!」
「ラヴィニアです。人間換算で十五歳の人魚族です。アレックスさんの正妻ですので、よろしくお願い致しますね」
「カスミちゃんでーす! 人間換算で……って人間よっ! 年齢は言えないけど、アレックス様の奥さんにしてもらうので、よろしくねー!」
案の定アーシアの事を知らない、初対面の三人が対抗してきた。
というか、こんな状況で何をしているんだよっ!
「くっ……私だって、ユーディット様が許可してくださったら、アレックス様と結婚するんだからーっ!」
「いや、その話はいいから。とりあえずアーシアは何をしに来たんだ?」
「何って、もちろんナニですよー! 壁の上で、リザードマンの村に居ると教えてもらいまして。で、アレックス様のが忘れられなくて……というか我慢の限界で来ちゃいましたー!」
「あ、アーシア一人だけで来たのか?」
「はい。流石に、前みたいな緊急事態とかでないと、天使族全員で来たり出来ませんよー」
よ、良かった。こんな時に天使族全員で……とかって、している場合ではないからな。
「悪いが、ここに攻めて来よううとしている悪魔がいるらしくてな。今からそれを倒しに行くんだ」
「なるほど。悪魔退治といえば、天使族の務め。大急ぎで戻って、援軍を連れて参りますねー! しっかり加勢しますので、魔物を倒した後……戦う前でも良いですけど、ご褒美をお願い致しますねー!」
「お、おい! アーシア!? アーシアーっ!? アーシアーぁぁぁっ!」
確かに悪魔や魔族と戦うのに、天使族は適任なのかもしれないが、相手は水の中なんだっ!
羽が濡れるから海の中に入ったりなんて出来ないと思うのだが……せめて話を聞いてから戻って欲しかった。
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