挿話78 勇者殺しとなった、ダークナイトのローランド

「うん、いいね。ローランド……君はボクが見込んだだけの事はあるよ」

「ゴードンちゃんの為だ。これくらい当然だ」


 ゴードンちゃんと共に第三魔族領へ来てから、早数日。

 最近はゴードンちゃんの敵だという奴を延々と倒している。

 数はそれほど多くないのだが、それなりに強いのが厄介だ。

 だが、ゴードンちゃんを守る為ならば、俺は鬼にでも悪魔にでもなろう。

 そう思ってゴードンちゃんの可愛い顔を眺めて居ると、


「えっと、さっき倒した勇者が七組目かな。十五組の勇者パーティを倒せば、水の四天王様が会ってくれるっていうから、あと半分だね」


 ゴードンちゃんがとびっきりの笑顔を向けてくれた。


「しかし、その四天王とかいう奴も曲者だな。ゴードンちゃんが会わせろと言ったのに、会うための条件を提示してくるなんてな」

「まぁあの御方は、土の四天王様程ではないけど、面倒臭がりだからね。部下に人間の奴隷を与える代わりに、様々な仕事を押し付けているらしいし」

「ふむ。ここに居る水の四天王よりも面倒くさがりだという、土の四天王とやらは相当だな」

「そうだねー。第四魔族領を全て土で埋めて放置するくらいだからね。たぶん、魔王様も当時は頭を抱えたと思うよ」


 魔王……? 何だ!? 魔王という言葉を聞くと、胸がざわつく気がする。

 俺はその魔王に対して、何かをしようとしていたはずなのだが、何故か全く思い出せない。

 一体、何だったのだろうかと考えていると、


「いたぞ! あそこだ!」


 またもや、勇者を称するパーティが現れた。

 まったく……勇者に憧れた者たちが、勇者を詐称し、ゴードンちゃんに攻撃しようとするなんて、本当にふざけている。

 この魔族領で偽勇者パーティを倒してきたが……一体どれ程の数が居るのだろうか。


「ふっ、魔族に魂を売ったダークナイトめ! 言っておくが、俺たちは一味違うぞ! 何と言っても、お前の天敵とも言える聖騎士――パラディンが俺たちのパーティに居るからな」

「パラディンだと!?」

「あぁ、そうだ。魔族は聖属性攻撃に弱い。勇者、パラディン、プリースト、ウィザードという最もバランスの取れた俺たちのパーティに、貴様は倒されるのだ!」

「……パラディンか。何故かは分からないが、そのジョブの事を聞くと、異様に腹が立つ! お前に恨みは無いが、死んでもらう! くらえっ! ≪ダーク・ブレード≫!」


 この魔族領へ来てから、何故か使えるようになっていた新たなスキルで、愛剣に闇の力を付与すると、力任せに剣を薙ぐ。

 その威力は絶大で、重厚な鎧を身に纏った、愚鈍なパラディンを大きく後ろへ吹き飛ばすと、


「≪ライトニング・ブレード≫」

「≪エクス・フレイム≫」


 俺の攻撃直後を狙って、偽勇者と女魔法使いが攻撃を仕掛けてきた。

 だが、雷を纏った剣を受け流し、迫り来る炎を半歩動いて避ける。

 そのまま勇者を斬り倒し、女ウィザードに向かって走ると、その勢いを殺さずに思いっきり蹴り倒す。


「きゃあっ!」

「皆、待っていろ! ≪エリア・ヒール≫……な、何故だ!? 治癒魔法が発動しないだとっ!?」

「ふふっ。残念でしたー! ボクの力で、そっちのプリーストのスキルは封じさせてもらったよー」


 ゴードンちゃんが、何かしらのスキルを使い、男プリーストの治癒魔法を封じてくれていたらしい。

 なので、プリーストを斬り捨て一人残ったウィザードの元へ。


「ま、待って下さい。私は、あの勇者に唆されただけなんです。何でもするので、命だけは……」

「何でもするのか?」

「は、はい! だから、どうか……」


 金髪で胸の大きな女ウィザードが、俺に蹴られた腹をさすりながら、土下座する。

 怯えながら顔を上げてきたので、胸元から柔らかそうな膨らみと谷間が見えていて……何故だ!? 頭の中に、誰かの姿が浮かび上がる。

 昔から知っているような、懐かしい姿だが……何となく思い出されるのは、裏切りと孤独だ。

 かつて、この女のように胸の大きな女たちとパーティを組んだが、俺を罠に掛け、無実の罪を着せられた。


「そうだ! 思い出した! アレックスとエリーだ!」

「え? アレックス? エリー? 誰かは分かりませんが、私をその女性? の代わりにしてくださっても構いません。ですから……」

「ほう。お前がエリーの代わりになるのか」

「はい! どんなプレイにも応じますので、助け……えっ!?」

「ふっ……エリーの代わりになるのだろう? 俺はずっと、あの女をこうしたかったんだよっ!」


 顔と身体が離れた女ウィザードが、信じられないといった表情のまま、動かなくなる。


「やっぱり君は優秀だね、ローランド。じゃあ、ボクがご褒美をあげるよ。さぁ、ボクに挿れていいよ」

「ゴードンちゃん! ゴードンちゃーんっ!」

「ふふっ。その調子で頑張ろうね、ローランド。先ずは四天王様に気に入られるんだよ」


 そう言って、ゴードンちゃんが俺にキスをして……俺は、エリーの代わりとなった女の顔の前で、ゴードンちゃんと愛し合う事にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る