第485話 逢瀬スキルの真の力

 翌朝。俺が居る部屋に窓がないが、逢瀬スキルにより朝だと分かる。


「ご主人様。凄いですぅー」

「結衣。ここだと分からないと思うが、もう朝だからな?」

「ふぇ? そ、そうなのですかっ!? もうご主人様は分身スキルを……あ、解除されていると。では、綺麗にさせていただいて……ふぅ。おやすみなさーい」


 今の今まで激しく動いていた結衣が、影の中へと姿を消す。

 さて、今日はレヴィアたちと合流出来るだろうか……と考えていると、


「パパー! おはよー! ゆいちゃん、すごかったねー!」

「パパ、おはよう。結衣ちゃんとは激しかつかったけど、エリーとリディア……どっちへ行ったのー?」


 ユーリとニースが抱きついてきた。

 二人がいつ起きて、何処から見られていたのかと思いながらも、聞かない方が平静で居られる気がするな。


「あー、逢瀬スキルの事なんだが、実は両方へ行ったんだ」

「んー? パパー、どういう事ー?」

「先ず逢瀬スキルでエリーの所へ行き、分身スキルを使うだろ。それから逢瀬スキルを解除し、もう一度逢瀬スキルを使って、今度はリディアの所へ行って、もう一度分身を使うと……」

「えーっと、もしかして両方で分身が残ったのー?」

「そういう事だ」


 昨夜は悩んだ末に、両方へ行くという選択に。

 だが、俺本人もアレが出てしまうので、結衣が頑張ってくれたのだが、それはズルいと、ラヴィニアからクレームに。

 という訳で、俺自身もここで分身スキルを使って……ラヴィニアが一人で七体くらいの分身の相手をしていたのだが、大丈夫だろうか。

 一先ず、部屋を出て水路を見に行くと、


「ら、ラヴィニアっ!? 大丈夫かっ!?」


 ラヴィニアが水面に浮かび、ビクンビクンと尾びれを震わせていた。


「あ、あなた。口と両手に両脇。もちろん前と後……全て使ったわ」

「だ、大丈夫なのか?」

「凄く満足……というか、もう今日はダメかも。暫くここで眠るわね」


 そう言って、ラヴィニアがそのまま水面にぷかぷかと浮かぶ。

 本当に大丈夫なのか?

 心配に思いながらも、ラヴィニアが眠りたいだけだというので、そっとしておく事に。

 あまり離れすぎなければ、防御スキルは有効なのだが……まぁ魔物が現れる気配がないから大丈夫だろう。


「パパー! おなかすいたねー!」

「あぁ、そうだな。もう少し先へ行ってみるか……」

「パパー。はねもかわいたしー、ユーリとべるよー? ニースも、あるけるよねー?」


 ユーリの言葉にニースが頷き、


「とゆー訳で、パパがラヴィニアを抱っこしてあげたら、良いじゃないかなー?」


 全員で移動する事に。

 ラヴィニアはぐったりしているが、スヤスヤと眠っているだけなので、大丈夫そうだ。

 時折、目を閉じたままビクンと身体を震わせ、ニヤニヤしているが……何の夢を見ているのかは、考えないようにしよう。

 少し歩くと、昨日と同じような装置で水が汲み上げられていて、隣に階段もある。

 だが一つ違うのが、


「地上だな」

「うん。ユーリ、みにいこうかー?」

「いや、皆で行こう。俺から離れないように」


 洞窟の天井に開いた穴から、陽の光が降り注いでいた。

 防御スキルを掛け直し、三人と共に階段を上がると、椅子とテーブルしかない小さな部屋に出て、外に出るも思われる扉がある。

 その扉を開いて外へ出ると……家や畑が広がっていた。


「村……か?」

「そーみたいだねー。ちょっと、おそらから、みてくるー!」

「待った! この村が天使族をどれくらい認知しているのかが分からん。さっきみたいにユーリが攻撃されるのは嫌だからな。まずは身を隠せる場所を探そう」


 身を隠すという意味では、先程の水路が良いのかもしれないが、村の中の一施設である以上、いつ誰が来るか分からない。

 まだ朝が早いからか、それとも何かあったのか。

 幸い周囲に人の気配が無いので、今の内に何処へ身を隠すか考え……だがラヴィニアも居るので、水の近くには居たい。

 ……ますます、水路の中が最適なんだが。


「下の河から汲み上げられていた水は……これか。なるほど。風の力を利用して水を汲み上げているのか」


 小屋の近くに小川と、大きな風車がある。

 とりあえず、この小川を下ってみるか。

 一旦ユーリに上から見て貰った方が良い気もするが、一先ず川沿いに村の中を進んで見る事にした。

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