第484話 エリーとリディア再び

「……という訳で、すぐにレヴィアは戻って来られないそうなんだ」

「まぁ、それはつまり、今夜はあなたを独占出来る……じゃなくて、大変ね」

「そ、そうだな」


 リディアから聞いた話を三人に伝えると、ラヴィニアが近付いてきて、胸を押しつけ始めたんだが、本当に大変だと思っている……よな?

 あと、ユーリとニースは真似をしなくて良いからな? というか、しちゃダメだ。


「さて。レヴィアたちが来られないから、この洞窟で一晩過ごす事になった。なので、この奥がどうなっているか確認しようと思うのだが」

「パパー! ニースも一緒に行くーっ!」

「ユーリもっ!」


 二人にしがみつかれ、当然一緒に行くと伝え、早速行ってみる事に。

 ちなみに、かなり細いが横に水路のように水が通っているので、ラヴィニアも一緒に奥へ。

 魔物が居る気配もないし、通路も歩き易い平坦な道だし、間違いなく人の手によって作られた、人工的な洞窟だろう。


「んー、あなた。奥から何か変な音が聞こえるわ。カタカタカタって、何かがずっと一定の速度で動いているみたい」


 俺には聞こえないが、ラヴィニアが水中から音が聞こえるというので、三人に防御スキルを掛け直し、警戒しながら進んで行くと、俺にも同じ音が聞こえてきた。


「確かに聞こえるな」

「パパー。時々音がゆっくりになったり、早くなったりするよー」

「なにかな、なにかなー?」


 少し不安そうなニースがギュッと俺にしがみつき、一方のユーリは楽しそうに、俺の腕から身を乗り出して前を見ている。

 そんな状態で暫く進むと、大きなバケツのような物が水路から出て来て、上に登っていく。


「カタカタと音がしているのは、これのようだが……これは水を汲み上げているのか?」

「そうみたいね。上の方で汲み上げたバケツの水を流しているみたいね」


 ラヴィニアの言う通り、俺の背よりも少し高い位置で、水が流れ出る仕組みになっているようだ。

 魔族領にソフィが作ってくれた、ポンプみたいなものか。


「パパー! ユーリ、うえをみてくるよー?」

「いや、先程みたいな事があったら困る。こちらに階段があるから、こっちへ行ってみよう」

「はーい!」


 ラヴィニアには少し待っていてもらい、ユーリとニースを両腕に抱きかかえたまま階段を駆け上がると、予想通り下から組み上げられた水による水路となっていた。


「あなたー! 私もこの箱に入って、登って良いかしらー?」

「あぁ、大丈夫だ」


 ラヴィニアが大きなバケツに入ると、そのまま鎖で引き上げられ、水路に現れる。


「ちょっと楽しかったわ」

「いいなー! パパー! ユーリもするー!」

「いや、また羽が濡れるって」


 ユーリが凄く残念そうにしているが、そもそもバケツの中は大量の水だからな?

 あのバケツに乗って移動出来るのは、ラヴィニアと水中呼吸スキルを持つ俺くらいだろう。

 同じような装置が二つほどあり、上へ上へと登って行くと、水路は変わらずだが、通路側に幾つかの扉がある。

 試しに一つ開けてみると、ベッドと小さなテーブルに、椅子が一つという小部屋だった。


「……他の部屋も同じだな」

「パパー。せっかくベッドがあるし、そろそろねようよー!」

「そうだな。それなりの時間を歩いたよな」

「うん。あとね、ユーディットママとリディアが、ぶんしんをおくってーって、メイリンママをつーじて、いってるよー!」


 くっ、しまった。

 まさか二人から逢瀬スキルをリクエストされるとは。

 どうする? エリーとリディア……どちらへ逢瀬スキルを使うべきなんだ!?

 ここの選択を謝ると、後々恐ろしい事になる気がする。


「あなたー、今日はもう就寝しちゃうのー?」

「あぁ、そうだな。ラヴィニアは、その通路で大丈夫か?」

「えぇ。綺麗な水だし、流れもキツくないし、魔物なんかもいなさそうだし、大丈夫よー」

「そうか。今日は本当にありがとうな」

「ううん。あなたの力になれて良かったわ。おやすみなさい」

「あぁ、おやすみ」


 ラヴィニアにおやすみのキスをして、既に半分眠っているユーリとニースを連れ、小部屋のベッドへ。

 ユーリとニースに抱きつかれ……さて、どうしようかと考えていると、


「ご主人様。大量のアレの処理はお任せください」


 影の中から結衣が現れた。

 結衣は流れるような動作で、そのまま俺のに……って、どうすれば良いんだーっ!

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