第59話 リディアの鋭い女の勘
「もー、お兄さん。遅いよー!」
「お兄ちゃん。遅いー!」
「そうだな。遅くなってすまない。早速ノーラが作ってくれた家に荷物を移動させようか」
ニナとノーラに抱きつかれつつ、纏めてくれていた荷物を持って、新しい家に向かう。
尚、ノーラが作ってくれた二段ベッドは、この小屋に残しておくそうだ。
「向こうはもっと部屋が広いからねー。材料は沢山あるし、また向こうの家のサイズに合ったベッドを作るよ」
「何だか、すまないな」
「ううん。前から思っていたんだけど、あれって上の段で寝る人が可哀想だもん。ボクもだけど、皆お兄ちゃんと一緒に寝たいよねー!」
そう言って、ノーラが俺にくっついてくる。
本当は抱きつきたいのかもしれないが、皆それぞれ荷物を持っているからか、自重してくれているようだ。
そんな中、ノーラの反対側にリディアがやってきて、
「あ、アレックスさん……どうして、こんなに時間が掛かったんですか?」
「あぁ、その……それはだな……」
「し、シェイリーさんと打ち合わせが長引いたからよねっ! でも、おかげで、空から来る敵を何とかしてもらえそうだもんねっ!」
背後に居たエリーが、話に割り込んできた。
「エリーさんは、ずっとアレックスさんと一緒に居たのですから、今は私たちがアレックスさんとお話しする時間です! 邪魔しないでください」
「そ、それはそうだけど……」
「それで、アレックスさん。シェイリーさんとは、どのような話を?」
リディアに言われてエリーが引き下がる。
おそらくエリーとしては、社の中で四人でした事を言わないで欲しいと言った所だろう。
俺としても、ニナとノーラに話す気は無いが、リディアは難しい所だ。
教えなければ不公平になるし、後で絶対に揉める気がする。
とはいえ、仮にリディアへ話したとして、どういう反応が返ってくるだろう?
エリーのように不機嫌になるのか、モニカのように受け入れ、自分もすると言うのか。
そして、仮に後者――リディアも同じような事をするとなった場合、リディア一人では負担が大きいし、ニナやノーラに見つかったら大変な事になりかねない。
リディアに話すタイミングも考えないといけないな。
「……シェイリーが空を飛び、魔物を倒してくれるそうだ。場合によっては、地上へ引きずり落とすかもしれないから、その時は俺の出番だな」
「なるほど。相手はかなり強そうでしたから、くれぐれも無理はなさらないでくださいね」
そう言って、リディアにキスされると、
「あーっ! リディアお姉ちゃんだけズルいーっ! ボクもチューするー!」
「ニナもー! お兄さん、ちょっとしゃがんでよー!」
ノーラとニナが寄って来て、俺がしゃがまなくても、結局飛びついて来て、キスされてしまった。
それから、新しい家に到着し、それぞれの荷物を置いて行く。
とりあえず、暫くはベッド無しで、数枚の毛布を床に敷いて寝る事になりそうだ。
「じゃあ、ニナは家の中に作る、お風呂を作るね」
「ボクは、ベッド作りだけど、先ずは小さい方の寝室の分から……って、今更だけど、どうして寝室が二つあるんだろ? 別に良いけど」
「二人とも、すまないな。じゃあ、リディアとエリーは昼食の準備、モニカは掃除を頼むよ。俺は、そろそろタバサが連絡してくる頃だと思うから、小屋で待機しているよ」
それぞれに作業をお願いして、小屋に戻ろうとすると、家を出た所でリディアが追いかけて来た。
「アレックスさん。少しだけ待ってください」
「リディア。どうしたんだ?」
「いえ……これからお話しする事は、あくまで私の勘なので、間違っていたら謝ります。ですが、私の勘は……その、アレックスさんとエリーさん、モニカさんが何かエッチな事をしたのではないかと告げています」
「な……り、リディア!? な、何を言い出すんだ!?」
「私の勘としては、アレックスさんに何をしていたかと聞いた時に、慌ててエリーさんが割り込んで来た事。私たちがアレックスさんにキスした時、エリーさんとモニカさんが何も反応しなかった事。そして、ノーラさんが三人から同じ匂いがすると言った事から、そうではないかと思いました」
「……すまない。隠そうとしていた訳ではないのだが、ニナやノーラに聞かれる訳にはいかなくてな」
「ふふっ……そうですね。すぐに真似をしたがるノーラさんに知られる訳にはいきませんよね。……ですが、エリーさんとモニカさんの二人だけ、ズルいです。私も、アレックスさんに愛していただきたいです」
リディアが耳元で囁きながら、俺の耳を甘噛みしてくる。
「ま、待ってくれ。そんな風に迫られると、俺が大変な事になってしまう……」
「あ、あの……エリーさんとモニカさんが、どういう事をされたかは分かりませんが、私も同じ事をしてください。私もアレックスさんを愛していますし、同じ事……いえ、それ以上の事をしてさしあげたいんです」
「リディア。気持ちは嬉しいのだが、こ、ここではダメだ!」
「ふふっ……じゃあ、今夜こっそりお願いしますね。約束ですよ?」
そう言って、リディアに熱いキスをされてしまった。
……だ、大丈夫だろうか。
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