第315話 第一休憩所完成

 翌朝。元兎耳族の村から少し南へ移動した所で、


「魔導砲……発射!」


 ソフィの言葉で、シーサーが口から大きな白い光を放つ。

 これによって、壁のトンネルからリザードマンの村へ真っすぐな道を作ったように、全ての障害物を破壊して、南へ直進する道が出来た。


「マスター。これで、シーサーも通れる道が出来ましたので、南に新たな拠点を作る事が出来るかと」

「そうだな。だが、とりあえずは休憩所が一戸あれば良いだろう」


 昨日の木材の残りを荷車に積み、シーサーに引いてもらって、出来たばかりの道を南下していく。

 一先ず、第一班にリディアと熊耳族の少女たちを加え、道が途切れるまで進む事に。

 時々魔物が現れるが、リザードマンの村へ行く途中で現れる魔物と同じ種類で、大した脅威ではない。

 かなりの距離を進んだ所で、道が途切れていたので、


「じゃあ、ここに休憩所を作ろうか。悪いが皆、協力して欲しい」


 シーナ国へ行く為の第一休憩所を作る事に。

 第一班は周辺の見回りと、家を作る熊耳族の少女たちの護衛を。ソフィはシーサーに指示して周囲の木々を除去し、休憩所を作るスペースを確保する。

 俺とリディアは、出来たスペースを石の壁で囲っていき、魔物に襲われ難くするのだが……先に壁を作り過ぎてしまうと熊耳族の少女たちの邪魔になってしまうので、状況を見ながら作業を進めていく。

 暫くして、日が傾き始めた頃に、


「アレックス様。一先ず、出来ました。ノーラさんとは違い、大工ではないので至らぬところもあるかと思いますが」

「いや、ちゃんとした家だよ。ありがとう」


 少し小さめの第一休憩所が完成した。

 ここは拠点というより、その名の通り第一班の休憩地点とするつもりなので、この大きさで十分だろう。


「ヴァレーリエ、サクラ、カスミにユーリは、この休憩所に何か要望があったりするか?」

「お兄さん。少し寝室が狭くないかなー? お兄さんが分身したら六人になるし……」

「いや、ここでそういう事をするつもりは無いからな?」

「えぇっ!? 私たちへのご褒美はっ!?」

「昨日、めちゃくちゃしただろ。というか、ここはあくまで中間の休憩地点だ。拠点は元兎耳族の村だぞ」


 カスミの要望は却下したが、それ以外には特にないそうなので、休憩所を石の壁で覆い尽くし、村へ戻る事に。

 再び長い距離を戻り、薄暗くなった頃に村へ着くと、


「では、夕食を作りますね」


 早速リディアが食事の準備を始めようとしてくれた。

 だが、


「すまない。今から壁の上に戻らないといけないんだ」

「えぇー。アレックスさんは、私の料理を食べてくれないんですか?」

「すまん。実は昨日、壁の上に分身を送り忘れていて……その、皆が絶対に戻って来いと言っているらしくてな」


 サクラの人形たちが何かに怯えながら、戻って欲しいと懇願してくるんだよ。

 けどサクラの人形が怯えるって、余程の事だと思うんだが、怯えさせる程怒りそうな者は居ないと思うんだが。

 かつてはエリーが怒る事もあったが、妊娠してからは、そもそもそういう事は控えめだしな。

 ……まぁエリーもユーディットとも、全くしていない訳ではないが。


「という訳で、分身を二体残して戻るよ。本当にすまない」

「むー……仕方ありませんね。でも、明日はアレックスさん自身で私を愛してくださいね」


 という訳で、二体の分身を残して、カスミとユーリ、サクラの人形とで東の休憩所を目指す。

 ちなみに、今回は到着前に分身へ手を出したら、分身を消すと伝えてあるので、変な事をされずに戻ってくる事が出来た。

 出来たんだが、


「アレックス! 待ってたよっ! さぁ子作りしよう!」

「お姉ちゃん、アレックスさんは食事がまだだって人形さんから聞いていたでしょ?」

「じゃあ、食べなから子作りだな! 今日は寝かさないよっ!」


 東の休憩所に、何故か兎耳族が大勢押し寄せていた。


「えっ!? パメラたち……どうして、東の休憩所へ? ……って、いきなり咥えるなっ!」

「あのね。今日は新月だから、兎耳族の月魔法が……月影魔法が使えなくて、アレックス様の分身が出せないの。という訳で、パメラお姉ちゃんだけじゃなくて、私たち全員、アレックス様に抱いてもらいに来たの」

「わーい! 本物のおにーちゃーんだーっ! こっちも本物……私も触りたいよー!」


 二十人近くの兎耳族の女性たちが押し寄せ、俺のアレを取り合いに……何となくサクラの人形が怯えていた理由が分かった気がする。


「あ、アレックス。ノーラ殿は家で待機してもらっていて、こっちには来ていない。だから……あとは、頼む。……もちろん、私にも」


 兎耳族たちの中に、何故かネーヴが混ざっているが、ノーラが居ないというのは助かった。


「ふふっ、今日も眠れない夜になりそうね。お兄さん」


 この状態で笑えるカスミは凄いな。

 いや、笑うしかないのか?

 ……って、待った! その兎耳族の少女は幼過ぎないかっ!?

 話を……話を聞いてくれぇぇぇっ!

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