第169話 人材の宝庫

「……という訳で、あくまで皆を守る為に、自警団を組織したいのだが、どうだろうか」

「旦那様がそう決めたのであれば、妾はそれに付き従うまで。旦那様の思うようになさってください」


 ネーヴから話のあった守備隊についてメイリンに話をすると、あっさりと承諾してくれた。

 尚、サクラやツバキと共に、ネーヴが黒髪の一族の隣国の宰相スノーホワイトと呼ばれていた人物で、メイリンのスキルの事を知っていたという話をしたのだが、


「旦那様が問題無いと判断した上でのお話ですよね? それならば、妾が何か言う事はありませんよ」


 全肯定されてしまう。

 ……それだけ信頼されているという事なのかもしれないが、盲信的にはならないで欲しい。

 まぁ仮に俺が誤った道へ暴走していたら、エリーやリディアが止めてくれるとは思うが。

 一先ずメイリンも連れてネーヴの所へ戻り、


「待たせたな。こちらが、先程話に出たメイリンだ」

「メイリンです。見ての通り、黒髪の一族の者で、王家の血を継いでおります。どうぞ、宜しくお願いします」

「ネーヴだ。もしかしたら、黒髪の一族には、雪の宰相スノーホワイトと言った方がしっくりくるかもしれないが」


 メイリンを紹介する。

 一先ず、見た限りではどちらも確執は無さそうだ。……まぁ、ネーヴは五十年前から奴隷状態だったらしいので、そもそも年代が合わないが。


「では、早速なのだが、魔法人形が何体程居て、どの様な能力を持っているのか、おおよそで良いから教えて欲しい」


 メイリンの答えを聞いて、ネーヴが何やら色々と考え、


「では、六人一組の班を作り、バランス型に、遠距離魔法攻撃型、機動力特化の遊撃型などに分けて……」

「……ネーヴ殿。それならば、各班の構成メンバーを同じにした方が良いかと」

「む? そうか? 例えば同じ遠距離魔法攻撃型にしても、主とする属性をA班は炎、B班は氷……などとしておけば、炎が通じない魔物が現れたら、B班に対応させる……など、代替が効くのだが」

「しかし、組織の効率化の面で考えると、同じ構成メンバーにしておけば、A班に教えるだけで、B班にも教えた事になって、かなりの時間短縮となるのだが。メイリン様のスキルは、同一の者から生成した人形は、知識や経験を共有出来るので」

「な、なんと……素晴らしくも、恐ろしいスキルだな。特定の人物の人形を大量に作れるスキルだと思っていたのだが、まさかそこまでだったとは」


 ……あ、そうなんだ。

 サクラが説明してくれて、俺も初めて知ったんだけど。

 時々、時間がある時に人形へ盾の使い方を教えていたのだが、一人に教えたら皆が出来るようになっていたのは、そういう理由か。

 ネーヴではないが、それは俺も凄いスキルだと思う。

 ……ただ、人形を作る為の材料が困ったものだが。


「俺もサクラの案が良いのではないかと思う。守る事は確かに大事だが、普段の開拓作業もあるしな。今の話で行くと、A班が守備の訓練をしている間、B班が作業を進める事が出来るからな」

「そうだ。開拓作業といえば、先程こちらの天使族の女の子からトマトをもらったのだが、どうしてこのトマトは、こんなに美味しいのだ? 天使族の力なのだろうか?」


 ネーヴの言葉で、ふよふよと浮かんでいるユーディットの人形ユーリが驚き、注目されているいるのが恥ずかしいのか、「えへへー」と照れている。

 うむ。いつ見てもユーリは可愛いな。


「あー、ここにはレイという薬師が居るんだが、彼女の作る薬を使うと、作物の味が物凄く良くなるんだ」

「それは凄い。是非、後で紹介してもらいたいな。この作物は間違いなく村の武器になる。……あ、特産品という意味でな」

「そ、そうか。レイは昼食の時に紹介しよう」


 いやまぁ、確かにこの作物は凄く美味いのだが、その薬の材料が……て、天使族の力という事にしておこう。

 聖水も使っているし、あながち嘘ではない……はずだ。

 いやまぁ、聖水以外に使っている物に問題があるんだけどさ。


「そうだ! しまった……私とした事が失念していたのだが、武器や防具の在庫はどれ程あるのだろうか。守備隊を結成するにしても、装備が足りなければ……」

「あぁ、それならニナに作ってもらおう。ドワーフの鍛冶師が居るんだ」

「な……ドワーフの鍛冶師!? こ、この村は一体どれ程の人材が居るのだっ!?」


 一先ず、ネーヴの驚きが止まらないので、早めに自己紹介をする事にした。

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