第253話 レイの新作ポーション

「サクラちゃんとツバキちゃんがいつもお世話になってまーす! 母のカスミでーす!」

「そ、その娘で、三女のナズナです! 宜しくお願いします」


 昼食時に二人が挨拶をすると、


「サクラはんのお母さん!? お、お姉さんやなくて!?」

「出産したら体型が崩れるって聞くけど、あの体型は羨ましいわね」

「三人も子供産んだなんて、羨ましいんよ。ウチは子供が最低でも十人欲しいから、先ずは一人目を早く作るんよ」


 レイとエリーが容姿に驚き、ヴァレーリエが子沢山な事を羨ましがる。

 あと、ナズナは少し恥ずかしがり屋なのかな?

 少しすると、隠れるようにして、カスミの背中から半身だけ覗かせるようになった。

 注目されるのがあまり好きではないのかもしれないので、とりあえず座ってもらい、


「ところで、サクラたちは家族な訳だし、水入らずで四人だけで暮らせる方が良いのか?」

「アレックス様! よ、夜はどうなるのですか!?」

「そ、そうですっ! えっと、お風呂……そう、お風呂は我々だけで準備が出来ません! せめてお風呂の時間は皆と……アレックス様と同じにしてください!」


 大きな寝室ではなく、四人部屋で就寝するかと聞こうとしたのだが、サクラとツバキが凄い勢いで迫って来る。

 その一方で、


「えっ!? サクラお姉ちゃんも、ツバキお姉ちゃんも、アレックス様と一緒にお風呂……が、頑張ります」


 ナズナが顔を真っ赤に染める事に。

 ……とりあえず、ナズナは前半の風呂に入ってもらおうか。

 それから、家族で色々と話したい事もあるだろうと、午後からはサクラたち四人に時間を与え、俺は各エリアの見回りをする事に。

 東エリアの畑の様子を見に行くと……あれ? 何故かツバキが居る。


「ツバキ。家族の団欒は良いのか? 久々の再会だろうし、もっとゆっくりしていても良いんだぞ?」

「お父さーん! 違うよー! 私はツバキのお母さんのカスミの人形だよー!」


 え……いや、年齢的にはこれくらいになるのか。

 喋り方がカスミで、見た目がツバキそっくり……いや、胸の大きさはナズナだな。

 というか、いつの間にメイリンはカスミの人形を作っていたんだ?

 ま、まさか、さっきツバキと間違えて、してしまったりしていないよな?


「お父さん、お父さん。朝の、もう一回するー? あ、私はこの年齢で、既にサクラちゃんを産んでいるから、全然オッケーだよー!」


 手遅れだったー!

 メイリンとする前か? というか、俺とほぼ同い年くらいに見える女性から、お父さんと呼ばれるのは違和感しかないんだが。

 一先ず話を聞くと、他の人形と同じ様に、番として俺の人形も居るらしいが……それはそれで変な感じがするな。

 ちなみにカスミの人形は十七歳らしく、この時点ではシノビとしてはサクラくらいの腕前なのだとか。

 サクラが二十二歳のはずだから……うん。ここも触れない方が良さそうだ。


「何かあったら、すぐに行くから呼んでねー! 夜の呼び出しも待ってるねー!」


 一先ずカスミの人形と別れ、再び見回りをする事に。

 メイリンのスキルで成人の人形が作れるようになったという事か。

 後でネーヴに相談しようと思いながら歩いていると、レイがやって来た。


「おったー! アレックスはん、出来たで! 画期的なポーションが出来てん!」

「画期的なポーション?」

「せやねん! とりあえず、ウチの部屋に来て欲しいんや! それから……おった! リディアはんにも来てもらおか!」


 かなり興奮した様子のレイが俺の手を取り、離れた場所に居たリディアの所へ走って行く。

 そのまま俺とリディアがレイの部屋へ連れて行かれ、かなり小さな瓶に入った謎の白いポーションを見せられる。


「レイ、これがさっき言っていた画期的なポーションなのか?」

「せや! なんと、このスプーン二杯くらいの僅かな量のポーションで、マジック・ポーションよりも沢山魔力が回復するんや」

「なるほど。私にはアレックスさんが居るので不要ですが、普通のマジック・ポーションは一本飲めばお腹が一杯になってしまい、頑張っても二本が限界です。激しい戦闘で魔力が回復出来ないと致命的なので、凄く良いのではないでしょうか」


 そうか。男からすれば、マジック・ポーションなんてたかがしれている量だが、女性には辛い分量なんだな。

 リディアやエリーのように、女性で魔法を使う者にとって、少量で魔力が回復するというのは、持ち運びが楽になる事以外にもメリットがあるのか。


「で、アレックスはんは、最近南の街へ行くようになったやろ? これを売れば、そこの貨幣が手に入るんとちゃうかなーって思ってん」

「なるほど。この大きさなら、それなりの数を持って行けるだろうし、ポーション系は価格が高い……って、これはリディアが生み出した薬草などから作られているのか?」

「そ、そんなところ……やわ。それより、先ずはウチの作った薬の効果を実感して欲しいねん。勿論ウチは何回も飲んでるから効果は間違いないんやけど、これを販売して良いかどうかの確認をして欲しいねん」

「そういう事なら、分かった。確認しよう」


 レイが自信を持って差し出したポーションを受け取り、口に含んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る