第247話 奴隷紋
「ん……あれ? 私……え? 裸っ!?」
「起きたか。すまない。色々あって服を着せる時間がなくてな。服は持って来ているから……あ、下着は無いそうだ」
「うぅ……スースーする。パンツが無いから、変な感じが……あの、ここは何処でしょうか? どうして川に?」
ケイトが不思議そうにしていたので、すぐ横を指し示すと、
「ひぃっ!? ま、まさか、これ……全員闇ギルドの構成員ですか!?」
倒れた十数人の男たちを見て、おののきながら抱きついてくる。
「さり気なく父上に抱きつかないでいただきたい。本来なら、貴女はあちら側の人間なのよ?」
「ひゃぁっ! お願い待って! 武器どころかパンツすら無い状態で、おまけにあんな凄い事までしてもらって、今更襲おうなんて思わないわよっ!」
「私は、未だにその凄い事をしてもらっていないんだっ!」
えーっと、ツキは完全に戦意を失っているケイトに武器を向けないようにしような。
「え、えっと、そもそもこの倒れた人の山は何でしょうか?」
「あの家から出て少ししたら、立て続けに襲ってきたんだ。で、街中は人々に迷惑が掛かるから、近くの川へ誘導しただけだ」
次から次へと襲い掛かって来たが、この街には闇ギルドのメンバーが何人居るのやら。
「多分ですけど、この人たちって、私を狙っていませんでした?」
「どうだろうな。全員すぐに倒したから何とも言えないな」
「いえ、きっと私を狙っていると思うんです。さっき話した以上の事は本当に知らないんですけど、それでも口封じの為に。お願いです! アレックス様! 図々しいお願いだというのは、重々理解しております。ですが……助けていただけないでしょうか」
そう言ってケイトが頭を下げて来たが……どうしたものか。
「……ケイトは、これまでどれくらい闇ギルドの活動に関わったんだ?」
「どれくらい……と言われると、どう答えるのが正解か分からないです。私は幼い頃に奴隷商人に売られ、何処にも買い手がなくて闇ギルドに居るので」
「買い手がない……って、こんなに可愛いのにか?」
「えへへ……こほん。私、生まれつき魔力が無いんです。アレックス様は私の事をダンサーだと仰ってくださいましたが、ジョブは魔法系なんです。なのに魔法が使えなくて、気味悪がられて……あ! でも、任務っていう意味では今回が初めてです」
魔法系のジョブを授かったのに、魔法が使えない。
……何処かで聞いた事のある話なんだが。
それに、幼い頃に奴隷として売られてしまったというのも可哀想だとは思う。
あと、ツキは武器を構えるなってば。
「父上! 父上は、この者に甘過ぎます! ……わ、私も可愛いと言って貰いたいです!」
「今更何を言っているんだ? ツキは口にするまでもなく、可愛いに決まっているじゃないか」
「ち、父上ー! 愛してますーっ!」
あ、ツキは拗ねていただけか。
抱きついてきたツキの頭を撫でながら、変な所を触ろうとする手を防いでいると、マミが近寄ってきた。
「アレックス、私は? 私も可愛いポン?」
「あぁ。マミも可愛いぞ」
「嬉しいポーン! 早速子作りするポン!」
いや、しないから。
ケイトも、この状況で便乗しようとするなよ。
「ところで、ケイトは今も奴隷のままポン?」
「は、はい。奴隷紋もありますし」
「だったら、その奴隷紋で、何処に居るかバレてしまうポン」
「そ、そうなんですかっ!? じゃあ、私がアレックス様のお側に居ると、闇ギルドに位置がバレてしまうと?」
「普通はその通りポン。でも魔力が無い場合は分からないポン」
ふむ。マミの言う通りで、奴隷紋から位置がわかるとしたら、俺の根城を突き止め、夜に奇襲……だろうか。
ますますジュリの家に帰れなくなってしまったな。
「ところが、ケイトに魔力が無いからか、それとも闇ギルド側が無防備なのか。その奴隷紋から、所有者の位置が分かってしまったポン。アレックス……どうするポン?」
「それはつまり、闇ギルドの場所が分かったという事か?」
「そういう事ポン」
ケイトの奴隷紋から、持ち主を辿る事なんて普通は出来なさそうなので、闇ギルドが無防備というよりマミが凄いのだと思うが……とりあえず、そんな組織は潰してしまおうか。
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