第329話 新たな街へ

 シーナ国の商人ギルドの本部は、この国の南の方にあると聞き、一先ず前に聞いていた南隣の街――エリラドの街へ向かう事にした。

 すると、


「アレックス。前にも伝えたけど、私も一緒に行くポン」

「私も一緒に行くよ! アレックスから離れないんだから」


 商人ギルドを出た所で、すぐさまマミとレヴィアがしがみついてくる。


「ウチもお父さんと一緒に行くで! というか、ポーションの話もあるし、ウチも行かなあかんやろーし」

「私も父上と共に参ります」


 レナとツキも俺と行動を共にすると言ってきて、


「アレックスさん。私は……」


 ジュリが泣きそうな顔で見つめてくる。


「ジュリ。悪いが、ジュリはウララドの街の自警団として残ってもらえないだろうか」

「うぅ。アレックスさんに捨てられた……」

「ち、違うぞっ! よく考えてくれ。そもそも、俺は魔族領の家が本拠地なんだ。そこへ行くには、必ずマミとジュリの力を借りるだろ? だから、家とシーナ国を行き来する為にも、ジュリにはウララドの街へ残ってもらいたいんだ」

「つまり、アレックスさんは必ず私の家に寄って下さるという事で宜しいですか?」

「そういう事だ」


 俺の考えを説明し、暗くなっていたジュリの顔が輝きだす。

 ジュリは自警団の副団長だから、居なくなるとウララドの街が危ない。

 この街の闇ギルドは潰したが、だからと言って犯罪が全てなくなった訳ではないからな。


「それから、そういう意味ではマミにもウララドの街へ残ってもらいたいんだが」

「うーん。アレックスは必ずジュリの家に来るポン?」

「あぁ、必ずだ。さっき話していたポーションも、家でレイが作っているからな。俺がエリラドの街へ行っている時でも、ポーションや食料を運んでもらうかもしれないし、出来ればお願いしたいんだが」

「……ちゃんと私を愛してくれるポン?」

「もちろんだ」


 そう言うと、マミも納得してくれたので、この二人と俺の人形はウララドの街でこれまで通り過ごしてもらう事にした。

 それから一旦ジュリの家に戻り、ケイトにどうするか話を聞くと、


「うーん。そういう事なら、私はアレックス様と一緒にエリラドの街へ行きますね」


 以前に話していた通り、ケイトは次の街へ行く事に。

 ケイトは元々ジュリの家に居候として居続けている事を申し訳なく思っていて、一緒に家を探したくらいだからな。

 という訳で、俺とレヴィアとケイトに、レイとツキの五人でエリラドの街へ行く事に。


「エリラドの街は行った事があるポン。徒歩では大変なので、馬車で行くと良いポン。案内するポン」

「……というか馬車で行けるなら、前に商人ギルドで行き方を教えてもらう必要は無かったのでは?」

「エリラドまでなら私が案内出来るけど、その先は分からないポン。いずれ商人ギルドへ入って行き先を聞く必要があったから、別に構わないかと思って止めなかったポン」


 なるほど。確かにマミの言う通りかもな。

 マミの案内で乗合場所の停留所へ行き、五人分のチケットを買って、早速乗り込む。


「エリラドまでは、そんなに時間がかからないはずポン。途中で、小さな村を経由するけど、間違えてそこで降りないように気を付けるポン」

「わかった。ありがとう」


 マミとジュリに見送られ、エリラド行きの乗合馬車が走り出す。

 乗っている乗客は、俺たちの他には五人か。座席が全部で十二席しかないから、途中の村で乗客が居たら……居たよ。

 しかも乗ろうとしているのは三人か。

 どうするのかと思っていたら、


「お客さん方……すみませんが、ちょっと詰めて座ってもらえませんかね」


 どうやら無理矢理乗せるらしい。

 まぁ馬車側としても、乗客を大勢乗せた方が儲かるもんな。


「じゃあ、私がアレックスの膝の上に座るー!」


 そう言って、すぐにレヴィアが俺の上に座って来た。

 まぁ詰めてくれと言われているし、仕方ないか。


「でしたら、私がアレックスさん上に乗って、その上にレヴィアちゃんが座るのはどうでしょう?」

「いや、そこまでやらなくても良いと思うんだが」

「ですが、それなら詰めて座っている振りをして、抱いていただけるかと」

「何処で何をする気だよっ!」


 ケイトが暴走気味なのは、あまりウララドの街へ来ていなかったからだろうか。

 一先ず、何事も無く無事にエリラドの街へと到着した。

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