第745話 ドワーフの門
ガブリエラを先頭に、天井の低いドワーフの洞窟を歩いて行く。
「ふふっ。大きなおとんが、ウチよりも小さいなんて、なんか可愛らしいわぁ」
「レミ。見た目は子供だが、中身はいつも通りなんだが」
「まぁそれはそれって事で置いといて、なんか、お姉ちゃんになった気分やわー」
そう言いながら、レミが俺の手を握って歩いて行く。
レミはレイの半分の年齢のため、十二歳で、普段俺が子供扱いしてしまっているからか、お姉さんっぽい行動を取りたいようだ。
とはいえ、元々体力のある方では無いレイの子供の姿なので、少しレミが疲れているようにも思える。
「レミ。抱っこしようか?」
「いやいや、おとん。流石にそれはちょっと……中身はさておき、見た目がうちよりも遥かに幼い子に抱っこされるのは、イヤかなー」
うーん。俺が元の姿に戻れば解決する話なんだが、とはいえ中腰でレミを抱っこしながら……というのは、かなりキツいものがあるんだよな。
「ご主人様! 今こそ、私の出番です! さぁレミ殿と共に、私の背にお乗りください」
どうしたものかと考えていると、唐突に四つん這いのモニカが横にやって来た。
しかし、今の俺は子供の歩幅といえ、どうしてモニカは四つん這いで普通について来られるんだ?
「……変な性癖が移ったらイヤやから、ウチ頑張って歩くわー」
「レミ。無理はするなよ?」
「大丈夫やって。ウチはお姉ちゃんやねんから」
そう言って、レミが顔を上げて歩きだす。
「あの、ご主人様? 無視は悲しいです」
モニカが若干涙目になっているが、レミが自分で歩くと言っている以上、俺にはどうする事も出来ないんだが。
「アレックス。レミと一緒に私の背に乗るかい? 速度も高度も出していないし、子供二人くらいなら、大した負担にならないよ」
俺を挟んで、モニカの反対側に、スーっとザシャがやって来た。
ザシャは浮遊魔法を使っているので、俺がパラディンのスキルで魔力を分ければ、今の状態なら延々と進めるだろう。
確かにアリだな。
「ザシャはんなら、お願いしよーかなー。おとん、一緒に乗せてもらおー!」
「え? いや、俺は平気だから、ひとまずレミは乗せてもらいなさい」
「えー! おとんと一緒がいいー! おとんが一緒やなかったら、乗らへんもん」
「えぇ……し、仕方ない。ザシャ、頼む」
うつ伏せに寝転ぶザシャの上にレミが跨り、その後ろに俺が座ると、ふよふよと浮かび、スーっと進んで行く。
うん。これなら乗っているだけなので、レミも大丈夫だろう。
……今更だけど、ユーリも基本的にずっと俺がおんぶしていたし、メイリンの人形スキルとはいえ、子供に無理をさせてはいけないよな。
「ご、ご主人様ぁぁぁっ! 私は!? 私はぁぁぁっ!?」
すっかり忘れてしまっていたモニカが、泣きながら四つん這いのまま凄い速度で迫ってくる!?
「仕方ないのじゃ。乳女には我が座ってやろう。ほれ、行くのじゃ」
「ちょっ……ミオ殿!? お尻を叩く必要は……おほぉっ!」
「お馬さんごっこがしたいのであろう? あいにく鞭を持っておらぬのじゃ。平手で我慢するのじゃ」
……この場にディアナやツェツィが居なくて良かった。
心の底からそう思っていると、暫く進んだところでガブリエラが足を止める。
「さぁ着いたよ。この鉄の門の向こう側にドワーフの居住区があって、更に奥へ行くと、採掘場があるんだ」
「ニナ。ここに見覚えは?」
「うーん。見た事があるような無いような……ちょっと分からないかなー。とりあえず、入ってみようよー!」
もう待ち切れないと言った様子のニナが門に触れると、ひとりでに門が開いていく。
「これは、ドワーフの魔力に反応して自動で開く門らしいよ。ちなみに、私たちが用事で来る時は、いつもドワーフに開けてもらわないといけないんだ」
「へぇー、こんなのがあるんだー。うーん……ニナの家の近くに、こんなのあったかなー?」
「まぁとりあえず中へ入ってみれば、わかるんじゃないか? 行ってみよう」
ザシャの背から降りると、ニナと共に先頭へ立ち、門の先へ進む事にした。
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