第523話 有力情報?
ひとまず、女性陣が全員満足したところで、最初に出会った河の近くまで戻る事に。
流石に、街道で……というのは、少女が可哀想だからな。
アレニカも落ち着いたみたいで走ったりしないので、少女たちも穏やかに気を失っている。
ただ、感覚を共有しているので、今も河へ向かいながら、俺とアレニカが注ぎまくっているが。
「あ! やっと、アレックス様が戻って来てくださ……っ!」
元の場所へ戻ると、三人の少女の残りの一人が俺の分身に囲まれていて……幸せそうに気を失った。
とりあえず、もう十分だろうと、分身を解除すると、治癒魔法で起こす事に。
「……大丈夫か?」
「はいっ! とても素敵なお時間でした!」
「こうなってしまったからには、責任を取るつもりではあるのだが、少し急ぎの用があって、それが終わってから改めて迎えに行かせてもらっても良いだろうか」
「アレックス様が迎えに来てくださるのですかっ!? し、幸せですっ! 村にはアレックス様の分身さんが居られますので、待てると思います!」
そう言って、三人の少女たちが抱きついてくる。
本来ならば、今すぐ少女たちのご両親に謝りに行かなければならないのだろうが……本当に申し訳ない。
「あの、アレックス様。その御用事というのは、どちらへ行かれるのでしょうか? よろしければ、私たちを連れて行っていただくという事は出来ませんか?」
「いや、玄武という俺の仲間を探しているのだが、水辺に居るらしくてな。なので、君たちには少し不適な場所かと思うんだ」
「水中ですか……確かに。森や林でしたら、我々は活躍出来ると思うのですが……そうだ! では、せめてこれをお持ちください」
「ん? これは……マント? ムササビ耳族のマントか!?」
綺麗に折りたたまれた布を広げると、俺の身長程の大きさがある、綺麗なマントだった。
「はい。我々ムササビ耳族は、生まれた時からマントの使い方を練習するのですが、定期的にマントを新調します。それで、こちらは将来の旦那様に……と、私が織った物でして」
「そんな大切な物を俺が貰って良いのか?」
「もちろんです! 私をアレックス様の妻にしていただけるという事ですし、是非お使いください」
お使いくださいと言われても、俺はマントで滑空なんて出来ないのだが……断る訳にはいかないな。
だが水中では使えないが、日除けや毛布代わりにと、旅をするのに使う分にはとても良いだろう。
「ありがとう。大切に使わせてもらうよ」
「いいなー。私も機織り士だったら、アレックス様に手作りのマントを差し上げられたのに」
「私たちはマジックナイトとシーフだから、仕方ないよー」
なるほど。二人目の少女は機織り士というジョブで、一人目の少女がマジックナイト……って、モニカと同じジョブか。
アレニカが一人目の少女にやたらと拘っていたが、モニカと同じジョブというのが関係あったりするのだろうか?
……もう少し詳しく調べてみたい気もするが、早く玄武を見つけ、それからムササビ耳族の村へ挨拶しに行く必要がある。
ここは一刻も早く玄武を見つけて、戻って来るというのが筋だろう。
「……そうだ。この辺りで、河や海に面した洞窟を知らないだろうか」
「向こうの下流へ行けば、水車用の洞窟がありますが……」
「いや、そこは俺たちも行ったんだ。他に似たような物があれば教えて欲しい」
「んー、私が直接見た訳ではないですけど、ここから真っすぐ西へ下っていくと、滝があるんですけど、その裏に洞窟があるとかないとか……」
「おぉっ! それは本当か!? ありがとう! とても良い情報だ!」
「えへへー、アレックス様に喜んでいただいて、とっても嬉しいです」
少女が抱きついてきたので、頭を撫でると、他の少女たちも抱きついてくる。
ひとまず、全員の頭を撫でたところで、別の少女が口を開く。
「ですが、大丈夫でしょうか。この先……西側へ河を下っていくと、真っ逆さまですよ?」
「ん? 真っ逆さまとは?」
「いえ、先程この子が言った通り、滝ですので」
「……って、滝になるのはこの河かっ!」
なるほど。出来るだけ近くまで船で行って、そこからは歩き……いや、今ここで船を降りて歩いた方が良いかもしれないな。
「三人とも、貴重な情報をありがとう! 出来るだけ早く用事を済ませて迎えに行くから、待っていて欲しい」
「はいっ! お待ちしておりますっ!」
俺は河へ飛び降りると、今の話をラヴィニアたちに伝え、これからどうするかを考える事にした。
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