第186話 ヨハンナさんからのお土産
「そうだ。これ、ママから旦那様にって」
ユーディットが帰ってくるのが遅くなった原因でもある、お土産とやらが大きな鞄から出てくる。
「先ず、これが魔法の羽ペン。何度書いてもインクが減らないというか、インク不要のマジックアイテムなんだって」
「へぇー、それは凄いな」
「あと、こっちが視界を保存する眼鏡……キャプチャー・グラスだったかな? これを掛けている時に魔力を流すと、こっちのプリンターっていう箱から、今見ている視界そっくりの凄い絵が出てくるマジックアイテムなんだってー」
ユーディットに眼鏡を渡されたので、とりあえず掛けてみる。
その状態で眼鏡に魔力を注いでみると、ユーディットが持っていた箱から、掌サイズの四角い絵が出て来た。
「凄いな。ユーディットの可愛い姿がそのまま絵になったな。……あれ? 今更なんだが、服が違うな」
「えへへ……家に帰ったついでに、ちゃんとした服に着替えて来たの」
あー、今まではモニカが急ごしらえで作った、白い布で胸を隠しただけって感じだったからな。
それがユーディットによく似合う、淡い水色の可愛らしいワンピースになっていた。空を飛ぶのに、スカートが短い所は変わっていないが……。
しかし、このプリンターという箱から出て来た絵は凄いな。
この話を聞いた瞬間に動いたのだろう。
ユーディットの後ろでスカートを自ら捲り上げているサクラとモニカも、きっちり描かれていた。
ただ、二人共何をしているんだと思わなくもないが。
そんな事を考えていると、ソフィが近寄って来た。
「以前に、これに似た……というか、これを進化させた魔法装置を作った事があるような気がします……」
「そうなのか?」
「はい。こちらは静止画ですが、動画として音声も一緒に記録し、繰り返し再生可能にしたような気がするんです。……マスター。今ご依頼いただいている水やり装置の完成後、その開発をしてもよろしいでしょうか?」
「良いけど、それならソフィが元居た場所を調べた方が早くないか?」
「元居た場所……ですか?」
「あぁ。俺たちが初めて出会った場所だ。おそらく、あの奥に何かがあるんじゃないかとも思っていたんだが」
色々あり過ぎて忘れていたが、元は黒髪の一族の施設がある……と、シェイリーに言われたのが始まりだったんだが、ソフィに出会って、すっかり忘れてしまっていたな。
「マスター! そこへ行きましょう! 何か凄く大事な物がある気がしてきました」
「あぁ、そうだな。とはいえ、教師の話とか今後の作業とか、もろもろ決めてからな」
ちなみに、この眼鏡は土産というより、ヨハンナさんのリクエストらしい。
時々ユーディットやユーリの様子を撮って欲しいのだとか。
まぁすぐ側で我が子の様子が見られないヨハンナさんの気持ちも分かるので、定期的に撮るようにしよう。
もちろん、未だ会えていない他の親御さんも同じ事を思うだろうし、ユーディット専用とせずに、ニナやノーラたちも撮るが。
という訳で、早速ニナを撮ってみる。
「凄い。ニナが絵になっちゃったー」
興味津々と言った様子で寄って来たニナが、驚きながら、その絵を眺め……って、またもやサクラとモニカが写っているのだが、何故二人は揃って胸を出しているんだ!?
あとは、ユーディット向けの天使族の本が何冊かあったが、これは神聖文字で書かれているので俺たちには読めない。
ただ最後に出てきた、卵を使ったマヨネーズという調味料で、リディアが喜んでいた。
一先ず、ユーディットの帰省騒ぎが落ち着いたので、昼食を済ませ、それぞれの作業へ。
メイリンが教師となる文字の読み書きは、ユーディットの強い要望があって、早速ムギと共に教えてもらっているが。
そんな中、ツバキが俺の所へやって来る。
「アレックス様! スノーウィ殿の遣いだと仰る方が来ておられますが」
「スノーウィの? 分かった。すぐ行く」
ツバキに案内されて行くと、
「あ、貴方がアレックスさんッスね? 自分、スノーウィーマウンテンさんに言われて来た、ビビアナって言うッス! これからよろしくッス」
頭から大きな耳が生えている、小柄な女の子が近寄って来た。
「あ、あぁ。俺がアレックスだが……どういう用件なんだ?」
「えっと、先日の作物と交換する海産物を届けるように言われたッス。あと、それとは別で、お土産を持って行くようにって言われて……それがこれッス」
そう言って、ビビアナが運んできた物を見せてくれたのだが……スノーウィよ。
ネーヴを助けた事の感謝の気持ちなのだろうが、それにしても送ってくる物が多過ぎないか?
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