第178話 様々な事後
「あぁぁぁ……もう、おしまいなんですか!? もっと……もっとアレックス様と一緒に居たいですっ!」
「私、やっぱりこの村に住む! もうアレックス様なしでは、生きられませんっ!」
「二人共……アレックスさんはユーディットちゃんの夫なのだからな? それを忘れぬように。あと、我ら天使族の村の防衛の任務もな!」
昼食から夕方まで皆で寝室に籠った結果、天使族のトリーシアとアーシアが帰りたくないと言い出し、ヨハンナさんに怒られている。
……まぁその、レイが試作品を試したいと言い、前に俺が依頼した「効果を抑えた精力剤」を使ったのが問題なのだが。
試作品の精力剤は、俺が気を失った相手とし続ける程ではないが、そろそろ終わろう……という判断が出来ないくらいには理性を失ってしまう。
その為、気付いた時には夕方になっており、天使族の二人の瞳にハートが浮かんでしまっていた。
「ふっふっふ……ウチは愛してもらえた上に、材料が沢山手に入ったから、万々歳やわ」
「これが獣モードのアレックス様……凄かったです」
「いや違うぞ、ツバキ。これは未だ抑え気味だ。アレックス様の本気の獣モードは、私が気を失う程だからな。もう一段階上があるのだ。近々、本気を出してもらわないとな」
レイが裸のまま謎の容器を持って自室へ行き、ツバキとサクラは困った事を話している。
ちなみに、スノーウィは言わずもがなで、ヨハンナさんとメイリンとの交渉も纏まっていて、トリーシアとアーシアが寝室から出てくるのを待っていたらしい。
「では、今回はこれらの作物を持ち帰らせていただく。メイリンさんから依頼された品は、出来るだけ早く用意しよう……ユーディットちゃん、ユーリちゃん! じゃあ、また来るからねー!」
「ヨハンナ様。キャラのギャップが激し過ぎます」
「アレックス様の突きも激しかったですけどね」
天使族の三人が魔法陣から姿を消し、村へと帰って行った。
それからネーヴに呼ばれ、東エリアの少し南側へ。
「アレックスさん。私も、そろそろ召喚魔法で呼ばれる時間だ。ネーヴも離れておかないと巻き込まれるぞ」
話を聞くと、ネーヴの国に使える宮廷魔道士の中に召喚魔法を使える者が居て、予め魔力を登録しておいたスノーウィの周囲にある物を、そのまま呼び寄せるらしい。
なので、メイリンとの交渉の結果、持ち帰る事となった作物が入った箱がスノーウィの足元に置かれている。
「ん? という事は、スノーウィと一緒に居れば、そっちに行けるという事か。ネーヴの故郷の近くにエルフの森、ドワーフや獣人族のリス耳族の村は無いか?」
「生憎、そういうのは無いと思われます。俺たちの故郷は雪国だから、エルフが住むような森は無いだろうし、寒さに弱いドワーフは住まないだろう。獣人族は熊耳族というのが居た気もするが、リス耳族はどうだろうか。居るかもしれないが、ハッキリとは分からないな」
「そうか。可能であれば、彼女たちを故郷に帰してあげたいんだ。そういう情報があれば、また教えて欲しい」
「わかった。残念ながら、これでも忙しい身なので、先ずはこの作物と交換する物を転送魔法で送ろう。今、俺が立っている、この地点に転送するので、気を付けて欲しい」
今居る地点は……南東エリアといった感じか。
ここはスノーウィの転送位置という事で、家などを建てないようにしないとな。
「ちなみに、今朝はネーヴの傍へ転移したが、ここに簡易の魔法陣を作成しておいたので、次回は俺もここへ転送されるので、よろしく頼……」
「あ……これが召喚魔法なのか?」
「そのようだな。私も召喚される所を見るのは初めてなので、確実ではないが」
突然スノーウィの姿が消えたので驚いたが、タイミング的に召喚魔法だろう。
一先ずネーヴと共に東エリアへ移動すると、
「お兄さーん! 見てみてー! ノースダックさんたちのおうちを作ったんだー!」
ノーラに呼ばれ、訓練場の東側へ。
そこには、天使族たちが連れて来たノースダックが入った、小さな飼育小屋が出来ていた。
何でも、鴨の飼育には水が重要だとヨハンナさんに聞き、水路がある北側に小屋を作ってくれたのだとか。
そういう事を知らずに、適当に南東にしようかと思っていたので、ノーラを褒めていると、
「えへへー! あ、それでね、ムギちゃんにノースダックさんたちのお世話係をしてもらおうと思うんだけど、良いかなー?」
「え? ま、まぁ良いけど……大丈夫なのか?」
「ん? 大丈夫だと思うよー!」
嬉しそうに鳥たちの飼育係をムギに指名してきた。
いや、俺は構わないんだけど……ムギは元々猫だよな?
鳥の世話って、大丈夫なのか? だ、大丈夫……なんだな?
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