第432話 闇ギルドの奥の手……?
奥の部屋は……牢屋か。
中には、目から光を失った女性や子供たちが居る。
早く出してやりたいのだが、囚われている女性の内、数人が突然顔を輝かせて鉄格子に向かって来た。
「男っ! どうしてっ!? この人に触られたい! 抱きつきたい! 死んでいた感情が勝手に……」
「お願いっ! 触るだけっ! 指先だけで良いから触ってくださいっ! 貴方に触ってもらえないと、死んじゃうぅぅっ!」
あー、ここにも例のポーションを飲んだ女性たちが居るのか。
街中でもどうかと思うが、闇ギルドの中でベイラドの二の舞にするわけにはいかないので、暫く牢の中で待っていてもらおうか。
心の中で女性たちに謝りつつ、更に奥へ進むと……広い部屋に五人の男が居た。
奥に居る奴だけ、一際大きな椅子に座って居るので、おそらくアイツが長なのだろう。
「お前たちが、この闇ギルドの長と幹部とかいう奴らなのか?」
部屋に入って声を掛けると、端に居た奴が突然大声をあげる。
「誰だ、お前は!? どうやってここまで来た……って、そのおんぶしている女は、うちの聖女じゃねーかっ! ぐったりして……ひ、人質って事か!?」
「なんだと!? 聖女は加護の力で状態異常に耐性があるっていうのに、それでも眠らされているなんて……アイツ、俺たちよりもヤバい薬を持っているようですぜ」
「へぇ……ボス。こいつから、その薬を奪いましょう。もしくは、作っている奴らを吐かせましょう」
クララが人質!? いや、薬とかで眠らせた訳ではないのだが……本当の事を言っても信じないだろうし、放っておくか。
どのみち、こいつらは全員倒すし関係無い……と思っていると、一番奥の男が口を開く。
「兄ちゃん。一人でここへ乗り込んで来るなんて、余程腕っぷしに自信があるんだろ。目的は何だ?」
「闇ギルドの撲滅だ」
「はっはっは、面白い事を言うな。取引に応じる気は?」
「無いな。お前たちが自ら自警団へ自首するというのなら、話は別だが」
「そうか……お前たち、聖女もろとも殺して良いぞ。聖女を失うのは痛いが、六合教で新たな聖女が見つかったら、また回してもらえば良い。それだけの事だ」
奥の男の言葉で他の四人が一斉に立ち上がり、手前の二人がそれぞれ短剣を。奥の二人が同時に杖を掲げる。
くっ……攻撃魔法は面倒だな。
右の男が短剣を投げて来たので、剣で叩き落した直後に、すぐ傍まで迫っていた左側の男が斬りかかってきた。
流石に連携が取れているな。
だが俺から左の男に飛び込み、体当たりを食らわせ……奥から黒い何かが飛んでくる。
闇属性の何かだと判断し、聖属性の攻撃で黒い何かを斬ってみた。
「≪ホーリー・クロス≫」
「ばっ……馬鹿なっ! 闇の合成魔法を斬っただと!?」
どうやら正解だったらしく、黒い何かが霧散したな。
もしかしたら、クララから貰っていた聖属性攻撃向上のおかげかもしれない。
そう考えながら右側の男を殴り飛ばし、茫然としている二人の魔道士風の二人を蹴り倒す。
「さて、残るはお前だけだな」
「まさか、四天王がこんなにもあっさりと……ここまでか」
「観念するのか? さっきの繰り返しになるが、自首するなら痛い目には遭わずに済むぞ」
「ふぉっふぉっふぉ。闇ギルドなぞ、六合教の支部の一つに過ぎんよ。幾らでも蘇るが……お前は道連れだっ! 我ら闇ギルドが生み出した、史上最凶の研究成果を見せてやろう! 出でよっ!」
そう言って奥の男が何かを押すと、横の壁が開き……闇ギルドって、こういうの好きだよなと思っていたら、予想外の魔物が居た。
「はっはっは。もう誰にも止められんぞ! もちろん我らにも不可能だ! 災厄級の魔物……シャドウ・ウルフよ! その男と聖女を、そしてこのクワラドの街を破壊しつくせっ!」
男の声と共に黒い狼が現れると、一直線に俺の所へ向かって来て、
――KUUUUN
今朝、コルネリアと一緒に見た光景が繰り返される。
「……は? いや、シャドウ・ウルフだぞ? こいつを召喚する為に、一体どれだけの費用を費やしたと……」
「ほう。シャドウ・ウルフを召喚とは、どういう事だ? 詳しく聞かせてもらいたいものだな」
「え!? どうして、シャドウ・ウルフがお前の傍に居るんだっ!? 懐いて……は居ないが、怯えるようにしてお前に服従している!? お、おい! お前の飼い主はこの俺だぞ!?」
「さっきの事を早く喋った方が良いぞ。このシャドウ・ウルフ……この感じからすると、本物だろ?」
「本物だが……あ、ちょっ! 待って! 俺はおもちゃじゃない! 前足は……待て、牙はもっとやめろーっ!」
とりあえず、シャドウ・ウルフに男へじゃれつかせてみたが……あ、失禁した。
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