第760話 ドワーフの国で事情聴取
いろいろと汚れている女性たちの身体を綺麗にしようと、分身たちに自動行動で身体を洗うように指示したら……何故か大惨事になっていたので、慌てて分身を解除する。
「こ、こんな中途半端な状態で止めるなんて……ご主人様、それはあんまりですっ!」
「アレックスさん。今のは酷いですよー!」
「アレックス。流石に今のはどうかと思うぞ」
何故かモニカ、グレイス、ザシャを始めとして、シアーシャとガブリエラにも、酷いと言われてしまった。
……どうしてこうなった。
ただ、最初に洗い方を教えてくれたミオと、結衣は満足そうにしているのだが、
「も、もう少し……もう少しだったんだ!」
「後生だ……さっきのをもう少しだけ頼みます!」
「……お、男。そこに男が居るじゃないか……」
ドワーフの兵士たちまでもが不満を口にし、更にジリジリと俺に迫って来る。
何がどうなっているんだ!?
気付けばモニカまでドワーフの兵士側に混じって、俺に近付いてきている。
俺のすぐ傍にはニナとレミも居る事だし、結界スキルで守ろうかと思ったところで、
「な、何だ!? 上に誰も居ないと思ったら……おい、お前たち! 職務を放棄して、一体何をしているんだっ!」
鎧に身を包んだ新たな兵士が現れた。
良かった。これで皆が落ち着くかと思ったのだが、
「女性が全員裸……そして、この中に子供とはいえ、男は一人か。全員ショタ……いや、流石におかしい。そこの少年! 事情聴取……ぐっ! こ、この頭が蕩けそうになる香りは一体……」
新たに来た女性兵士の様子がおかしい。
まさか、またレミが一服盛ったのか!?
チラっとレミに目をやると……俺の視線に気付いたレミが、ゆっくりと首を横に振る。
「おとん。ウチは何もしてへんで。というか、せっかく泡を出して綺麗にしたのに、また新鮮なアレを大量に出したから、おとんのアレで皆おかしなってんねんって」
「……あ、そういう事か。ならば……≪アクア・バブル≫」
再び泡魔法を使用し、女性達や床を綺麗に洗い流すと、後から来た兵士たちが姿勢を正す。
「な、何だったのだ……何はともあれ、昨晩何があったのか、説明してもらおうか。昨晩の班長は上に来るように! あと、残りの者は全員衣服を整えよ!」
良かった。兵士たちが正気に戻り、慌てて衣服を整えて、牢屋から出て行った。
後はモニカたちにも衣服を整えてもらって……いや、着てくれよ。
「ご主人様。あとで、必ず続きをしてくださいませ。こんなムラムラした状態で、戦闘など無理です!」
「そうです! あ、私としては子供の姿でも良いのですが、普段の姿だと尚良しです」
「そうだ。またトロッコで移動するんだろ? 今度は私がトロッコのレバーに座ろう。移動しながらなら、時間も無駄にしないし良いだろ?」
モニカ、グレイス、ザシャの三人は何を言っているんだ?
訳が分からないと思いつつ、兵士が俺たちを呼びに来たので、皆で牢屋を出て早速魔族領へ……とはならず、事情聴取が始まってしまった。
「ふむ。そちらのドワーフの少女の家を……で、魔族領を解放しろと? 本当に女王様がそんな無茶な事を言ったのか!?」
「まぁそれに近い事を言ったのは事実だ。ただ、魔族領の魔族を倒すと言ったのは俺だが」
「ふっ! 我らイベールの兵士たちが、何度魔族領を取り戻そうとしたと思っているんだ! お前のような子供に出来るのであれば、我々がとっくにあの地を取り戻しておるわ!」
「という事は、魔族領の魔族と戦った事があるのか!?」
「……我々の先祖はな。ただ、酷い負け戦だったそうだ。以降、我らの国は魔族領への侵攻が法で禁止された程だ」
法律で魔族領に攻めない事を決める程の大敗だったのか。
ドワーフ族といえば、非常に優れた鍛冶師で、装備もかなり良い物を揃えていたはず。
それなのに、そのような結果となった理由が知りたいな。
「……一つ教えてもらいたいのだが、この西大陸の魔族領を支配する魔族は、どのような奴なのだろうか」
「それは、我々が答える事は出来ないな。先程も言った通り、二度と魔族領へ攻めないようにと、その魔族の研究や調査すら禁止されている」
「そうか……情報があれば有難かったのだがな」
「どうしても情報を得たければ、イベールの王女に聞くしかあるまい。王族であれば、法も例外が有り得るだろうからな」
この国の王女に聞けば良いのか。
皆を危険に晒さない為にも、情報は得ておこうか。
ひとまず、ドワーフの本部から許可を得ている事を伝え、そして確認してもらい、イベールの国内へと移動した。
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