第851話 街中に散らばったアレックスの分身たち

「くっ……何故だ!? どうして、こんな感覚に……」

「えへへ、貴方様の……やっぱり凄い! いただきまーすっ! 〜〜〜〜っ!」


 おかしい。街へ散らばらせた分身のたちから、相当な数の変な感覚が伝わってきた。

 俺の動きも鈍くなり、一緒にいた酒場の少女に責任を取らなければならない事態に。

 新米騎士を含め、どうしてこうなってしまったのか……状況確認の為、適当な分身に視点を切り替えてみる。


「凄いっ! 凄い凄い凄……っ!」


 分身の上で女性が……って、自動行動にしたのが失敗だったのか!?

 だが、魔族領に居る妻たちならまだしも、見知らぬ人を襲うような……いや、違う! よく見たら、分身が路地に追い詰められる形で、大勢の女性たちに囲まれている!?


「早くぅー! 次は私の番なのー!」

「こんなに大き……不思議!」

「今日はスカートで良かった。それより、まだかなー?」


 何が起こっているんだ!?

 とりあえずこの分身は解除し、次の分身へ。

 だが次の分身も、その次の分身も似たような状況で、四体目の分身に至っては、


「ふふっ、アレックスよ。大人しく捕まったと思ったら、街ごと崩壊させる気だったのじゃな? 流石に我もそこまでは読めなかっ〜〜〜〜っ!」


 どういう訳か、ミオに襲われていた。


「ミオ。どうして、こんな所に?」

「む? 我は露出プレイの趣味はないのじゃ。アレックス以外の男に肌を晒すつもりはないのじゃ」

「いや、そういう話ではなくて……」


 何故、ミオが街の中で分身と一緒にいるのか聞きたかったのだが、突然立ち上がったと思ったら、俺から……分身から離れてしまう。


「わーい! やっとマリの番だー! アレックス、アレックス、アレックスー!」


 マリーナまで!? というか、よく見たら、ここにはグレイスも居るな。

 見知らぬ少女たちも大勢居るが。

 ひとまず、後でミオたちと話をする為、この分身は残して、次の分身へ。

 うん。どの分身も同じ状態だと思っていたら、


「……クス! アレックス!」


 俺の本体に、オティーリエが呼びかけていた。


「す、すまない。待たせたな」

「待たせ過ぎだよっ! その間、この子は何度も痙攣して……次は私だからね?」

「……いや、それよりモニカたちはどうなったんだ?」

「もうとっくに見つけて救出したよ。だから、その子と交代してご褒美を……」


 そうか。オティーリエが助け出してくれたのか。


「ありがとう。流石はオティーリエだな」

「えへへ。じゃあ、ご褒美……」

「では、相手側に人質も居ない訳だし、もう我慢する必要はないな」

「うん。だから早く出して、私と交代……」

「メリナ商会のボスというか、一番上の奴は?」

「残念ながら、不在でね。店に居て攻撃してきた奴らは、全て投げ捨てておいたわ。それより、私の番……」

「そうか。わかった……ひとまず、今日はモニカやドワーフの女性たちを安全な場所に連れていき、明日メリナ紹介のトップに責任を取らせるか。オティーリエ、ドワーフの女性たちは何処に居るのだろうか」


 まずはドワーフの女性たちを何処かに保護したい。

 今度は先程の村とは違い、出来れば全員守れるような場所があれば良いのだが……流石に難しいか。

 そんな事を考えながらオティーリエの回答待つのだが、何故か反応がない。


「オティーリエ?」

「……ご褒美ー! 私はアレックスの為に頑張ったから、アレが……子種が欲しいのっ! ブラックドラゴンを増やすのーっ!」

「わ、わかった。ドワーフの女性たちを保護して、安全な場所へ連れて行ったら、一晩中好きにして良いからさ」

「ホントっ!? じゃあ、あんな事やこんな事も出来るのねっ!?」

「な、何をする気なのかは分からないが……まぁそうだな。という訳で、ドワーフたちの場所を教えてほしいのだが」

「それなら、向こうの方よ。今はミオが守ってくれているわ」


 ん……? ミオが一緒にいるのか?

 けど、ミオは見知らぬ女性たちと一緒に居なかったか?


「ミオは他の女性たちと一緒に居るという事はないか?」

「そんな事するような子じゃないと思うけど。守ると言ったらちゃんと守ると思うけど……あぁ、でもこの街に囚われていたドワーフの女性も助けたから、アレックスが知らないドワーフとは居るかも」


 という事は……マズいっ!

 ミオと共にいる分身へ、大慌てで意識を切り替えると、


「凄いっ! アレックスさんの……こんなの知らないぃぃぃっ!」


 マリーナやグレイスたちがぐったりする一方で、見知らぬ少女……ドワーフの女性に乗られていた。

 あぁぁぁ、せっかく助け出したのに、ナニをやっているんだよっ!

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