第758話 投獄されたアレックス
ガシャンと大きな音を立てて、牢屋の扉が閉められた。
どうやら三名ずつの牢のようで、俺はニナとレミと同じ場所に入れられている。
「仕方がない。夜になっていた事に気付いていなかったし、今日はこのまま就寝するか」
「うーん、仕方ないかぁ。一応、ベッドもあるし、汚い訳でもなさそうだしねー」
「せやなー。おとんが本気をだしたら、あんな牢くらい簡単に壊せるんやろうけど、そんな事をしたら、一発でお尋ね者やからなー」
ニナとレミと話し、三段ベッドで寝る事にしたのだが……ドワーフサイズとまでは言わないが、俺の身体は確実に収まらないので、変化スキルで子供の姿になって寝る事にした。
以前にグレイスの誘拐騒ぎがあった時、兵士の詰所で一泊した事はあったが、流石に牢屋で一晩過ごすというのは一度もない。
聖騎士としてどうかとも思うが、レミの言う通り変な事をした方が後々大変な事になるし、もう夜も遅いので、このまま眠らせてもらおう。
「ニナ、レミ。おやすみ」
「うん。お兄さん、おやすみー」
「おとん、おやすみー!」
そう言って、ニナとレミの二人が俺のベッドの中に……って、何でだよっ!
「ニナもレミも、どうして一番下のベッドへ入るんだ? 下から、俺、ニナ、レミって決めたと思うんだが」
「いやー、そうなんだけど、ちょっと毛布が薄すぎて……ドワーフは寒さに弱いから」
「ウチは、おとんがいつも他の女の人と一緒に居るから、たまには甘えたいと思ってんけど……あかん?」
ニナが寒さに弱いのは、初めて会った時からそうだったし、レミの言い分については申し訳なく思う。
二人の言葉を聞き、少し狭いが三人で一緒に寝る事にした。
「えへへー。お兄さん、あったかーい!」
「ふふっ、おとんの匂いやー!」
……いや、あの、ニナもレミもくっつき過ぎではないだろうか。
ニナが俺の横に寝転んで抱きしめてきて、レミは全力で甘える……というのが、仰向けに寝る俺の上に乗って、腹に顔を埋めている。
レミは、ニナが居るから少し遠慮して顔の位置を下げているんだよな? レミの胸の位置が微妙過ぎるんだが、変な意図はないよな!?
そんな事を考えつつも、そのまま眠りに就き……何者かに見られている! と、視線を感じて目を覚ます。
「んふー、お兄さーん!」
「おとん……くぅ」
ニナとレミは熟睡しているようだが、起こさないように身体を動かさず、見える範囲で周囲を確認すると、沢山の目が俺たちを覗き込んでいた。
慌てて飛び起きようとしたが、俺の口が塞がれる。
「ご主人様。ニナ殿とレミ殿だけズルいです。早く分身を」
って、これはモニカか。
他の目も、ミオやシアーシャたちのようだ。
とりあえずモニカたちと会話する為に分身し、本体から離れる。
「ここは牢屋の中なのに、どうやって入って来たんだ?」
「アレックスさん。いかにドワーフ族の作った堅牢な牢とはいえ、この程度の牢を抜け出すなど、造作もありませんの」
「シアーシャ。牢を破壊したりしていないよな? 面倒な事になってしまうが」
「えぇ。大丈夫ですの。私の力で兵士を混乱させ、扉を開けさせましたから」
シアーシャはそんな力を持っていたのか……と思ったら、夜にしか使えない力らしい。
ひとまず、牢を壊していないなら、大丈夫……か?
「それよりも、ご主人様! 分身が一体では足りません! 早く分身を!」
「いや、モニカは何をする気なんだよ」
「当然、ナニに決まっております! ニナ殿とレミ殿だけスッキリして、ズルいです!」
「いや、俺たちはそんな事はしていないんだが。そもそも、ここは牢の中だぞ?」
「良いでは無いですか。牢の中でするなど、中々体験出来る事ではありません! この場所を活かした、看守と囚人プレイが出来ますよ!」
モニカが何を言っているか分からないが、集まっているミオたちも分身しろと迫ってくる。
「いや、明日は魔族領だ。ちゃんと休むべきだと思うのだが」
「えぇ。ですから、ご主人様ので英気を養うのです」
「えぇ……というか、見ての通り俺の本体の上にレミが覆いかぶさっているから、出すとマズいんだが」
出すと……というか、臨戦状態になるだけでもダメな感じだ。
「ご主人様……この結衣にお任せください。ご主人様の脚の間から、顔だけ出す事も可能です」
影の中から結衣が姿を現したので、
「ふっふっふ。アレックスよ。分身するのじゃ」
ミオたちが圧力をかけてきて……普通に就寝したかったのだが、分身を出す事になってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます