挿話150 我慢出来ないモニカ
「アレックス~~~~っ!」
「アレックス様、素晴ら……つ!」
「あなたぁぁぁっ!」
突然河から現れた神秘的な女性や、褐色のダークエルフに、私をここに置いてくれたラヴィニア殿。
他の女性たちも、分身したアレックス殿に自ら抱きつき……くっ! このような幸せそうな顔を見せつけられては、私もどのような感覚を得られるのかと、混ざりたくなってしまう。
それに、何故かお腹の奥が熱いというか、先程から変な感じになっているし。
だが、アレックス殿は私の事を妻だと言ってくれたものの、それなら何故他の女性たちと……私は初めてなのだから、私だけを見て欲しいのに。
「セオリツヒメ。そろそろ、話をしても良いか?」
「んっ……神と子を成せるかという話? それなら、普通の人間族なら無理だけど、アレックスなら大丈夫よ」
「いや、そういう話ではなくて、そこに居るモニカの話なんだ」
ん? アレックス殿が急に私の話を始めた?
でも、トゥーリア殿を抱きかかえたまま……アレックス殿。それは私にもトゥーリア殿にも失礼ではないだろうか。
ただ、トゥーリア殿は自ら激しく……これは聞こえていなさそうだな。
「そこで聖水を垂れ流している女性の事? 私の話はしてくれないの……っ!」
「いや、セオリツヒメにも関する話で、順を追って話すと、俺たちは西大陸の第二魔族領という所に……」
アレックス殿がセオリツヒメと呼ばれた女性に、白虎殿を助けた時の話をする。
私の身体が魔族に乗っ取られ、浄化させる水のスキルで、アレックス殿の人形に魔族を移して倒した……が、私の様子がおかしいと。
いや、何もおかしくないし、むしろ今のアレックス殿の状況の方がおかしいと思うのだが。
どうして、このような大勢の女性を……というか、アレックス殿はトゥーリア殿と。セオリツヒメ殿はアレックスの分身とそれぞれ抱き合いながら、会話を続けているんだっ!?
「なるほど。私のスキルでそんな事態になるとは考えられないから、おそらくその魔族の影響ではないかと思う。モニカさんの身体を乗っ取っていた所を、私の力で浄化したから、魔族が拠り所にしていた部分が一緒に水に流されてしまったと思うの」
「河に落ちて岩にしがみついていたら、その岩ごと流された……という感じだろうか?」
「そうだね。しがみついていたのが魔族で、一緒に流された岩が、モニカさんの性格なのか性癖なのか、記憶や知識なのか……何が一緒に流されたのかは分からないけど、そういう感じだと思う」
セオリツヒメ殿とアレックス殿は何を話しているんだ?
私は私であって、何も変わっていないというのに。
「セオリツヒメのスキルで流されてしまったものは、もうどうしようもないのだろうか」
「……いや、一つだけ可能性があるの。ハヤアキツヒメっていう神が居るから、その神に聞けば、わかるかもしれない」
「ハヤアキツヒメ? その神様は何処に居るんだ?」
「残念ながら、私にも分からないの。けど、私が水に流した穢れを呑み込んで浄化する神様なの」
「既にモニカの何かが飲み込まれていたら……いや、分からないか。とにかく、そのハヤアキツヒメという神様を探すしかないか」
よく分からないが、話が終わったらしい。
……では、ようやく私の番だろうか。
ただ周囲に沢山の女性が居て、結界の中に居るモニーが気絶している女性を羨ましそうに見つめている状況で初めてを……というのはいかがなものだろうか。
「アレックス殿。では、そろそろ私を……」
「そうだな……分身解除」
「えっ!?」
「皆、気絶している者も多数居るし、もう十分だろう。モニカを戻す為に、ハヤアキツヒメという神様を探そう」
え? えぇっ!? えぇぇぇっ!?
アレックス殿……私、まだ何もしていただいていないのに!
「……もうおしまい? まぁでも、昨日も沢山したし、ちょっと短いけど許す」
「あれー? アレックスー、もう終わりなのー? もっと欲しいなー」
「アレックスー! プルムは久しぶりに直接いただいて、すっごく嬉しかったのー!」
レヴィア殿やマリーナと呼ばれていた幼女に、プルム殿……は、また幼くなっているな。
だが、女性たちが皆、いそいそと身支度を整え始めた。
アレックス殿。私……私が放置されたままなのぉぉぉっ!
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