第516話 二手に分かれるアレックスたち

「……という訳で、リディアたちと離れた後に、ある村の長老から今の話を聞いたんだ」

「その話なら、私もお婆ちゃんから――先々代の村の長から聞いた事があるね。あくまでお伽噺だと思っていたけど……本当なの?」

「俺はあり得る話だと思っている。というのも、俺たちが元居た大陸では、土を司る魔族がもの凄い広範囲を土で埋め、何も無い平らな土地にしていたからな」


 プルム・ツーが居る村の村長が話してくれた、この大陸に風を司る悪魔が居て、玄武の力を弱める為に大陸を高く持ち上げ、海から離したという伝説について伝えると、サマンサも聞いた事があると言っている。

 これは尚更信憑性が高いのではないだろうか。

 レヴィアが引っ張ってくれたから、アマゾネスの村と近く感じるけど、実際はかなり距離がある場所で、同じ伝承が残っているわけだし、俺は別の魔族領で似たような話を聞いている。

 土の四天王ベルンハルトを倒してからかなり日が経っているが、おそらく風の四天王とかそんな感じの魔族が居るのだろう。


「という訳で、玄武については水に近い場所を中心に調べて行こうと思うんだ」

「……ノーラさんの故郷は、当然陸地よね?」

「あぁ。フェリーチェが最初に案内してくれようとしていたのは、山だったな」


 はっきり行ってしまうと、プルムのおかげでラヴィニアも移動出来ているが、やはり陸地の探索には向いて居ない。

 ラヴィニアは水辺で活動してもらってこそ、力が発揮できると思うんだ。


「という訳で俺の案としては、玄武の捜索を俺とレヴィア。ラヴィニアとプルムに、ニースという布陣で。もう一方のノーラの故郷の探索は、フェリーチェに案内してもらい、モニカとミオ、ノーラの人形ノアとユーリというのを考えている」

「あら? アレックスさん。私は?」

「リディアは、やはり身重なので万が一の事があっては困るから、このアマゾネスの村で、ステラの人形スティと共に待っていて欲しいんだ」

「アレックスさん……天后さんの加護もありますし、私はアレックスさんの傍に居たいです」

「だが、魔物が現れる事もあるし、何よりかなり移動する事になり、負担が大きい。俺とリディアの子供の為にも頼む」

「アレックスさんと私の……そ、そうですね。わかりました」


 リディアが泣きそうな表情で抱きついてきたが、何とか分かってもらえたらしく、落ち着きを取り戻す。


「ですが、アレックスさんが玄武さんを探す為に水辺を中心に……という事は、船を使われるのですよね?」

「まぁそうなるかな」

「でしたら、天后さんのスキルで、ちゃんと毎晩帰って来てくださいね? 約束ですよ?」


 そう言って、リディアが抱きついて来て……うん。何とか纏まったみたいだ。


「いや、待つのじゃ。アレックス、リディアやレヴィアは納得しておるかもしれぬが、我は嫌なのじゃ。我もアレックスに毎日突かれたいのじゃ!」

「それなら、アレックスさんの姿になったプルムちゃんを連れて行けば良いと思うの。あの人と同じく分身も出来るし、感覚が繋がっていないから何時でも何処でもしてもらえるわよー」

「なんと……つまり、アレックスの姿になったプルムが見たり体験したりした事は、アレックスに伝わらないと言う事なのじゃな? ……ふむ。これは我が遂に本気モードで子作り出来るかもしれぬのじゃ」


 ミオとラヴィニアが何やら話し……ミオも了承してくれたようだ。

 モニカとフェリーチェは……うん。会話が出来るような状態になさそうだから、放っておこうか。


「うふふ。アレックスったら、モテモテねー。それにしても流石というか、こんなに早く子供が出来ちゃうなんて……やっぱり同種族どうしだからかしら」

「天后よ。我の中にアレックスの子は宿っておらぬのか?」

「残念ながら、まだみたいねー。けど、いつかはきっと授かるはずよ」

「うむ。その通りなのじゃ。という訳で、アレックス本人でも良いが、何処かにフリーの分身は……居たのじゃっ!」


 アマゾネスの女性が気絶し、次の相手を探している自動行動の分身を見つけ、ミオが走って行った。

 しかし、久々という事で、全力で分身を出したが……やはり腰が痛い。

 今夜は逢瀬スキルを使った際に、何とかしてイネスにマッサージをお願いしないとな。

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