第289話 見せられない日課
熊耳族たちの要望は解決出来なかったが、とりあえず兎耳族の所に居てもヤバい事になるだけなので、一旦戻る事に。
兎耳族と熊耳族が一緒に暮らしてくれれば、色々と解決するのだが、種族が違うと何かと難しらしい。
先ずはリディアとメイリンの所へ行き、壁と畑の拡張の話をする。
熊耳族と、人形の子供たちとで一気に百人程増えてしまったので、土地は問題ないが、食料が心配だからな。
「では、ソフィ殿の準備にあたる者を減らし、畑の拡張に人を割り当てましょう」
「あぁ、頼む」
石の壁は俺も作れるが、作物はリディアじゃないと作れないからな。
元々行っていた石の壁の拡張は俺と俺の人形が行い、リディアの人形を畑の拡張へ向かわせる事にして……
「しまった。熊耳族に使ってもらう南西エリアに水路を繋げないと!」
色々とやるべき事に気付き、急いで対応していく。
……やるべき事の優先順位が間違っていると反省しつつ、熊耳族の所へ水路を伸ばして行くと、早くも大きな家が出来ていた。
「えっ!? ノーラ……めちゃくちゃ早くないか!?」
「お兄ちゃーん! 凄いの。熊耳族の人たち、ボクと同じくらいの背丈なのに、物凄く力持ちなんだよー!」
なるほど。熊耳族の少女たちも手伝ったのか。
内装はこれかららしいが、とりあえず寒さを凌ぐ分には十分らしい。
「お兄ちゃん、見てみてー! これ、凄くない? 木でお風呂を作っているのー!」
「凄いな。お風呂といえばニナの出番だと思っていたが……今はソフィの手伝いしているから、その代わりか?」
「代わり……というか、熊耳族さんたちのこだわりかな? ボクの大工とは違って、木工職人っていうスキルを持っている人が、木だけで作っちゃったんだー」
聞けば、熊耳族たちの中にも、料理人や裁縫師といった生産系のジョブを授かっている者が居たので、兎耳族のように畑を作ってあげれば、後は自分たちでやっていけるようだ。
とはいえ、種族的なものか、それともそういう者を集めたのかは分からないが、戦闘職の者の方が多いようだが。
そうこうしている内に、暗くなってきたので家に戻ると、
「あ、アレックスさん。お帰りなさーい」
「アレックス、お帰りー!」
「お、お帰りなさいです。アレックスさん」
ステラとエリー、ティナに出迎えられたのだが、何となくステラとティナが疲れていないか?
一方で、エリーはイキイキしているが、何があったんだ?
とりあえず、皆で夕食となり、昼の自己紹介の続きとなったのだが、
「ウチはヴァレーリエ。竜人族なんよ。宜しく」
「…………」
「りゅうじ……あ、ゆうじんぞく? 友人族かな? 優しそうな人ですもんね」
何故だろうか。
ヴァレーリエの時にステラが目を丸くして動かなくなり、ティナは意味不明な事を言い出した。
友人族って何なんだ?
「ご、ごちそうさまでしたっ! お、お食事が本当に美味しいかったですっ!」
「それは良かった。リディアの作る料理は美味しいからな」
「む……ちょっと待つんよ! ウチだって、アレックスに美味しい料理を作れるんよ」
ティナが美味しそうに夕食を食べ終えると、突然ヴァレーリエが声を上げる。
「流石に今からは時間が遅すぎるから、明日の朝食はウチが作るんよ!」
「待って。それなら、私だって負けないよー! お兄さんに、美味しいご飯を作ってあげるんだから」
「ふっふっふ。そういう事なら待ってもらおうか。こう見えて、私はそこそこ良い育ちだ。舌は誰よりも肥えている自負がある。美味しい物を知っている私こそが、ご主人様に美味しい料理を作る事が出来るのだっ!」
えーっと、テレーゼもモニカも、よく分からない事で張り合うのはやめて欲しいんだが。
「これはつまり、料理対決なんよ! 誰が一番美味しい料理をアレックスに食べさせてあげる事が出来るか……勝負なんよっ!」
「いや、食料は無駄に出来ないから、作るなら皆が食べる分だけにしてくれ」
「じゃあ、テレーゼが明日の昼ご飯。モニカが晩ご飯を作ればよいんよ。はっはっは……格の違いを見せつけてやるんよ!」
えっと、何やら面倒な事になってしまったんだが。
そもそもリディアは料理が趣味で、好きでやってくれている訳で。
「……とりあえず、風呂にしようか。ステラはエリーと一緒に入る……で良いか?」
「え? えぇ、大丈夫よ」
「私も構わないわよ」
とりあえず、いつもの風呂にステラを混ぜる訳にはいかないので、先にエリーと風呂へ入ってもらう事にしたのだが、
「あ、じゃあ私も一緒に入るー! ステラさんも旦那様と同じ聖職者なんだよねー? お話し聞かせてー!」
「て、天使族と……わ、わ、わかりました」
「妾もそちらに混ぜてもらおう。親睦を深めておきたいのでな」
ユーディットが一緒に入ると言って、ステラが物凄く困りだし、メイリンも入ると言い出した。
「あ、ティナにはちゃんと来客用の宿があるんだ。モニカ、案内を頼む」
「あ、私はこっちじゃないんですね……」
「むっ……さぁティナ殿、参りましょう。来客用の宿では私がおもてなしさせていただくので」
ティナがモニカに連れて行かれた所で、俺はボルシチの乳搾りを始める事にしたのだが……流石にこれは、ステラやティナに見せられないよ。
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