第357話 シーナ国の壁の調査

 険しい森の中を抜け、皆で巨大な壁の前に立っているのだが……本当に大きいな。

 当然と言えば当然なのだが、周囲の木々よりも高いので、ハシゴなどで登れる高さではない。

 ユーディットやユーリが居れば、空を飛んで向こうの様子を見てきてもらう事が出来たのだが、無い物ねだりをしても仕方が無いからな。


「アレックスー。ウチがドラゴンに変身して、上から見てくるんよ」

「いや、それでウララドの街から見られていて問題になったし、やめておこう」

「んー、そんなの全部燃やしちゃえば良いのに」


 いやいや、無関係な街の人だって大勢居るし、そういう訳にもいかないだろう。

 それに、ヴァレーリエに飛んでもらうなら、もっと早くから飛んでもらっていたしな。


「リディアが居れば、石の壁を積み上げて、壁の上まで行くという手も使えるのだが……」

「あれ? 石の壁でしたら、ご主人様も出せますよね?」

「出せるけど、リディアみたいに綺麗に並べる事は出来ないんだ。数枚なら問題ないだろうが、あの高さまで登るとなると、かなりの枚数を出さないといけなくなる。そうすると、僅かなズレでも積み重なって大変な事になりかねないからな」

「なるほど。私たちの安全を考えてくださっているのですね。ありがとうございます」


 いやだから、モニカは抱きつかなくて良いから。

 あと、下着は履いておいてくれよ。


「んー。アレックス。ちょっと調べてみたけど、この壁……なかなかのものなんよ。魔力で強化している上に、攻撃されたら何処かへ連絡が行くようになっているんよ」

「そうなのか? なら破壊はダメだな」

「うん。すぐに向こうの国の人たちが集まってきて……倒しても良いなら、ウチが全員倒しちゃうけどねー」

「いや、倒した所で後から沢山来るだろうし、余計な戦闘はしたくないな。何とかバレずに向こう側へ行きたいのだが……」


 とはいえ、この大きな壁に穴を開ける事は出来ず、上に登るのも現状は難しい。

 一先ず、状況を確認した事だし、一旦戻ってリディアを呼んでくるのが正解だろうか。

 だが、ウララドの街のように、すぐ近くに街があったら、壁を越えるのも見られそうでマズい気がするんだよな。


「……って、そうか。穴か!」

「えっ!? ご主人様……ここで、ですか? 私は一向に構いませんので、どうぞ」

「何をだよっ!? というか、どうしてスカートをめくり上げるんだっ!?」

「違うのですか? ……まぁそれはそれとして、是非どうぞ」


 意味不明な行動を取るモニカをスルーしつつ、


「ヴァレーリエ。さっき言った、攻撃されたら連絡されるというのは、壁だけだよな? 壁の下は対象外だよな?」


 思い付いた案をヴァレーリエに調べてもらう事に。

 俺には竜人族やエルフのように、魔力を視たりする事は出来ないのでよく分からないが、地面を見ていたヴァレーリエが暫くして顔を上げる。


「んー、そうだとは思うんよ。でも、当然これだけ大きな壁だから、土の中にも壁が埋まっているんよ。あの、魔族領から降りて来るトンネルみたいなのを作らないといけないと思うけど……かなり大変だと思うんよ」

「いや、それはそうなんだが、ニナとニナの人形たちに手伝ってもらえば何とかなると思うんだ。サンゴ……ニナに、元兎耳族の村へ来れないか聞いてみてくれないか?」

「おっけー! ちょっと待ってねー! ……えーっと、ツバキちゃんがお尻を押さえて気絶したんだってー! ……って、そんな話は聞いてないんだってばー!」


 いや、何の報告だよっ! というか、ツバキは一体何をしていたんだ?


「ふむ。ツバキ殿も、そっちに興味があるという事か。しかし、ご主人様のアレではなく一人でとは……一体何を挿れたのだ?」


 モニカの呟きは突っ込まない方が良いと思ってスルーし、待つ事暫し。


「お父さん。ニナちゃんは、今リザードマンの村に居るってー。お尻を痛めたツバキちゃんに、連れてきてもらうー?」

「そうだな……って、ツバキは大丈夫なのか? 詳しい状況が分からないが、ステラに診てもらった方が良いのであれば……そうだ。サクラに迎えに行ってもらえば良いのでは?」

「んー、お兄さん。そして、サンゴちゃん。ここは、せっかくだからナズナちゃんに行ってもらいましょう! ナズナちゃんは、アレこそ見学ばかりだけど、戦闘は問題ないからねー!」


 カスミが閃いた! という表情を浮かべ、サンゴ経由でナズナに指示が行く。

 今まで、ナズナ単独で何かを依頼した事はあまりないが……大丈夫だよな?

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