挿話27 オッサンたちから解放された勇者ローランド
「着いた……やっと着いたぁぁぁっ!」
「ローランド様っ! おめでとうございます!」
「ローランド様! ではここで、ワシが祝いの舞を披露いたしましょう」
オッサンたちに囲まれた徒歩の旅……控え目に言って、最悪だった。
何かあれば、オッサンたちが俺の下に集まり、今も一人変な踊りを踊っているが……とにかく、うっとおしいが、殺す事も出来ず、ただただ耐えて旅を続けて来た。
だが、それもこれで終わりだ!
夕暮れの中、周囲の建物よりも一際大きくて目立つ、周囲をぐるりと壁で囲まれた目的地――中央神殿とやらに到着したからな。
オッサンたちは、中央神殿に着くまでしか同行しないという話だったし、中央神殿まで行けば、パーティに女を入れるという約束をしている。
とにかく、その女騎士をメチャクチャにしてやる事だけを考え続けて、ここまで来たんだ。
絶対に、その女騎士を孕ませてやるっ!
そんな事を考えていると、俺をこんなオッサンまみれにしやがった張本人、テンプルナイトのダニエルが口を開く。
「ローランド殿。お疲れさまでした。正直、満点とは言えませんが、一先ず最初の修行を終えたのは事実です。この経験は、きっとローランド殿の成長に繋がるでしょう」
うるせぇんだよっ!
何が修行だ! 何が成長だっ!
俺はそんなの望んでねぇんだよっ!
とにかく女だ。このオッサン共をどこかへやって、早く女を呼びやがれっ!
「ダニエル……俺との約束は覚えているな!?」
「はて……何の事でしょうか?」
「てめぇっ!」
「はっはっは。冗談ですよ。勇者たる者、ユーモアの理解も欲しい所ですな」
こいつ……このオッサンたち共々、斬り殺してやろうか。
一先ず、ダニエルがオッサンたちを解散させたので、それぞれが散り散りになって、どこかへ去って行く。
「ローランド様……どうか、ご武運を」
最後の一人は何のつもりなのか、ジッと俺の目を見つめながら、力一杯握手してきやがった。
もしかしてあれは、俺にケンカを売っていたのだろうか。
……まぁいい。最後のオッサンもどこかへ消えたし、次の目的地は女騎士と一緒にベッドだ!
「おい、ダニエル。どこまで行けば良いんだ? 中央神殿とやらに入ってから、かなり歩かされているぞ!?」
「慌てないでいただきたい。この神殿の中に、勇者を育てる為に必要な施設――訓練場や武器屋、道具屋に宿屋など、ありとあらゆるものが揃っているのだ。どうしても、必然的に広くなってしまうのだよ」
「まぁアンタが約束さえ守るなら、俺としては何でも良いが……おっ! あそこに居る女の子なんて、どうだ!? 後ろ姿しか見えないが、かなり可愛いんじゃないか!?」
「ローランド殿。貴殿は、やはり精神修行をやり直した方が……」
「じ、冗談だよ、冗談。勇者はユーモアの理解が必要なんだろ?」
「先ほどのは、ただの本心といった感じでしたが……まぁ良いでしょう。お待たせしました。この部屋です。ローランド殿と私に加え、パーティを組む二人に待機してもらっています」
いつの間に連絡を取っていたのか、ダニエルが既に俺のパーティメンバーを揃えていたらしい。
中々やるじゃないか。
後は、中に居るのが二人とも女だったら良いのだが……さて、女騎士とやらの顔を見せてもらおうか。
案内された部屋に入ると、ダニエルの言う通り、二人の男女が直立不動で立っていた。
一人は、ゴリラみたいな身体の大剣使いの男だ。俺のように、技で攻撃するのではなく、コイツはきっと、ただただ力で攻撃するのだろう。……剣より、斧やハンマーの方が向いていそうなんだけどな。
そしてもう一人は、小柄で細身の可憐な女の子だ。うむ、イイッ! おそらくウィザードなのだろう。水色のローブに身を包んだ、美少女で保護欲を掻き立てられる。
ふふっ……この子はきっと、ジョブを授かった直後――十五歳くらいなのだろう。
胸が無いのは残念だが、整った可愛らしい顔が、思いっきり俺の好みだ。この透明感のある可愛い少女を、絶対に俺の女にしてやる!
「ローランド殿。紹介しよう。これから、暫く同じパーティとして行動を共にする、ハンナとゴードンだ」
ダニエルの言葉で、ゴリラ野郎とウィザードちゃんがそれぞれ無言で頭を下げる。
名前からして、ウィザードちゃんがハンナって名前だろうが……緊張しているのかな?
ゴリラはどうでも良いが、ハンナちゃんの可愛い声を聞いてみたいな。
そう思って、ジッとハンナちゃんを見つめていると、
「あ、あの……僕、まだジョブを授かったばかりで……が、頑張りますねっ!」
僕っ娘! しかも、予想通り声も可愛い!
絶対にハンナちゃんを俺色に染めてやるっ!
「これからパーティを組むにあたって、ローランド殿から要望などはありますかな?」
ハンナちゃんに癒されていると、ダニエルから話を振られたので、
「そうだな。俺からの要望はただ一つ。宿はハンナちゃんと同じ部屋にしてもらおうか」
「ローランド殿。まだ精神修行が……まぁオークメイジに欲情するよりは良しとしますか」
素直に俺の意見を言ったら、余計な事を言われたが、あっさりと要求が通った。
意外に話が分かる奴じゃないか……と思っていると、
「ぐふふ……こんな私を求めてくれるなんてな。今夜からよろしくな、ダーリン」
「いや、てめぇは何を言ってんだ!? 俺はハンナちゃんに言ってんだよ!」
「だから、私がハンナだ。さぁ、親睦を深める為に、先ずは宿に行こう。恥ずかしながら、三十年近く生きてきて、実は初めてだ。よろしく頼むぞ」
俺より背の高いゴリラ野郎が、片手で軽々と俺を担ぎ上げる。
こ、こいつ……めちゃくちゃ力が強いっ!
腕や脚は俺より太い筋肉の塊なんだが、こいつは本当に女なのかっ!?
「ま、待ってくれ! 違う! 間違えたんだ! 俺は、そっちのゴードンちゃんがハンナちゃんだと思ったんだ!」
「えっ!? ぼ、僕!? 僕、男なんだけど」
「な、何だってーっ!」
どうして、そんなに身体の線が細くて、可愛いのに、男なんだよっ!
いやしかし、このゴリラ野郎に比べれば、男の娘であるゴードンちゃんの方が抱ける気がする……って、俺はノーマルだっ!
「今夜は寝かせないわよ。ダーリン」
「た、助けてくれぇぇぇっ!」
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