第612話 ソフィの魔力補給

 魚村を逃げるようにして出発すると、急いでランランの所まで戻って来た。

 朝から大変だったが、一先ず落ちつけると思ったところで、


「マスター。この島を維持する為に、魔力補給が必要です」


 ソフィが抱きついてくる。

 更に、


「お兄さん! 野菜村に来てー! オリヴィアちゃんにクロエちゃん。シャーロットちゃんと、あとカスミちゃんが会いたいってー!」


 カスミ……というか、カスミの分身か? ソフィと二人で俺を挟んできた。


「あー! いいなー! ランランも混ぜてー!」

「じゃあ、私もー!」

「えっ!? ぼ、僕もーっ!」


 ソフィとカスミの分身の様子を見たランラン、ナズナ、コルネリアが混ざって来て……待ってくれ。

 ソフィの魔力補給は確かに重要だが、特にナズナとコルネリアは、昨日あれ程……げふんげふん。


「ら、ランラン。急いで確認してもらいたい事があるんだ」

「ん? なーにー?」

「マスター。私の魔力補給も緊急案件です」


 ぐっ……確かに。

 万が一、第一魔族領が墜落でもしたら、大惨事だからな。

 仕方がない。

 だが、分身すると、ランランとの話どころではなくなってしまうので、先ずはソフィの魔力補給をする事に。


「……んっ! やはりマスターのは魔力が濃いです。でも、もっとください」

「あー、いいなー。カスミちゃんも、お兄さんのが欲しいなー」

「アレックス、ずるーい! ランランもー!」


 カスミとランランが口を尖らせるが、これも人命の為なんだよ。


「それより、ランラン。俺のスキルを見てもらいたいんだが、何か魅了系のスキルが増えてないか?」

「んー……増えてはないよー?」

「えぇっ!? そ、そんなはずは……」

「本当だよー。効果が弱だったのが中にはなっているけど、増えた訳じゃないよー?」

「……って、効果が中になっている!?」

「うん。だからかなー? まだ封印の効果が切れていないはずなんだけど、魅了スキルが有効状態だねー」


 そ、それで魚村で……というか、クリスティーナからスキルを得た後、大変な事になったのか。


「もう一回封印した方が良いー?」

「あぁ、頼むよ」

「わかったー! えーいっ!」


 ランランの力により、改めて魅了スキルが封印された。

 何とか、西の大陸へ向かえそうだなと考えていると、突然ザシャが声を上げる。


「わ、私ったら……どうして、昨日こんな事を!? は、はしたないっ!」


 ザシャが俺をチラチラ見ながら、両手で顔を覆い……でも、指のスキマから俺というか、ソフィを見ている。

 その視線に気付いたソフィが、何故か動きを加速させて……って、そうか。

 ダーク・プリンセスのジョブを封じられているザシャは、大人しいというか、恥ずかしがり屋だったな。

 その割に、思いっきりこっちを見ているが。


「あ! やっぱり、昨日もしてたんだー! ずるいー! アレックス、ランランにもー!」

「そういえば、昨日ザシャからは何もスキルを貰っていないが……ジョブが封印されていたからか?」

「そうじゃないのかなー? それより、早くー! 早くしてくれないと、ザシャのジョブを戻しちゃうからねー! ジョブ解除ー!」


 って、俺が何か言う前に、ランランがザシャに手をかざし……ザシャが俺に詰め寄って来る。


「え? ちょ……わ、私が昨日していた事って、このお嬢ちゃんと同じ事なのか!? は、傍から見ていると、とんでも無い事をしていたんだな。まぁ嫌いじゃないが」

「うーん。イマイチ! 封印っ!」

「わ、私……もうお嫁にいけませんっ! ど、どうしましょう」


 ランランは、ザシャに会う度にジョブで遊んでいないか?

 そんな事を考えていると、


「アレックスぅぅぅっ! き、貴様! クリスティーナだけでなく、母上まで! よ、よくも……って、朝から何て事をしているんだぁぁぁっ!」


 ベルティーナが猫耳族の少女と共に現れた。

 この猫耳族の少女は見た事がない顔だから、昨日俺とあんな事やこんな事にはなってないようだ。

 良かった……というか、せっかく無事なのに、連れて来ちゃダメだろ。


「ベルティーナ。昨日はいろいろと事情があったんだ」

「我が家に仕える者の八割を手籠めにしておいて、そんな軽い言い訳をするなぁぁぁっ!」


 ベルティーナが来たのが、ランランに魅了を封印してもらった後で良かったけど……話を聞いてくれるだろうか。

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