第219話 南へ……?
「ノーラ。木材はこれくらいで大丈夫か?」
「うん。十分だよー!」
「分かった。じゃあヴァレーリエ、頼む」
ゴレイムやシーサーに手伝ってもらい、休憩所を作る為の丸太を、北西の森から運んできた。
それなりの数があるので、ソフィとニナが協力して作ってくれた、頑丈な鉄のロープで纏める。
これなら、ヴァレーリエも運び易いだろう。
「じゃあ、変身するんよ。少し離れて」
そう言って、ヴァレーリエが赤いドラゴンの姿になると、
「うわぁぁっ! ドラゴンッス! カッコ良いッス!」
ビビアナがパァっと顔を輝かせる。
まぁ俺たちはさっき見たし、他のメンバーもシェイリーに乗った事があるからか、そこまで……あ、少し離れた所で、ネーヴも乗りたそうにしているな。
今回はビビアナに譲ったようだが。
「では行ってくるよ」
「ご主人様! ちゃんと戻ってきますよね?」
「ヴァレーリエ次第ではあるが、夜までには戻るつもりだ」
「でしたら、安心です。承知致しました」
モニカが何に安心したのかはさて置き、リディア、ニナ、ノーラ、ビビアナと共にヴァレーリエの背中へ。
ちなみに、こっそりユーディットに確認し、リディア、ニナも未だだという話だったので、そのまま出発する。
あと、今回は連絡係として、ユーディットの人形ユーリについて来てもらう事にしたので、飛ばされないようにユーリを抱きしめ……うん。不安そうにしていたニナも抱きしめて、ヴァレーリエに準備完了の合図を送る。
「ご主人様が幼女に囲まれている……フィーネ殿。幼女化のおまじないは、いつ頃出来るのだろうか?」
いや、モニカはフィーネに何を頼んでいるんだよっ!
だが、突っ込む前にヴァレーリエが翼を羽ばたかせ……浮いた!
落ちないように、しっかりとヴァレーリエの背にしがみ付いていると、リディアが泣きそうな顔をしていたので抱き寄せる。
ノーラは木登りが得意で、ビビアナは腕力に自信があるというので、この二人は大丈夫だろう。
それから、ヴァレーリエが丸太の束を掴み、
「……重っ! で、でも、アレックスの為に頑張るんよ!」
南へ向かって飛び始める。
「おぉ、これでようやく街に行けるな」
「そうですね。最初はアレックスさんと二人っきりで、小さな家しかありませんでしたが、今では沢山人が増えましたよね……ちょっーと、アレックスさんに手を出す人が多過ぎますが」
「ん? リディア。すまない、最後になんて言ったのかが聞き取れなかったんだが」
「いえ、何でもありませんよ?」
リディアが思い出話を始めた所で、
「ふぅー。もう無理なんよ。疲れたー」
突然ヴァレーリエが降下し始めた。
え? 飛んだけど、本当に少ししか進んでいないと思うんだが。
当然、南に街なんて見えないし、頑張れば歩いて家に戻れそうな距離なんだけど。
そのまま地面に降りると、力尽きたヴァレーリエが少女の姿に戻って地面に倒れてしまい、俺たちは地面に投げ出される。
「お、お兄ちゃん! あの黒い犬が沢山居るよー!」
「リディア! 石の壁を! ≪ディボーション≫」
ノーラの怯えた声に反応し、すぐさま皆にパラディンの防御スキルを使用しつつ、北側に石の壁を生み出す。
リディアが西側に石の壁を出してくれているが……シャドウ・ウルフの足が速い!
とりあえず、一番多く集まっている東側のシャドウ・ウルフたちをパラディンの攻撃スキルで倒していくが、数匹が南側からも来ている!
仮に誰かが攻撃されたとして、その身体的ダメージは俺が庇えるが、恐怖や精神的なダメージまでは庇えない!
どうにしかして守らなければ……と思っていたら、
「パパ! こっちはユーリにまかせてっ!」
「ユーリっ!? 無茶だっ!」
「だいじょうぶだよ! みててーっ!」
幼いユーリがふよふよと空に昇る。
天使族だから、パラディンの俺と同じように、聖属性の攻撃が出来るのかもしれないが、シャドウ・ウルフはユーリの身体よりも何倍も大きい。
天使族の戦い方がヒットアンドアウェイだというのは知っているけど、それでも幼いユーリに危ない事はして欲しくないんだ!
そんな事を思いながら、東側を片付け、南に向かって走ったところで、
「せーすいこうげきー!」
ユーリの可愛い声と共に、頭上から透明な液体が降ってきて、南側のシャドウ・ウルフが一目散に逃げていった。
うん。確かに追い払ったし、誰にも被害が出なかったね。
ただ俺にも、ほんのり温かい聖水が掛かっていて……軽く精神的ダメージを受けたけどな。
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