第908話 ニナの家から出発

 翌朝。

 ニナの家なのでニナが居るのはわかる。

 来たばかりで不安なジネットが居るのも、まぁわかる。

 だが、どうしてララが居るのだろうか。


「あ、ララお姉ちゃん。おはよー」

「ん……ニナ。おはよー」


 目覚めたニナとララが普通に挨拶を交わしているが、お互い気にしないものなのだろうか。


「お兄さん。不思議そうな顔をしているけど、ララお姉ちゃんは従姉妹だし、普段からよくニナの家に泊まりに来ているんだよー」

「うん! ニナがいるし、アレックスさんも居るしんだから、来ない訳ないよね」


 いや、帰ってきた当日なんだから、そこはご両親と過ごした方が良いと思うのだが。

 とりあえず、毛布の中で頑張ってくれている結衣に申し訳ないので分身を消すと、ジネットがやってきた。


「おはようございます。その、アレックスさん。昨日は凄かったですね。毎晩、あんな感じなんですか?」

「え? そ、そんな事はないと思う……ぞ?」

「そうだよー。アレックスさんは寝ていても分身さんが凄いから、希望すれば朝まで出来るよー! ララは早めに寝たけど」


 ジネットは最初はこの部屋に居たのだが、気を失ったので、オティーリエが別の部屋へ運んであげていたのを覚えている。

 ドワーフの家は拡張が容易だからと、二人部屋が幾つか追加されていたので、おそらく何処かの空き部屋に寝かされたのだろう。

 暫くすると、分身を消したからか、そのオティーリエやミオたちがやってきたのだが、何故か頬を膨らませている。


「アレックス。今朝はちょっと短くない?」

「そうなのじゃ。いつものラストスパートがなかったのじゃ。満足……はしておるが、最後の余韻というか、あの気を失わされる感じがなかったのじゃ」


 うん。この二人は何を言っているのだろうか。


「この香りは一体何だ? 何か昨日の夜から変な香りが漂っていたんだが」

「父上。私も混ぜて欲しかったです」


 モニカとモニーがやってきて口を尖らせると、


「ふむ。音は結界で消せるが、匂いは消せぬのじゃ」

「なるほど。それでマリーナちゃんがあんなにはしゃいでいたのに、誰も様子を見に来なかったんですねー」


 新たに現れたフョークラが大きく頷いていた。


「昨日のは楽しかったねー! マリーはフョークラのお薬であんな事になるとは思わなかったよー」

「マリーナちゃん。あの事は内緒って……」

「あっ! え、えっと、マリたちは部屋にあてがわれた分身さんを増やしたりしてないからね?」


 マリーナの言葉でフョークラが目を逸らす。

 いや、確かに新しい薬がどうこう言っていた気がするんだが、フョークラは一体何をしたんだ!?

 ミオの提案で、モニカたちの部屋を除き、各部屋に分身は二人と決められていたのだが……き、聞くのが怖いのでやめておこう。

 それから、ニナの両親やララの両親に挨拶し、朝食をいただいて出発する事に。


「お兄さん。ニナは暫くパパやママと過ごすけど、ちゃんと迎えに来てよー? ニナはお兄さんの奥さんなんだから」

「あぁ。わかった」


 ニナが抱きついてきたところで、ララと両親がやってくる。


「アレックスさん。ニナちゃんだけじゃなく、ララも貰ってくれて良いんだよー?」

「そうね。アレックスさんなら良いんじゃないかしら」

「ふむ。二人が想い合っているなら、ワシは反対せんぞ?」


 いやその……まぁ責任は取るつもりではあるので、誰も反対しないのであれば、ニナと一緒に迎えに来ようと思う。


「それから、依頼された眼鏡については、もう少し待って欲しい。フレームは出来上がっているのだが、レンズの加工に少し時間が必要なのだ」

「いや、こちらこそ知らなかったとはいえ、大変な物を依頼してしまって申し訳ない」

「いやいや、人助けになる上に、婿殿の頼みだ。断る理由などないし、やり甲斐がある仕事だ」


 婿殿……いや、よく見れば両親の前で、ニナと一緒にララが抱きついてきているし、何も言えないか。


「じゃあ、行ってくるよ」

「えっと、モニカさんを元に戻しに行くんだよね?」

「あぁ。モニカを戻したら、すぐ来るから」


 ニナとの会話で、モニカが怪訝な表情を浮かべたが、ひとまず出発する事にした。

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