挿話17 パーティを追放され、途方に暮れるウィッチのフィーネ

「……ごめんね。ハッキリ言わせてもらうけど、私はフィーネさんにパーティから抜けてもらうべきだと思う」

「――!」


 ローランド様のパーティが解散となってから、プリーストのステラさんとローグのグレイスさんとでパーティを組む事に。

 そこまでは、良かったんだけど、新たに加わったアーチャー――弓使いのベラさんから、二回目の依頼を終えた後、パーティを抜けるように言われてしまった。


「ベラさん、それは……」

「ステラも分かって居るでしょ? 魔法の使えない魔法職なんて、ただの足手まといじゃない」

「だけど、フィーネも頑張っているし、これから使えるようになると思うの」

「だったら、使えるようになってから、改めてパーティに入るべきよ。今はただ私たちに守ってもらいながら、ついて来ているだけ。何の役にも立っていないもの」


 うぅ……それは、フィーネも分かってる。

 ステラさんが励ましてくれているけど、これまで沢山練習したのに攻撃魔法は使えなかった。

 もちろん、今でもいっぱい練習しているけど、使えるような気配は一切無い。

 だから、私が居るとステラさんたちに迷惑をかけてしまう。


「わ、分かりました。これまで、フィーネと一緒に居てくれて、ありがとうございました」

「フィーネ……」

「ごめんね。でも、これもフィーネさんの為だと思うの」


 三人に別れの挨拶をすると、逃げるようにして、その場から立ち去る。

 ……どうしよう。E級冒険者らしく、また薬草摘みをする?

 けど、前みたいに薬草を摘んだつもりだったのに、間違えてただの雑草を摘んじゃったら? また丸一日掛けて頑張ったのに、一切収入にならず、空腹で倒れるのはヤダ。

 だったら、隣町までのおつかい? でも、前みたいに道に迷って、一晩森の中を歩き通すとかもヤダ。怖いし、疲れるし、何よりお腹が空くし。


 どうしようかと途方に暮れて居たら……いつの間にか冒険者ギルドの前に来ていた。

 受付の人に相談してみたら、助けてくれるかな?

 恐る恐るギルドの建物へ入り、受付に向かうと、


「いらっしゃいませ。ふぃ……フィーネちゃん。ど、どうしたの? 貴女はステラさんと一緒にパーティを組んでいたのに、一人で、しかも泣きそうな顔で……」

「お、お姉さーん! ステラさんのパーティを追い出されちゃいましたぁぁぁっ! どうしよぉぉぉっ!」

「や、やっぱり。いつかこうなると……げふんげふん。えっと、要はまたソロになっちゃったって事よね? それで、どうやって生活していけば良いかって悩んでいる……そんな所かしら」

「そうなんです。助けてくださいー!」


 少し話しただけで、フィーネの事情を全て理解してくれた。

 流石、ギルドの人だ……って、フィーネの名前を知っていたし、会った事がある人だったっけ?


「あの、今更ですけど、どうしてフィーネの事を知っているんですか?」

「え? フィーネちゃんは、このギルドで有名だから……色んな意味で」

「フィーネって、有名なんだ! えへへ……ちょっと嬉しいかも」

「そ、そう。えーっと、話を戻すけど、どうして追放されたかは、役立た……もとい、魔法が使えないからよね。E級の依頼――薬草摘みやおつかいは……」

「フィーネ、薬草摘みとかは、上手く出来なくて……」

「そ、そうよね。いろんな伝説を作っているものね」


 タバサさんっていう名前のお姉さんが相談に乗ってくれているけれど、物凄く困った顔をしている。

 そうだよね。フィーネはE級のお仕事も出来ないもんね。

 でも、フィーネは冒険者じゃないといけないのに……。


「お姉さん! フィーネは冒険者として暮らして行きたいんです! 亡くなったお父さんみたいに!」

「ギルドの情報によると……お母さんは行方不明なんでしたっけ」

「はい。お父さんは、居なくなったお母さんを探す為に、冒険者になったと聞いています」

「……フィーネちゃんも、お母さんを探すの?」

「出来れば。でも、先ずはその前に、一人前の冒険者にならないといけないですけど」


 冒険者ギルドでは、登録するとE級冒険者って呼ばれるランクになるんだけど、これは未だ半人前らしくて、ギルドが常時募集している簡単なお仕事しか出来ない。

 お母さんを探す旅へ出るには、もっと冒険者のランクを上げて、沢山お金を稼がなきゃ。


「……そうだ。フィーネちゃん。貴女、やる気だけは……失礼、やる気は凄くあるわよね」

「はい! もちろんですっ!」

「魔法には詳しくないけど、面倒見が良いS級冒険者が魔族領っていう所に居るんだけど、そこへ行ってみる? そこならギルドが食料を送るから食べ物に困る事は無いし、人手が欲しいって言っていたから、凄く感謝されると思うんだけど」

「魔族領っていうのは良く分からないですけど、お腹が空かないなら、行きます! 行かせてください!」

「オッケー。じゃあ、先ずそのS級冒険者さんとの定期連絡の時に聞いてみるから、数日待っていてくれるかしら?」

「はい! よろしくお願いしますっ!」


 ギルドのお姉さんに相談して良かった。

 とにかく、先ずはご飯。それから、魔法を使えるようにして、一人前になったら、お母さんを探そう。

 お母さん、絶対に見つけるから、待っててねーっ!

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