第926話 穿山甲の居場所
「待たせたな。こちらの妹が穿山甲の元へ案内する」
「アレックス様。えへへ……宜しくお願いします」
「む……アレックスはレヴィアたんの夫。そこは勘違いしちゃダメ」
将補がレヴィアと同じくらいの背丈の女の子を連れて戻ってきた。
いきなり抱きついてきた女の子にレヴィアが妙な対抗心を見せているのは、歳が近く見えるからだろうか?
「すみません。子種をいただくのがあんなに素晴らしい事とは知らなかったので。出来れば、これからも毎日いただきたい程です」
「えっ!? 君もあれに参加していたのか!?」
「はいっ! アレックス様のこれ……凄かったです」
「……一応確認するが、成人だよな?」
「もちろんです。蟻人族は生まれた時点で全員成人ですから」
いやあの、成人の定義が俺の認識と違う気がするんだが。
年齢を聞いた方が良いのだろうか。
しかし、それこそ種族によって全く違うからな。
とりあえず、今は穿山甲を倒す事に集中しよう。
食料集めはその後に考える事にして、空間収納から服や剣、それから盾を出す。
「えっ!? アレックス様!? その布は何ですか!?」
「いや、服だが……」
「どうしてそのような物で身体を隠してしまうのですか!? それでは穿山甲に食べられてしまいますよっ!」
服を着ると食べられるというのは、どういう事だ? ……と聞くと、穿山甲は硬い物を好み、柔らかい肌を嫌うらしい。
「そ、そうなのか?」
「はい。でなければ、蟻人族の雄だけが食べられ、雌が食べられない理由が分かりません」
「なるほど。そういう事なら、アレックスは服を着ちゃダメ。レヴィアたんもこのまま行く」
蟻人族の少女の言葉に、レヴィアがうんうんと頷くが、本当なのだろうか。
しかし、少女は真剣な表情で止めてくるし、そこへ将補も同意する。
「正確な理由はわからぬが、雄が襲われて雌が襲われないのは事実だ。その理由が柔らかい肌だという可能性はある」
「そ、そうまで言うなら……」
「あと、可能であれば、ギリギリまで分身は残しておいて欲しい。皆、確実に子を宿したいそうだ」
この状態で戦いは無理なので、穿山甲の居場所についたら当然消させてもらうが……って、レヴィア!?
「じゃあ、アレックス。この状態で進む」
「えっと、結構歩きますが、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫。時々代わる」
「そういう事なら、大丈夫ですね! では、早速参りましょう!」
いや、何一つ大丈夫ではないのだが、ある程度歩いてレヴィアが満足したら、蟻人族の少女と交代する。
結局、二人が交互に抱きかかえるのと、おんぶとを入れ替わるのを繰り返し……少女が五回程ぐったりしたところで、地上に出た。
「こ、ここですぅ」
「土の中の話だと思っていたのだが、意外だったな」
「穿山甲は、攻めてくる時は巣を破壊してきますし、長い舌を巣の中に伸ばしたりしてくるんですぅ」
なるほど。
よくよく考えれば、蟻人族を食べるというのだし、かなりの巨体か。
そのような魔物が地中に棲んでいたら、地下が大変な事になるな。
「今は居ないようなので、暫くこのまま様子を見……っ!」
「何かあったのか!?」
「アレックス。今のはその子が満足しただけ。次はレヴィアたんの番」
レヴィアの言葉を肯定するように、少女が交代し……って、これはいつまで続けるんだ!?
蟻人族の女性たちも、カスミも体力がありすぎるんだが。
とはいえ、休んでいたとはいえ、レヴィアは疲れてきているようだ。
「レヴィア。もう無理にしようとするな」
「あ、あとは私に任せて!」
「いや、君も無理をしないように。これから戦いなんだからな」
「ですが……子種が勿体無いじゃないですか」
本当は分身も消したいのだが、女王の要求の一つの話もあるし、どうしたものかと思っていると、
「アレックス様。今こそ我らにお任せ下さい!」
「莉子、がんばる」
「美月もおります」
結衣たち三人が俺の影から姿を現した。
蟻人族の少女が驚いているが、そんなのお構いなしに結衣が抱きついてくる。
「この前は二人に譲りましたので、今日は私から……いただきますっ!」
「アレックス様。少し休んだら、私にもー!」
「レヴィアたんも、休憩したら混ざる」
いやあの、穿山甲……穿山甲を探さないか?
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