挿話69 鳥たちの飼育係に任命されたムギ

「出来たー!」

「ノーラ、お疲れ様ニャー!」

「ムギちゃんも手伝ってくれて、ありがとー!」


 ミオ様が住むこの村に、ノースダックというペットが四羽やって来たので、ノーラが鳥の住む家を作った。

 雨風を凌げ、針金で網みたいなのが付いた窓もある、立派な家だ。

 しかも、後でリディアに頼んで、水場も作ってもらえるのだとか。

 ……自分たちだけの家があるなんて、ムギより待遇が良いのでは?


 まぁそれはさて置き、この鳥たちは、天使たちがノーラの作った家を壊したので、そのお詫びの品なのだとか。

 まだ見てないけど、四羽も居るなら、一羽くらい食べちゃっても大丈夫じゃないかなー?

 そんな事を考えていると、


「ねー、ムギちゃん。せっかく小屋作りを手伝ってくれたし、鳥さんのお世話係をお願いしてもいいー?」

「お世話係……ムギがするのニャー?」

「うんっ! ボクもちゃんとした事は分からないけど、ご飯をあげてー、お掃除をしてあげれば良いんじゃないかなー?」

「……一羽くらい鳥を食べても良いニャー?」

「今はダメだよー! たぶんだけど、鳥さんは増やしてから食べるんじゃないかなー? ムギちゃんが頑張れば、鳥さんが増えて、沢山食べられるようになると思うよー」


 なるほどー。

 今食べたら四回しか食べられないけど、増えてから食べたら……いっぱい食べられるっ!

 ついでに、沢山ご飯をあげて、大きくすれば、もっといっぱい食べられるーっ!


「わかったニャー! 頑張って鳥さんを増やすニャー!」

「じゃあ、後でボクからお兄さんに話しておくねー」

「お願いするニャー!」


 それから少しして、ノーラが鳥たちを連れて来た。


「ここが新しいお家だよー! 入って入ってー!」


 これまでと環境が違うからか、鳥たちが小屋に入ろうとしない。

 ……ノーラがちょっと悲しそうなので、中に入るようにと思いながら鳥たちを見つめていると、ムギの想いが伝わったのか、鳥たちが突然小屋の中へ入って行った。

 若干怯えた様子で、逃げるようにして入っていったのが気になるところだけど、入ったので良しとしよう。


 それから、リディアがやってきて、


「こんなところかしら?」


 鳥たちの水場を作ってくれた。

 リディアと一緒に家へもどり、ムギもご飯を食べて、お風呂へ入り……鳥たちのご飯を忘れてた。

 お風呂を出て、すぐに畑に寄ってから、鳥たちの家へ。


「んー、コーンとかで良いのかニャー? 葉っぱとかも食べるのかニャー?」


 夕食の時に、鳥たちと同じく羽が生えているユーディットに聞いた話では、大抵何でも食べるらしい。

 とりあえず野菜で良いんじゃない? と言われていたので、近くの畑でコーンとレタスを採って来た。

 ……どっちもよく食べるけど、コーンは鳥たちが食べ難そうかも。

 だけど、レタスは良い食べっぷりなので、このままいけば、美味しいお肉が沢山食べられるっ!


「……じゅるり。……はっ! いけない、ムギはお世話係ニャー。食べるのは、もう少し大きくなってからニャー」

「…………」

「あ、あれ? 鳥さんたち!? どうして突然食べるのを止めたのニャー!? もっと沢山食べて、沢山卵を産むニャー」


 何となく鳥さんたちが青ざめた気がするのと、奥へ……小屋の中へ逃げるように入ってしまった。

 もしかして、野菜ばっかりじゃダメ?

 魚やお肉も食べたいの?

 けど、お肉はともかく、お魚はこの村で獲れないので、リディアがしっかり管理している。

 お魚は美味しいけど、ムギも一日一匹しかもらえないし、鳥さんたちに分ける分は無い。


「そうニャ! 美味しいアレをあげるのニャー。今なら、まだあるはずなのニャ!」


 一度家に戻ると、皆ぐっすり寝ていたので、お風呂へ。

 どういう訳かは分からないけど、皆が寝てからお風呂へ行くと、あの不思議な味のミルクがそこら中にあるんだよね。


「……美味しいニャー! って、ムギが飲んじゃダメなのニャー」


 床に落ちていたり、お湯に浮かんでたりするミルクを集め、鳥の所へ。

 食べ残されていたレタスにミルクをかけると……あ、奥から出て来て、凄い勢いで食べ始めた。


「あれ? 食べているのは二羽だけ? ……雌は美味しそうに食べているのに、雄は一切食べようとしない? それどころか、逃げてる?」


 確かに独特の味と匂いだけど、鳥の雄には嫌な匂いなのかな?

 凄く美味しいのに。

 とりあえず、雄と雌でご飯を分けて、雌には毎日ミルクを混ぜてあげるようにしよーっと!

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