第287話 更に国民が増えるアレクサンダー王国

「リンゴにミカン。あっちは桃ですか?」

「あぁ、その通りだ」

「凄いですね。しっかり実もなっていますし」


 何故かステラが動かなくなった後、復活したのだが……未だにリディアやユーディットから目を逸らしている。

 理由は分からないが、二人を見てまたステラが動かなくなっても困るので、そっとしておこう。

 それからステラとティナを連れて畑へ行き、一緒に作物を収穫し、その作物を使った昼食をリディアに作ってもらった。

 その際に、皆を紹介しようとしたのだが、


「ドワーフのニナだよー! 鉄を使っていろいろな物を作るんだー!」

「……あ、はい」

「アレックス様。一旦、自己紹介は延期いたしましょう。ステラ殿が追いついておりません」


 何故かサクラからストップが掛かってしまった。

 ティナは普通にしているんだけどな……あ、いや。理解を諦めているのかっ!?


「ふわぁーっ! このパスタ……も、物凄く美味しいですーっ!」

「ありがとうございます。ティナさんやリディアさんが収穫してくださった作物を使って作ったんですよ」

「ふぇー。私も料理の勉強しようかなー」

「あ、おかわりもありますよ?」

「も、もらいます」


 そのティナが、美味しい美味しいと小さな身体で昼食を食べ過ぎてしまったらしいので、午後も散歩を兼ねて色々と案内する事に。


「あの、アレックスさんやエリーちゃんに似た、幼い子供が沢山いるのですが、これは一体……?」

「あぁ、メイリンのスキルだ。自身の意志で動く、俺たちの人形を作る事が出来るんだ」

「はぁ……そんなスキル聞いた事も無いんですが、ちなみにジョブは何なのでしょうか?」

「確かメイリンは……ドールマスターって言っていたかな」

「なるほど。聞いた事すらないジョブですね」


 ステラが人形たちを見ながら不思議そうにしているが、まぁ気持ちは分かる。

 俺もこんなスキルがあるなんて……と驚いたからな。

 ノーラやゴレイムたちがこの家を建てたという話をしたところで、


「アレックス様。お取込み中に申し訳ありません。少しご指示を仰ぎたい出来事がありまして」


 スッとサクラが音も無く姿を現した。


「わかった。じゃあ、申し訳ないんだが、エリー。ステラとティナをお願い出来るか?」

「えぇ、良いわよ。じゃあ……そうね。南側に家があるから、そこでお茶でもしましょうか」

「そ、そうね。ちょっと……ううん。かなり、いろんな所で私の常識とかけ離れ過ぎていて頭痛がするし、休憩出来る方が良いかしら」


 しまった。ステラは体調が悪かったのか。

 こういう気遣いが出来ないのは俺の良くない所だ。

 反省しつつも急ぎの用件らしいので、あとはエリーに任せて、サクラの後に続き南西エリアへと向かうと、


「お、アレックスーっ! 久しぶりだな! 会いたかったぞ!」

「ブリジット! それに、ビビアナも! 会えたのは嬉しいが、召喚魔法で国へ戻ってから三日しか経っていないから、久しぶり……なのか?」

「私の気持ちと身体的に、アレックスと三日も離れていたのだ。十分久しぶりだぞっ!」


 ブリジットとビビアナ、それから熊耳族の少女たちが居て、真っ先にブリジットが抱きついて来た。


「お姉ちゃん、ズルい! 自分も旦那様とくっつきたいッス!」

「ブリジット様、ビビアナ様! わ、我々にもアレックス様に抱きつく許可をお願い致します!」


 ビビアナも続いて抱きついて来て、熊耳族の少女たちがジリジリと距離を詰めてきている感じがするのだが、


「あーっ! 何だか楽しい事をしそうな雰囲気ー! 私も混ぜてーっ!」

「テレーゼ!? 待てっ! この状況でそんな事を始めたら……」

「むっ! また見た事のない女性が。しかも、アレックスのアレを……くっ! 我々も負けてはおられぬっ! 熊耳族の力を見せてやるっ!」


 どこからともなく現れたテレーゼが変な所を触りだし、熊耳族の少女たちも動き出してしまう。


「いや、待ってくれ。ビビアナも止めてくれ……って、むしろ参加してるっ!?」

「アレックス様。私も参加させていただきますね」

「カスミちゃんも混ぜてねーっ!」


 ビビアナとサクラも混ざって来たかと思うと、いつの間にかカスミやツバキも居て……まぁその、いつも通りの状態になってしまった。

 暫くして、テレーズたちが落ち着いた所で、


「旦那様。ようやく見つけたと思ったら、このような何も無い野原でしなくとも……」

「いや、これにはいろいろと事情があって……ところで何かあったのか?」

「はい。朝は起床が遅れ、かつすぐにステラ殿やティナ殿が来てしまったので、ご報告出来ていなかったのですが、一つ問題がありまして」


 困った様子のメイリンがやって来た。

 どうやら、本当にこんな事をしている場合ではなかったようだ。


「一体、どうしたんだ?」

「はい。どうやら妾たちの子……人形たちが全員子供を生んだとの事です」

「……は? 全員? どういう事だ?」

「そのままの意味です。本日、妾たちの子が約三百人となりました」


 さ、三百人だってー!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る