第105話 誤魔化すアレックス
いつもとは違う場所――ノーラが建ててくれた休憩所で目を覚ますと、
「んっ……おは、ようございますっ! アレックス様!」
いつも通りフィーネの柔らかい感触で起こされる。
「フィーネ……早起き、だな。……くっ!」
「あっ……えへへ。毎朝、お腹の中で、アレックス様がフィーネを起こしてくださるんです」
……フィーネが何を言っているのか理解出来なかったが、身支度を整え、皆を起こしてもらう。
「あ、あれ? 私、寝ちゃってたの? モニカに教わった事をするつもりだったのに……」
ユーディットが残念そうに呟いているが、一体何をするつもりだったのだろうか。
一先ず、メイリンに隣の部屋の人形たちを呼んでもらい、皆で朝食を……と思った所で、
「だ、旦那様……ま、また一人子供が生まれております」
ニナの人形ニアに三人目の娘が居た。
「つ、つい先日二人目が生まれたばかりだよな?」
「は、はい。その通りです」
「……あ、でも、昨日メイリンが生み出した二体のニナの人形たちと、ユーディットの人形には子供が生まれて居ないのか」
遠隔での会話で確認してもらったが、昨晩子供が生まれた人形は、このニアだけらしい。
魔法人形たちは毎晩夫婦の営みがあると言っていたが、全員一斉に子供が出来たり、一人だけだったり……後者なら、めでたく授かる事が出来たと喜べるのだが、何か子供を産むための条件があったりするのだろうか。
そんな事を考えて居ると、
「あ! ……そういえば!」
「メイリン。どうかしたのか?」
「いえ、その……ここに居る旦那様とニナ殿の人形――アレフォとニアは一番最初に作った人形たちで、既に作ってから十日が過ぎて居まして」
メイリンが困惑した表情を浮かべる。
そういえば、人形たちは元とした人物の半分の年齢――アレフォが九歳でニアが七歳なのだが――その日数分しか活動できないと言っていた。
つまり、どちらも十日を過ぎて動いている事が既にイレギュラーなのだとか。
「……ま、まぁ当初よりも長く活動出来るというのは良い事だろ。幼い子供が三人も居る訳だしさ」
「そうですが、何故かと思いまして。……やはり旦那様の子種を使って人形を作ったから? そして、女性の人形たちも、その人形たちの子種を摂取しているから……?」
メイリン。気になるのは分かるが、ユーディットの前で子種子種って、言わないでいてくれると助かる。
幸い、ユーディットがリディアの朝食に夢中で聞こえてないから助かっているけどさ。
「アレックスには、超回復スキルがあるからじゃない?」
「ご主人様が絶倫だからだと思いますが」
「アレックスさんは、精力増強スキルも持っていたかと」
話に入って来るのは良いのだが、エリーの言う超回復はともかく、モニカとリディアは余計な事を言わないでくれ。
「お兄ちゃん。精力増強って?」
「そ、その……あれだ。精神力が強くなるんだよ」
「そうなんだー。でも、無理し過ぎはダメだからね? いつもボクを甘えさせてくれるけど、時にはお兄ちゃんがボクに甘えても良いんだよ?」
そう言って、ノーラが俺にもたれかかって来て……いや、どう見てもノーラが甘えているんだが。
とはいえ、何とか誤魔化せて良かった。
メイリンは小声だったけど、エリーたちは普通に喋っていたから、ノーラに聞こえてしまったし、ユーディットが目を丸くして俺を見ている。
「さ、さて。皆、今日も一日頑張ろうな」
再び誤魔化す為に、強引に作業の話をして、それぞれの活動を行う事にしたのだが、
「マスター。魔力の注入をお願い致します」
ソフィが待ったをかけた。
「じゃあ、フィーネがお手伝いするー!」
「いえ、ここは房中術を極めた拙者が」
「ご奉仕は、メイドである私の仕事ですっ!」
待ってくれ! フィーネ、サクラ、モニカの申し出は非常に助かる。
だが、
「なになにー? 私もアレックスのお手伝いするよー」
まだユーディットが部屋に残っているんだ。
「いや……これは、その、厳しい修行を終えた者にしか出来ないんだ」
「そうなの? じゃあ、ぼーちゅー術? を極めたって言っていた、サクラがするの?」
「ふふっ……そういう事だ。ここは拙者に任せるのだ」
頬を膨らませるユーディットやフィーネたちを宥め、ソフィを連れて三人で風呂場へ。
サクラがソフィを目隠しして……分身スキルを使った!?
「では、アレックス様。全力でご奉仕させていただきますね」
「って、おい。サクラ、どうして挿れ……くっ! 中が……うねるっ!」
サクラの中に三回出し、やっとソフィの口へ。
その間もサクラが俺の尻を……いや、こういうのは夜にしてくれよ。
ようやく全員がそれぞれの場所へ移動し、俺もニナの元へ。
昨日に引き続き、ニアを筆頭とした人形たちと協力して掘り進めていった結果、
「お兄さん! 着いたよっ!」
何度か高さを調整し、掘り直したりもしたけど、無事に下の地面へと繋がった。
「ニナも、ニアたちも本当にありがとう。一先ず、一旦戻ろうか」
洞窟の先は、地面が剥き出しになった何も無い場所ではあるものの、少し先には草むらがあり、木も生えている。
一先ず出口側を石の壁で塞ぐと、先ずは昨日の家に戻り、少し遅めの昼食を食べながら、村へ行くメンバーの選出をする事にした。
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