第323話 とりあえず帰還スキルを使ってみたモニカ

「ところでモニカ。エクストラスキルを授かったと言っていたが、どういうスキルなんだ?」

「え? あ、あはは……えーっと、スキル名までは聞けたのですが、ご主人様が激し過ぎて、効果までは聞けなかったんです」

「それは……うん、すまない」


 昨日は暴走しまくっていたからな。

 あと、レヴィアは羨ましそうにしない。頬を膨らませても、昨日みたいな事はしないからな。


「えっと、帰還というスキルだったのですが……どうしましょうか。とりあえず、使ってみましょうか?」

「そうだな。名前からして、何処かへ移動するスキルだと思うし、神様から授けられていると思われるエクストラスキルを、使って悲惨な事になるとは思えないしな」

「分かりました。では、使ってみますね。≪帰還≫……」

「おぉっ! モニカが消えた! ……って、モニカだけなのか!? しかも、戻って来ないんだが」


 よくよく考えてみたら、帰還というスキル名から移動する事は分かったが、何処へ移動するかは分からないよな。

 可能性としては、魔族領にある家か元兎耳族の村という、よく宿泊している場所へ帰るケース。

 もしくは、フレイの街にあるモニカが生まれ育った実家へ帰るケース。

 最悪のパターンとして、俺たちも知らない全く別の場所へ移動してしまうケースのどれかだ。


「ユーリ。メイリン経由で、家や兎耳族の村にモニカが居ないか聞いてみてくれないか」

「ちょっとまってねー! ……パパー、モニカさんは、どこにもきてないってー」

「ふむ。だとすると、フレイの街か? それは魔族領へ戻って、通話魔法でタバサに聞いてみるしかないな」


 ユーディットの人形ユーリに聞いてもらったが、向こうに帰った訳ではないのか。

 念の為、アーシアたち天使族に、空から周囲を見てもらい……この辺りには居ないようだ。

 どうしたものかと思っていると、


「あ……モニカの魔力を感じる。見つけたんよ。昨日、野営をした場所に居るみたいなんよ」

「どうしてそんな場所に? ……前日に寝泊りした場所へ戻るスキルなのか?」


 ヴァレーリエのおかげでモニカの現在地が分かったので、昨日の野営地へ皆で戻ると、川の側でモニカが倒れていた。


「お、おい、モニカっ! 大丈夫か!? ≪ミドル・ヒール≫……くっ、ダメなのか」

「アレックス。ラヴィニアの時と同じ様に、アレを飲ませるべきなのじゃ」

「え? また!? ……いや、ちょっと待った。この症状は……≪シェア・マジック≫」


 ミオから倒れているモニカにアレを飲ませろと言われたが、よく観察していると俺が良く知る症状――魔力枯渇だ。

 なので、パラディンの魔力を分け与えるスキルを使用すると、


「ん……ご、ご主人様ぁぁぁっ!」


 予想通り目を覚ましたモニカが抱きついてくる。


「大丈夫か? どうしてモニカは魔力枯渇状態だったんだ?」

「それが、帰還スキルを使用すると、気付いた時には一人でこの地に居たので、もう一度使えばご主人様の所へ戻れるかと思ったのですが……あのスキルは大量の魔力を要するみたいで、二回目の帰還スキルを使用しようとした際に、魔力不足を起こして倒れてしまいまして」


 なるほど。モニカの帰還スキルは、奴隷解放スキルのようにクールタイムが無い代わりに、魔力を大量消費するのか。

 まぁでも瞬間移動を行うのだから、それくらい魔力を消費してもおかしくはないよな。

 ……もしかしたら、俺が気付いていないだけで、奴隷解放スキルもそれなりに魔力を消費しているのかもしれないが。


「とりあえず、帰還スキルについてはシェイリーに詳しく効果を教えてもらう必要があるな」

「あ、それはつまり……シェイリー殿の所で、そういう事をするという事ですね」

「はぁ……モニカよ。お主があのまま魔力枯渇の振りをし続けてくれれば、魔族領まで戻らずとも、今すぐアレックスの子種が貰えたと言うのに」


 いや、ミオは何回する気なんだよっ!

 昨日も沢山したし、さっきもレヴィアの件で、少しだけしただろ?


「……ぶっちゃけ、さっきのが中途半端過ぎるのじゃ。やるなら、もっとしっかりやりたいのじゃ!」

「そうなのです! 私たち天使族は、村へ戻らないといけないんです! アレックス様の子供を授かる為にも、さぁ今すぐ致しましょう!」

「アレックスーっ! 私もっ! 私もするからっ! 絶対だからねーっ!」


 いや、ミオもアーシアもレヴィアも、今はシェイリーの所へ……魔族領の家に帰る事を優先してくれよっ!

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