260.居心地いいからいいけどね(2)
昨日、呼び出しに応じて転移した。各主要都市には転移用の魔法陣が設置されているから、皇帝陛下同伴だし? と気楽に利用させてもらった。日本人会のメンバーは旅館を堪能し、戻ってくるのを待つと言ってたけど。愛梨ちゃんだけ付いてきた。まあ実家がある中央の国だし。貴族令嬢が連チャン外泊はまずいよね。
到着したオレ達一行は、その場で剣を突きつけられた。意味がわからん。まず皇帝陛下とクリスティーンや侍女が保護され、オレの盾になると豪語するベルナルドが暴れて騒ぎを起こした。この間に逃げろと言うのだろうが、逃げたのはレイルだけ。目配せで役割分担を終えると、レイルが姿を消したのを確認したオレはベルナルドを制止した。
この時点で、こちら側の負傷者はベルナルドただ一人。それも剣を奪う際に手を切った程度のケガだった。名誉の負傷だと自慢げなベルナルドの手を取り、さっと治癒して見せる。愛梨ちゃんはリアムの横でちゃっかり安全を確保してた。
うん、それでいいと思うよ。女の子がケガとか……親が泣くし、ねぇ。でもって抵抗をやめた時点で、ベルナルドはしっかりお縄になった。もう縄っつうか、鎖をぐるぐる巻きにされて連行。彼は一応侯爵閣下だった人だから、数日で釈放されると思う。主犯じゃない上、息子が動くだろう。
オレは手助けを拒んで、わざわざ牢に入った。というのも、犯人はレイルが調査するからいいとして、動機や目的が不明なのだ。ドラゴン殺しの英雄を貶めたい、戦争の功労者を何とか罪人にして追い出したい。その程度なら問題はない。
リアムが狙われた場合が難しかった。彼女の性別がバレたとか、オレが配偶者になるのを阻止する目的なら、根こそぎ処理しないと大変だからね。雑草ってのは、根の奥まできっちり駆除しないと。忘れたころに新しく芽吹かれたら迷惑だ。
「また来る」
「うん、
意味ありげに王族っぽい言い回しを使う。ここの牢番は間違いなく犯人側の手が回っていると考えるべきだ。ならば、普段は粗雑に互いを扱うオレとレイルが、意味ありげな言動を見せたらどうする? 敵側は勝手に裏を読んで動く。誘うなら堂々とね。
今回は表ルートの転移魔法陣を使うため、リアムが皇帝陛下スタイルに着替えていたこと。聖獣がすべて影に潜っていたことが幸いした。普通は、聖獣がオレの足元の影に潜んでいるなんて思わないからな。武器もすべて収納に放り込んであるが、この辺の事情も貴族連中は知らない。
馬鹿だな、食料も解毒剤の材料も武器も……全部オレが持ち歩いてるってのに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます