第8章 初恋の予感
31.同衾って同性でも使うの?(1)
真っ赤な顔のリアムの後ろを歩いて、彼の寝室に入る。すでに風呂は入って髪も洗ったし、あとはゆっくり休むだけなのだが……。
「いいですか? 絶対に
「同衾って、同性同士でも使うの?」
シフェルの念押しにオレは首をかしげた。同じ布団で男女が寝るときに使う単語だと思ったんだけど、この世界では違うのか。しょっちゅう常識を疑われたため、もう知らないことがあっても疑わずに受け入れる態勢に入っている。
「……とにかくダメです」
「わかったよ。こっちのソファを借りるから」
やたら広い部屋は、ふかふかの絨毯が敷き詰められていた。謁見の間のふかふか具合と同じだ。しゃがんで直接絨毯を撫でて、後ろのヒジリに声をかけた。
「ここで寝ても平気そう」
「セイ、それはダメだぞ!!」
なぜかリアムに叱られた。大人しく頷いて了承しておくが、前世界で使ってたせんべい布団より絶対に柔らかくてふかふかだ。手触りがよくて、ぺたんと絨毯に座った。なにこれ、すごい柔らかいんですけど。
ヒジリが寝そべったところに寄りかかると、あら不思議。すごい寝心地がいいベッドが出来た。このまま寝たら温かいし、よく眠れそうな気がする。
やたら立派なキングサイズ以上のベッドは、ほぼ正方形だ。天蓋がついて豪華なベッドから少し離れると、応接セットが置いてあった。オレは猫足の長椅子に寝る予定なのだが、このままでも十分熟睡できる。というか、官舎のベッドよりリアムの寝室の絨毯のが寝心地良さそう。
ちょっとした疑問だが、どうして貴族の邸宅は猫足の家具が多いのだろう。実用性を考えたら、どっしりした足の方が長持ちしそうな……まあ、この種の人達は実用性は無視して見た目重視の可能性もあるか。
「セイ、床で寝るなら余も……」
「陛下! そのような我が侭は」
「少しも許されぬか?」
隣に寝転ぼうとしたリアムを叱ったシフェルへ、静かに切り返す。リアムの無言の圧力に、シフェルは周囲に目配せして人払いをした。侍従や侍女が姿を消したのを確認して、床に膝をついてリアムに視線を合わせる。
「お分かりでしょう、陛下。あなた様はこの国の要です。多少の自由は許されますが、身分に合わぬ我が侭は」
「余は皇帝になりたかったことなど、一度もない」
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