第28章 南の国制圧? 調味料が先だから
178.国のために戦ったのに、見捨てるの?(1)
『物語の最終回みたいだったよね〜』
尻尾を振りながら、青猫が揶揄ってくる。わかってる、オレだって『完』や『終』の文字が画面の右下に出てきそうだと思った。でもな、現実って簡単に綺麗なところで終われないわけ。
「うっさいな」
ヒジリの背に乗るのが日常だったが、強請られてマロンの背に乗っている。軍を率いる人の乗り物って、黒豹じゃなくて馬だよな。角が短くて栗毛のただの馬に見えるけど、違和感なく仕事しているマロンはご機嫌だ。
マロンの少し先、オレの視界に入る位置でヒジリが存在を主張しながら歩く。ちらちらとこちらを伺うのは、「いつ乗り換えてもよいぞ」という意思表示だろうか。だとしたら、適当なところで黒豹に乗り換えよう。
「キヨ、そろそろだ」
先行するサシャの合図があったため、傭兵達が一度足を止めた。ノアの声に気を引き締める。
後ろの傭兵の数は2割ほど減った。ユハやジークムンドの班の傭兵の一部に砦へ残ってもらったのだ。奪取した砦を奪われないよう、籠城できる準備もしてきた。
弾薬や食料を、マロンのいた地下室に保管した。収納が使える奴には、自分のテントや装備を外に出して食べ物の保存を優先してもらう。地下室も涼しいからパンは構わないが、肉や魚は収納空間の方が長持ちするのだ。
装備やテントも一式渡して、砦の守護神として聖獣を1匹置いていくことにしたが、それを決めるのに揉めた。
基本的に強い奴ほど我が侭を通す傾向が強い。聖獣は世界最強の生き物で、契約者の側から離れたいと思う聖獣がいなかった。強いて言えばブラウが「昼寝もいいかもね」と呟いたが、コイツはオレがいないと傭兵を見捨てかねない。
寝て起きたら全滅してた、平然とそう
他の聖獣達に押し切られたスノーは、ほとほと涙を落としながら「捨てないで」と懇願する。酷く哀れな姿に、抱き締めて言い聞かせた。
「オレはスノーが信頼できるから仲間を守る大役を与えるんだぞ」
現金なもので、すぐに立ち直ったスノーは広い中庭の真ん中で巨大ドラゴン姿で見送ってくれた。寂しくて我慢できなくなれば、影を使って顔を見せるだろう。過剰戦力な気もするが、砦を取られると中央の国に対して立場が弱くなるので、がっちり守る必要があった。
退路を確保しつつ進んだオレ達の目標は、この先にある南の国の国境を攻め落とすことだ。国境の街の城は、南の国の王子が治めている。この城を少人数で落とし、その功績と王子の身柄を盾に、交渉へ持ち込むのが最高のシナリオだ。
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