07.本性あらわる(2)

 転がり出た目玉を拾い上げ、青い目を視線の高さに合わせる。


 こうしてみると、なかなかキレイな色をしているじゃないか。眼球についた赤が邪魔で、ぺろりと舐めて拭った。赤を甘く感じる。



 ああ……気分がいい。


 最高だ。



「ひっ……」


 背後で聞こえた悲鳴に小首を傾げ、すぐに2人ほど見物人がいたことに思い至る。


 そうだ、オレと同じように囚われた子供達がいた。手枷と鎖に繋がれ、さぞや不自由だろう。


 真っ赤に濡れた己の姿を考えずに振り向き、手にしていた目玉を捨てると足で踏み潰す。


「こ、ない……で」


 恐怖に震えながら後退る彼らを無感動に見つめた。壊してもいいが、放置しても害はない。少なくともオレに危害を加えた奴はのだから、無視しても構わない。


 目を細めたオレに「ごめ……なさ、い」と掠れた悲鳴交じりの謝罪をしつつ、蹲って必死に身を守ろうとする子供達に近づいた。


「いや、だっ……やぁ」


 手枷ごと持ち上げた両手でオレの手を払おうとする子供の所作に、くすっと笑みが漏れる。


 無駄な抵抗って、こういうのを言うのか。オレがお前らを害する意図はなくても、こうして強者に怯えて震えるのだ。ならば弱者でいる理由が見当たらなかった。



 やばい……何だか愉しい。


 ラリってる状況って、こういう精神状態なのかも。


 鼻歌を歌いだしそうな気分のよさで、鎖の先を掴んで引き寄せた。怯える子供を引き摺り、手枷を掴む。仕組みは分からないが外してやれる。鍵穴付近に指をかけ、力任せに引っ張った。


 ギシャ……、そんな耳障りな音を立てた手枷が外れて落ちる。


 驚いた顔で目を見開く少年を放り出し、隣の子供の鎖を引いた。さきほどと違い大した抵抗がないのは、危害を加えるのではなく拘束を解いていると気付いたから。


 最初の少年同様、手枷を強引に引き裂いた。



「……行け」


 吐き捨ててひとつ深呼吸する。


 オレのことを喋るな。そんな無駄な強要はしない。話したければ話すだろうし、口止めしたところで大した影響はないのだから。



 ああ、本当にいい気分だ。



 自由になった子供が走り去る足音を背で聞きながら、鼻歌が零れた。


 目の前に転がった男の死体を蹴飛ばして転がす。大きな身体から金貨の入った袋が零れ落ちた。


 これは何の対価か? オレ達を売ろうとしていた男が持つ金がひどく汚く思え、摘んで拾い上げるが顔を顰めてしまう。


 まるで汚物に触れたみたいだ。


 潰してしまった首の残骸をまたいで、死体の上に袋をひっくり返して金貨をばら撒いた。全部で6枚、乾いた音を立てて金貨が赤く染まる。


 生臭く鉄さびた臭いが鼻をつくが、吐き気はなかった。

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