95.ミルク粥が異世界に爆誕(1)

 あっという間に集まった傭兵連中が、慣れた手つきで肉を串にさしていく。結界で作った箱に並べてから、コウコを手招きした。


「表面こんがり、中ふっくらジューシーで焼いて」


『主人は聖獣の使い方を間違ってるわ』


 文句を言いながらも、串差しの肉を炙っていくコウコは聖獣美女だ。性別はない聖獣だが、イケメンはヒジリに確定したので美女枠を進呈する。美しい女と書くけど、イイ女って意味もあるからな。


 沸騰させたときのブレスを使うと串が焼け落ちてしまうので、ふーふーと何度も息を吹きかけていた。本当に出来る蛇……龍? で助かる。彼女の一吹きごとに肉がジュージュー音を立てて焼けた。


『難しいわね。このくらいかしら』


 20本並べた串を焼き終えたコウコが首をかしげる。疲れた様子はないが、あと8回ほど焼いて欲しいので労う意味を込めて抱き上げた。くるりと腕に巻き付いたコウコはご機嫌だ。


「残りもお願いしたい」


『わかってるわ。あたくしの分も残しておいて』


「もちろん!」


 聖獣と会話しているオレの横で、レイルが焼き終えた肉を齧る。香ばしい外見と裏腹に内側はギリギリだったらしい。


「もう少し焼いた方が良さそうだぞ」


『あらやだ、主人がお腹壊しちゃうわ』


 レイルの指摘に、残った串に2回ほど息を吹きかける。ぽたりと肉の脂が下に落ちた。


「よし、焼けた分から運んで!」


「はいよ!」


 手際よくノア達が肉を分けていく。その間に新たな肉を焼き始めるコウコ。ここ数日で役割分担が出来てきたため、料理人スキル持ちがコウコの前に串を並べ直した。生肉から焼いていくが、火力調整がわかってきたコウコも効率よく中まで火を通す。


「焼けた分から食べていけ! 待ってる必要ないぞ」


 一応声をかけるが、皆大人しく座っている。焼けた肉が冷めるだろうがと文句をつけるのは簡単だが、前に聞いた話ではボスが手を付けるまで部下は我慢だという。あれだ、相撲のちゃんこ鍋の順番な。上位者が食べないと、下位の者は口をつけられない。


「先に食べるぞ」


 ヒジリとスノーの前に皿を出して肉とスープをよそう。のそのそ近づいてきたブラウにも出してやった。今朝は少し仕事したからな。


「いただきます」


 聞こえるように声を張り上げ、ぱくりとミルク煮スープを食べる。とろりとした粥みたいだが、時々肉や野菜が彩りを添えていて見た目も綺麗だった。味は少し薄い気がするので、ハーブ塩を足して2口目を食べる。

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