181.南の国の戦利品(3)
「あいよ。念のためレシピあるか?」
「これ。材料はこっち」
シフェルに頼まれ、軍用にスポドリレシピを作った紙を束で渡し、ついでに塩や砂糖を山積みにした。そこでレモンが足りないと気づく。
「スノー、レモンの補充お願い」
『はい。行ってらっしゃいませ』
大人しく尻尾と小さな手を振るスノーの頬が膨らんでいる。もしかしてアイツ、残ってたレモン齧った? 切った後のレモンは多少絞ったあと水に浮いていたはず。それが半分ほどに減っていた。本人が酸っぱくないならいいけどな。
果物大好き白トカゲは、膨らんだ頬を両手で押さえながら影に飛び込んだ。ブラウはこれ以上働きたくないのか、首だけ影から覗いている。生首みたいで怖いから、入るなら全身入っとけ。身振りで伝えて、オレはヒジリの上に乗った。
何番目だかわからない王子を確保して地下牢へ放り込んだが、あれ身代わりじゃないよな? 顔がめちゃくちゃ腫れてて判断がつかないけど、ヒジリが「同じ奴だ」と断言したので牢へ転がした。ついでに側近らしい貴族を数人、並びの牢へ入れていく。住民の声を元に選別したので、まともにお仕事していた文官などはちゃんと省くことが出来た。住民の協力って大切だよね、うん。
テントへ戻ってスポドリで喉を潤したオレに、フライパン片手の奥さんが声を掛けてくれた。オレがフライパンを探しに鍛冶屋に向かった後、現場でフライ返し片手に王子をボコる鍛冶職人と遭遇したらしい。誰もいない店を教えてしまったと親切にも呼びに来てくれたのだ。
彼女の紹介でありがたくも、フライパン様を手に入れた! 新品の鉄フライパンは油を馴染ませるよう、しつこく言い聞かされた。そのついでに横口おたまの絵を見せて作ってくれと依頼する。唸っていたが、すぐに挑戦するらしい。
南の国を攻めた一番の戦利品はフライパン、次点で横口おたまか。さらに次点でマロンだ。聖獣はもうお腹いっぱいだった。個性強すぎてオレが辛い。あ、シフェルへの土産は奪還した砦で満足してもらおう。
この時点でオレは満足していた。まだ王都が残ってるけど、適当でいいよな? 欲しい戦利品を先に手に入れたため、気持ちはだるだる~っと崩れていた。
「キヨ! 大事件だ」
「今度は何?」
地下牢に別の聖獣がこっそり隠れてないか確認したし、コンプリートも終わったから、もう新しいの増えないはず。のんびり構えたオレの耳に飛び込んだのは、確かに大事件だった。
「王都から正規軍が派遣された!」
「はぁああ? ……確かに大事件だ」
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