181.南の国の戦利品(2)
座ってるからと言い聞かせて許可をもらう。収納からテーブルの先を出すと、傭兵が数人集まってきた。住民の怒りと剣幕に驚いて、周囲で見守ってしまった気のいい連中だ。テーブルを並べ、屋根だけテントも取り出す。
「ブラウ、出番だよ」
『僕の力は、ざまぁのために取っておきたいんだけど』
「聖獣の契約解除試してみたい気分になってきた」
『僕、レモン好きだな!』
わかりやすいキャラの青猫に大量のレモンを切らせる。それを鍋に入れた上から塩と砂糖をぶちまけて、周囲を見回して空に浮いてるスノーを見つけた。
「スノー! 頼みたいことある!!」
『私ですか?』
真っすぐに滑空されると怖いな。これは攻撃しないけど脅す時に使えそうだ。びくっと肩を揺らしながら、手前で羽を広げて減速したスノーが小型化して膝の上に着地した。爬虫類特有の冷たい肌を撫でて、鍋の中に水と氷を入れてもらう。
自分でもできるけど、ここは聖獣が作ったって言う触れ込みって大事。この国の住民が、自分達は聖獣の望むままに国を正したと誇りをもってくれたらいいけど。
魔女鍋サイズの巨大鍋をぐるぐると掻きまわした。このおたま、先日香辛料たっぷりスープに使ったけど、匂い移りしないの凄い。やっぱり浄化系の魔法は便利だ。中で水が氷と渦になって、底に沈んだ砂糖と塩が小さくなった。
「完成!」
「「「いただきます」」」
すでに水筒片手に待ってた傭兵がお玉で水筒に入れる。味と飲みやすさ、脱水の怠さ解消効果を知る傭兵達は、戻るなり並んで水筒を逆さにした。中のぬるい水をすべて捨て、冷たいスポドリで満たす。
最初の頃は水筒ごと突っ込む不心得者が出たが、拳で躾けたところ大人しくなった。今は全員おたまを器用に使いこなす。ふと思った。折角鍛冶屋がいるんだから、おたまの片側が三角で注ぎやすい道具を作れないだろうか。
形状はわかるんだけど、名前がわからない。説明用にメモ用紙にイラストを描いてみた。不格好だが、何とか伝わるだろう。ひょっとこみたいに横に口がついた形状だ。テレビでゼリーを注ぐとき使っていたのを観た。
フライパンと一緒に注文しよう。液体を注ぐのに便利だし、今後も使えると思う。一人で納得している間に、鍋が空になった。大きな鍋を追加して、さらに大量に作る。
「うぉおおお! おれたちの勝利だ」
城のてっぺんから雄たけびが聞こえたので、そろそろ頃合いか。鍋に大量に作ったスポドリをコップに掬って飲んでいるサシャに声をかけた。
「王子捕まえるから、誰かに地下牢開けてもらって。それと降りてきた市民にスポドリ振舞っていいから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます