第31章 お土産が優先だからね
219.忘れ物と、小さくて大切な約束(1)
やることが積み重なっている。
まず、リアムへのお土産確保が最優先だ。スノーとマロンが放棄した土地の契約者探し。それからマロンの話を聞いてあげて、ああ……コウコが捕まえた犯人も絞りあげないと。
指折り数えてみたが、片手が塞がる勢いだぞ。お仕事が順番待ちだった。元ニートに、これはハードスケジュールです。環境の改善を要求したい。オレはリアムのヒモ希望者だぞ。
「リアムに会いたいぃ……」
魂が抜けるような情けない声で、昼寝用のベッドに転がり込む。東の国の国境にテント村を移動した。ここまでは順調だが、実は大変な忘れ物をしたのだ。
「お前、部下を働かせて何を勝手なこと言ってんだ」
呆れ顔のレイルに指摘され、頭を抱えて拗ねる。だって、忘れてたのオレだけじゃないもん。コウコやシフェル、レイルだって全員忘れてたじゃんか。
そう、コウコが折角捕まえてくれた早朝の襲撃犯の、主犯格を忘れたのだ。森の中に蔓で縛り上げて吊るしたまま、放置。捕らえに来たのが人間じゃなく、赤龍の聖獣だった時点ですぐ降伏したらしい。なのに全員綺麗さっぱり忘れて、置いてきてしまった。
ジークムンド班が腹ごなしの運動を兼ねて、回収に向かった。あと1時間ほどで戻るかな。
「あと1時間くらいか。寝てろ」
咥え煙草でオレの上に毛布を放る。乱暴なレイルだが、気遣ってくれたらしい。無人になったテントで、足元に丸くなるヒジリとブラウ。スノーはちゃっかり枕元に転がった。コウコは道案内でついていったが、ジークムンドの太い腕に感動していた。確かに子供の胴くらいありそうだよな。
「マロン、おいで。1時間だけど一緒に寝よう」
『いたいけな美少年を毒牙にかける、腐ってる系のアレですな?』
ニヤニヤしながら突っ込む青猫を蹴飛ばし、にやりと笑った。
「マロンはオレの分身同然だぞ。自分の顔に欲情するナルシストじゃねえよ」
手招いたマロンが素直に近づき、ベッドの脇で立ち止まった。入りやすいよう場所を開けると、膝からのそのそと上がってくる。でもベッドの端に座って動かなくなった。
「抱っこするぞ」
手を広げると、ゆっくり近づいて体の力を抜いた。まだ緊張しているマロンを横にして、腕の中に入れたまま引き寄せる。小柄な体を腕に収めるなら、彼の顔をオレの胸元に持ってくるのが一番いい。
「起きたら、ご飯までの間に色々話をしよう……約束だ」
『約束、僕と、約束?』
「そう……やくそく」
言葉の途中でうっかり眠気に負けた。細めて閉じた目蓋が完全に視界を塞ぐ寸前、にっこり笑ったマロンに……オレはちゃんと笑い返してやれただろうか。
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『左目をやる契約をしたら、極上の美形悪魔に言い寄られています』
BLですが、新作の公開はじめました(o´-ω-)o)ペコッ
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