15.訓練は、三途の川原でした(7)
派手な爆発音と振動、肌を焼く熱が伝わる。
地下室は真っ白な埃と煙で何も見えなかった。24時間戦うアクションドラマで見たやつ……粉塵爆発だろう。最初に放り込んだ粉が散らばり、そこへ火種で引火させた。
理屈はわかる。効果が高いのも理解できる。
だけど、やりすぎだよな? これ、訓練の域を盛大にはみ出してるだろ。オレがバリア的なの張れなかったら、死んでてもおかしくないから!
口を開いたら間違いなく咳き込む状況なので、袖で口元を覆って心の中で喚くに留めた。薄目を開けた視界はまだ白くて、しばらく動けそうにない。
大きな棚の裏に飛び込んだのが幸いして、棚は爆風で倒れたが隣の棚に引っかかって隙間が出来ていた。子供の姿だと隙間に潜んでも余裕がある。
耳鳴りが酷くて、頭痛がした。
「絶対に殺す気だ」
耳鳴りのせいで聞こえないが、ぼやきが口をつく。這って移動する先で影が動いた。息を潜めて見つめるオレの前を、誰かの足が踏みしめる。
左手で銃を引き寄せ『死ななくていいから歩けなくなりますように』と曖昧な念を込めて引き金を引いた。さすがに『死ね』とまでは思わない。
派手な銃声がしたのだろうが、まったく聞こえない。耳は思ったより重傷なのか? 這いずって棚の隙間から出ると、足を撃たれて呻くジャックがいた。
「ゴメン」
一応謝っておく。いくら訓練で殺されそうになっているとはいえ、彼は好意的な人に分類される。シフェル相手だったら『しばらく起きてくるな』くらいの念は込めただろう。
両手を合わせて謝罪を示すと、額に汗をかくほど痛いくせに「よくやった」と褒め言葉が返った。
なんなの、ジャックはMなの? 失礼な考えが過ぎるが、足音を忍ばせて地下室から脱出する。突然の地下室の爆発に右往左往する兵士をよく観察して、見覚えのある教官役が足りないことに眉を顰めた。
ライアン、ノア、ジャックは脱落した。だがレイルやシフェル、サシャはどうした?
嫌な予感がして兵士に紛れて移動しながら、近くの部屋に転がり込んだ。埃だらけの顔や手を洗いたいし、いい加減お腹も空いた。朝ごはん食べてない。
「こんなの児童虐待だ」
文句を言いながら、部屋の中にあったシーツとタオルで埃を拭いた。この爆発で飛び起きた誰かの部屋は、慌てて出て行ったらしく散らかっている。足元に落ちている枕を放り投げ、窓の縁に張り付いた。ちらりと覗いた鼻先に、銃弾がすれすれで掠める。
少し触れたのか、肌がひりひりした。
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