10.保護者達の眠れぬ夜(2)

 ダーン!!


 激しい爆発音に、叩き起こされる。


 昼間しっかり寝た――というか、気絶していた――ので、拝謁付き添い決定戦を熱く繰り広げた彼らと夕食をとった後もなかなか寝付けずにいた。


 ようやくうとうとしてきたところで、この爆発音だ。


 しっかり目が覚めた。


 慌てて飛び起きたジャックが枕もとの銃を手に周囲を窺い、ノアが部屋の外を窺う。ライアンはノアの後ろからライフルで援護体勢を整え、サシャが予備の銃をオレに放って寄越した。


「いけるか?」


 サシャの確認に、無言で頷いて銃を確認する。上着に袖を通した後、受け取った銃の安全装置を解除した。前回『赤魔』……じゃなかった、レイルに借りた小銃と違い、小型の拳銃タイプだ。


 すこし手の中で大きいのが気になるが、握り込むことは出来た。


「平気」


 頷いて小声で返す。サシャの手招きに近づけば、ざらざらと銃弾を渡された。ほぼ空砲に近い弾のため、火薬は入っているが弾頭はない。単体での殺傷能力はゼロだった。


 最初に落とされた戦場で覚えたのは、魔力を込めて撃つこと。


 ジャック曰く『銃弾に向けて『死ねぇ!!!』って全力で願いを込めて撃て』だそうだ。よくわからないが、事実、それで他国の奴を撃ち抜いたのだから正しいのだろう。


 魔力やら気配やら、とにかく人のいる場所を探知しやすくなった異世界のオレは、当然その能力をフル活用する。原理は分からないが、確かに気配のような曖昧な何かを感じた。


 たくさん走り回っていて、正確な位置や距離が掴みづらい。


 使える能力かと思ったけど、戦場や混乱した場所では役立たず決定だ。真剣に位置を探っていたら、酔ったみたいで気持ち悪くなった。


「敵襲だ!」


 シンカーの市場がある南側から敵襲があったらしい。逃げてきた別の部隊から説明を聞いたノアの端的な一言に、一斉に銃の安全装置が外される音が響いた。


 深夜の屋外は真っ暗で、どうやら月明かりは期待できそうにない。少し目を凝らせば、なんとか人影は判別できた。


「俺が特攻するから、ノアはキヨと組め。ライアンは狙撃に合流、サシャは後ろを頼む」


 慣れた様子でジャックが役割を分担していく。頷いたライアンがすっと暗闇に姿を消した。狙撃する連中が集まる場所といえば、どこか高台だろう。担いだライフルとは別に銃を構え、ライアンが走っていく。

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