10.保護者達の眠れぬ夜(3)
「キヨは初心者だから、あとで魔力の制御をきちんと教えなくちゃな」
苦笑したジャックが肩を竦めた。本当ならシンカーの市場から帰ったら一通り、魔力制御を教えるつもりだったが……あの誘拐騒動と暴走で後回しにされたのだ。
頷いたオレの白金の髪を撫でたジャックが先に戦場へ飛び込んだ。援護に回りながら、建物の影から銃口を向けて警戒する。
「ノア、オレらはどこ行くんだ?」
素直に疑問を口にすれば、ノアが「本部を守る契約だ」と答えた。彼らは傭兵だから、契約に基づいて守る場所が決まっているらしい。
素直に後ろをついて走りながら、思ったより足が速い自分に気付く。かつてはクラス36人中後ろから10番くらいだったんだけど……ジャック達と走っても付いていけた。しかも息も切れない。
「……すごい」
自画自賛している途中、ふと視線を感じて左側に銃口を向ける。人影が見え……一瞬で判断した。
敵だ――『死ねぇ!!』と渾身の念を込めて引き金を引く。そこに人殺しへの禁忌や罪悪感、躊躇なんてなかった。だって相手の銃口もこちらに向いていて、しかもこのまま撃たれたらオレに命中コースだ。
死にたくなければ殺すしかない。
遠慮したら死体になるのは自分なのだから。
パンっ!
軽い銃音の直後、ノアが左側を振り向いた。どうやら殺気を感じたのが今らしい。これじゃ殺されてから気付くタイミングだ。
「片付けたぞ」
戦闘状態になると、過去の口調がちらほら覗く。逆に平時は子供返りしたように、幼い口調になった。使い分けているつもりはないが、いつの間にか馴染んでいる。
「さすがだ」
ノアの褒め言葉に口角を持ち上げた笑みで応じて、一度だけ手をぱちんと合わせた。サバゲーをしていた仲間とのやり取りを思い出す。いつも組んでいたメンバーとも、こんな感じのコミュニケーションを取れていた。
引きこもり寸前だったくせに、サバゲーの仲間とは普通に話していたのだ。……あいつら、元気だろうか。オレの死がトラウマになっていないことを祈る。
戦場となった宿舎周辺を走りながら、オレは過去に思いを馳せた。
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