280.見物人が偉そうだねぇ(2)
じいや達とシフェルの間を、つけ毛したレイルがパウラ嬢を連れて歩く。この辺は、貴族がどよめいた。かつて追放された王弟の息子が、拝謁するとは思っていなかったらしい。針の筵、こういう状況って最悪だな。つうか、なんで家族の顔合わせに見物人が増えたのか。正面の義父へ笑顔を作ったまま、目で問いかけた。
申し訳なさそうな彼の態度が全てを物語っていた。つまり、こいつらは押しかけてきた「招かれざる客」で間違いない。へぇ、見物人のつもりか? 随分とご立派な立場じゃねえか。
孤立無援の国王を守るつもりか、義姉ヴィオラが脇を固めていた。王女が玉座の脇、側近の位置に立つ理由……誰かが彼女の立ってる席を狙ってるってことだ。だが身分は絶対で、王族を害すれば聖獣の怒りを買う。赤龍コウコの派手な戦闘を聞いていれば、強行は出来なかったらしい。
「ヒジリ、コウコ、スノー、マロン、手が空いてたらブラウ」
空気を読んで無言で威圧しながら現れる聖獣。その迫力に黙る貴族達。何やら陰でこそこそする連中。様々な状況の中、紺色の毛氈を歩く一行はほっとする。聖獣はある程度盾になるからだ。
『僕だけオマケくさい』
「おまけじゃん」
いつも嫌そうに出てくるから、手が空いてたらって付け加えてやっただろ。何が不満なんだ。ヒジリ以外は小型化して現れたため、やはり迫力は乏しい。ポニーのマロンは甘えるようにオレの袖を噛んだ。
そっと手の上に何かを渡す。受け取ったオレが握ったのを確認し、マロンは少し離れた。手の中で転がしたのは、細かく畳んだ手紙のようだった。落とさないよう握りしめて、国王の前で一礼する。
親子間でお決まりの挨拶が行われ、中央の皇帝陛下であるリアムが口を開こうとしたとき……口を挟んだバカが出た。
「国王陛下、我らはその……平民風情を王族と認めておりませんぞ」
「そうです。議会に諮ることなく決められては困りますな」
ぎりっと歯を食いしばる音がしたけど、まさか最後尾のベルナルドじゃないよな? ちらっと確認したらシフェルだった。クリスティーンは剣の柄に手をかける寸前、まあこの無礼具合なら仕方ないか。ベルナルドは抜きかけた剣を納めなさい。じいやが咄嗟に押さえなかったら、お前、抜いてただろ。
指先で「ダメダメ」と示し、悔しそうな顔でベルナルドが刃を鞘に戻した。だが柄を握る手に血管浮いてる。あれは早めにこちらが仕掛けないと、暴発するぞ。
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