131.条件付き承諾でしたが(3)
かつてのオレなら厭う残酷な考えが、当たり前のように自分を支配する。これが異世界に来た変化のひとつなら、歓迎すべきだった。
だって――今のオレが大切なのはリアムだけ。彼女を幸せにするために、他を切り捨てるのは当然だろ。
「セイ……本当に、いいのか?」
不安そうなリアムの呟きに、オレは満面の笑みで頷いた。眉尻を下げて困惑の表情で見上げてくる美人さんの頬にキスをする。次に唇を狙った邪な気配を察知されたらしく、シフェルに勢いよくひっぺがされた。首根っこを掴まれた猫みたいで、カッコつかないな。
「オレが望んだ結果だぞ。リアムをお嫁さんにするんだから、多少カッコつけさせて欲しいな」
「だが……お前の自由が」
なくなると語尾を濁した恋人に手を伸ばし、彼女の白い手を掴んだ。指を絡めて繋ぐと、諦めたシフェルがおろしてくれる。膝をついて俯いたリアムを下から見上げた。
「自由より、リアムが欲しいからいいよ。それに不自由な状況って、リアムが置かれてる今の環境じゃないか。一緒に自由になろう」
繋いだ手をしっかり握り返され、嬉しくなる。まだ躊躇いが残るリアムだけど、オレは彼女以外の選択肢なんてなかった。
「……迎えに来たのだが……」
おずおずと声をかけるシンは、マズイ場面を見たとばかりに赤い顔を横に逸らしている。リアムが本当は女性だと知らない彼が、どこから聞いていたのか。この様子だと最後の部分だけだろう。いわゆる、義理の弟となったオレが他国の皇帝陛下(男と思っている)に言い寄ってる状況……カオスすぎる。
「キヨは着替えに行ってください。陛下も準備をいたしましょう」
にっこりと人好きする笑顔で切り捨てたシフェルが、遠慮なくオレとリアムを引き裂いた。名残惜し気に見送ったオレに向けられた義兄の眼差しは、多分に同情を含んでいる。
「あ~、その……まあ、整ったお顔の方だが……同性はちょっと、兄としては……」
「それ以上言わないで」
間違ってるんだけど、訂正できないのが辛い。慰めようと言葉を選ぶシンの気持ちがぐさぐさと、軟いオレのメンタルに突き刺さった。ダメージにふら付きながら、着替えの為に手を繋いで歩き出す。後で気づいたんだが、12歳の外見で兄と手を繋ぐって……どれだけ子ども扱いされてたんだ?
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