163.荒技でも技は有効(3)
「ところで、息子って1人なの?」
「はい。息子は1人ですが、娘がおり……孫もおります」
少し恥ずかしそうに告白する、お爺ちゃんだったベルナルドが何だか可愛いぞ。年上なのに、擦れてない感じはこの世界共通の愛しさだ。普段強面の騎士で将軍職まで務めた男が、孫がいると恥ずかしそうに呟いた姿は、純朴な田舎の青年っぽさがあった。
真面目そうですごく好感度高い。父親代わりの後見人でもしてもらおうかな。侯爵家なら、財産管理とか得意そう。
自分が楽をする方法を考えながら、今日の面接の終了を告げる。明後日までの人員が確保できたので、ここから先は明日以降にゆっくり再面接で問題ない。
上を見上げれば、青空は前世界より鮮やかだった。目に痛いくらいの青――雲ひとつない晴天に深呼吸した。
「孫に家督を譲る手もありますぞ」
まさかのベルナルドからの提案だ。馬鹿息子と罵っていたが、さすがにそれは気の毒だろう。今回の騒動が終わったら、オレは普通に付き合うつもりだった。だって、ベルナルドの息子だぞ? ちょっと方向性間違って暴走しただけで、多分悪い子じゃない。
「それはないな。ベルナルドの息子じゃん。自分の子供の可能性や存在を否定したら、お互いに傷つくし悲しいだろ」
「「え?」」
ベルナルド、その反応は失礼だぞ。何、顎が外れそうな顔してるんだ。ジャックやノアも「許しちゃうの?」みたいな表情だった。一番驚いていたのは、当事者の息子だ。名前まだ知らんけど、目玉をかっと見開いて……落ちても拾ってやらんぞ。
「「「まあ、キヨ(ボス)だからな〜」」」
皆でいつもの失礼な納得の仕方された。どれだけ極悪非道な奴だと思われたんだ、オレ。首をかしげると、レイルがくすくす笑いながら頭に手を置いた。
「お前らしくやれよ。どうせ人生1回きりだ」
「あ、ああ……うん」
実は2度目なんです――冗談でも言い出せる雰囲気じゃないな。レイルが王族の柵から解き放たれたいま、情報屋から王家に戻らない理由がわかる。こういう面倒、嫌いだもんな。今だって情報組織のトップで、王様みたいなものだ。領土がないけど、彼の王国は立派だった。
「これで孤児院が出来たら、戦士でも育てるのか?」
「そりゃそうだろ。孤児の仕事先なんて傭兵くらいだ」
サシャとジークムンドの会話に、オレは口を挟んだ。
「戦い方なんて教えないよ。文字の書き方が分かれば別の仕事も探せるし、保証人が必要ならオレが引き受ける。それくらいの覚悟はあるよ」
騒動を起こされたら、チートで解決してやる。幸いにして権力も金もあるんだから、何とかなるだろ。仲間もたくさんいるし。気楽に答えたオレの淡い金髪は、傭兵連中にくしゃくしゃにかき回された。彼らが無言だったのが印象的で、今は絶対に顔をあげちゃいけないタイミングだと思う。だから上から降ったしょっぱい雨も、気づかないフリで流した。
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