257.集え、日本人会(3)
「キヨって呼んでて」
しばらく「セイ」呼び禁止だから。そのくらいしか注意できなかった。自信満々で指折りしながら声を上げたのは、膝に懐く黒髪美少女様だ。
「間違ってなかっただろう?」
「陛下の仰せのままですね」
初めて会った時くらいか。陛下と呼ぶのは人前だけにしてきた。リアムがむすっと頬を膨らませて唇を尖らせる。可愛いだけだから、やめて。その唇を奪いたくなるでしょうが。リアムが「セイ」って呼ぶから、つい意地悪しただけなのに。公式の口調は距離を感じるから嫌いなんだっけ?
「……集合だって言われたが、まさかの濡れ場?」
「いやだな。ただの仲良しじゃん」
「え? つうか、その人皇帝陛下じゃね?」
騒がしく入ってきた3人の後ろから、出てきた老女が全員の頭を叩いた。
「お前達、入室許可も得ないで無礼だよ。ほら頭を下げて」
老女に叱られた3人が手をついて、日本式の挨拶をする。ってことは、これが日本人会のメンバー!? 見覚えのある人が混じってるんですが……。
「ご丁寧にどうも……左端の人、中央の国の晩餐会にいたよね?」
「「え?」」
身を起こしたリアムを隠す位置に移動しながら、クリスティーンが眉を顰める。警戒心マックスのところ悪いけど、邪魔。手で押して避けてもらう。じっくり顔を確認して、間違いないと頷いた。北の国の王族として参加した時にいたよ。声もかけてないけど。
「私、クロヴァーラ伯爵令嬢パウラと申します。
「余の国の貴族……え? そのような報告は受けておらぬぞ」
一瞬にして口調が皇帝陛下に戻ったリアムを膝の上に倒しながら、オレは肩を竦めた。
「どっち?」
「転生組。18歳でトラックに轢かれて生まれ変わったら、赤ちゃんのパウラの中だったってパターンね」
あれか。よくあるラノベ展開。しかもトラックだと!? 何、その普通の死に方。
「くそっ、トラックに轢かれたのが羨ましいだなんて」
「僕も似たタイプですよ。土砂崩れで家が潰されたあと、目が覚めたらこの世界の赤子の中だったので。享年35歳、今は65歳ですね。西の国で鍛冶屋やってるハンヌです。普段は貴くんと呼ばれてます」
ちょい待て。すでに2人目で混乱してるんだが。収納からメモ用紙とペンを取り出すと、一斉に日本人会が盛り上がった。わっと上がった歓声に、びっくりしてペンを落とす。
「すげぇ、チートだ!」
「ラノベみたい!!」
「こういうの、映画で観たやつ」
え? みんなチートなし転生ですか? 思わず敬語で尋ねそうになったオレだった。
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